47.邂逅
海洋晶蛸を退けたフィルたちは、無事レイシェルフトの地に降り立っていた。
「おぉ~、すげ~」
カイトが感嘆の声を上げるのも無理はない。晶素を使った街灯が整備されており、見たこともないような機械が荷解きを補助している。その向こうでは自動で水が出てくる機械まで見えていた。
「これが、文明大国レイシェルフトか」
「見たこともないものがいっぱいあるんす! お宝の匂いがするんすよ!」
「玄関口にしてレイシェルフト最大の都市、王都レイシェルフトです。あらゆる物が生み出される都と言われています。端から端まで歩こうと思うと五日では歩ききれないとまで言われている巨大な都市ですよ」
ネイマールも若干興奮気味に喋っており、商人として感性を幾分か刺激されているのだろう。
リアとシロも手を繋ぎながら辺りをきょろきょろと見回している。皆、この最先端の都市に目を奪われている様子だ。
「よし! みんな見て回りたくてうずうずしてると思うけど一旦宿に行こう。それから――――」
「そこの君たち。少しいいか?」
フィルが浮足立つ皆を先導しようとした矢先、誰かに声を掛けられた。
振り返ると、そこには統一された制服を身に着けた一団がずらりと並んでいた。胸にはレイシェルフトの国章が記されている。
「何か御用でしょうか?」
「君たちが我が国で禁制品になっているものを無断で持ち込んだと匿名で通報があった。事情を聞かせてもらう」
フィルたちはお互いに顔を見合わせるが誰にも心当たりなどない。
「すみませんが私たちは禁制品など持っていません。何かの間違いでは?」
「では少し荷物を確認させてもらおう。何もないというのなら問題はないだろう」
男は高圧的な態度で接してくる。まるで最初からフィルたちが犯罪者だと決めつけているような口ぶりだ。
ここで抵抗するのも不毛なので、フィルたちは大人しく荷物を差し出す。
個人での持ち込みが禁止されているものについては事前にネイマールが確認してくれているので、間違って持ち込むこともない。なにより、匿名で通報とはいったい誰がそのようなことをしたのか疑問だった。
仮に禁制品があったとして、船で荷物を出したことなど数回しかなかったはずだった。
「エイン部隊長、ありました!」
「なんだって!?」
兵士が手に持っていたのは袋に入れられていた赤い粒状の種だった。
あれは確かカイトがデルガロで見つけた食べ物だったはずだ。噛むと中から辛みを含んだ汁が溢れ出し、気付けに良いということで買っていたものだ。
「それが何か?」
「これは数日前に禁制品となった食べ物で個人での持ち込みは許可されていない。よって貴様らを密輸入者として拘束する。おい、牢に連れていけ」
「そんな! 俺たちは密輸入なんてしてないです!」
「詳しい事情は牢で聞く。さぁ、連行しろ!」
フィルたちは必死に弁明するが結局聞き入れてはもらえず、半ば強引に詰所の牢に拘束されることとなった。フィルとカイトは事情を説明するため再びエインと呼ばれていた男と対峙していた。
「さて、ではなぜ密輸入しようとしていたか聞かせてもらおうか」
「だ~か~ら、密輸入なんてしてねぇって! ハーファンでたまたま買ってただけだっての。だいたい禁制品もネイマールが確認してたよな?」
「うん。テルミネストの船着き場でちゃんと通関に確認してたはずだ」
「我々は通関にも通告している。これは我が国の法によって決まっていることだ」
「俺たちは通関にもすべて荷物を確認してもらいましたが、特に何も言われませんでしたよ?」
「その時には上手く隠していたのだろう」
「そんなことしませんよ。俺たちはきちんと見せました」
「どうだか。犯罪者は平気で嘘をつくからな」
「だと、てめぇ!」
「カイト、よせ!」
カイトが掴みかかろうとするのをフィルは必死で止める。
「だいたい匿名の通報っていったい誰なんですか。本当にそんな通報があったんですか?」
「ハーファンから我が国に向かう船の中で貴様らが荷物から取り出したのを見たという通報があったのだ」
「船の上で? 取り出した記憶なんてないけど」
「とにかく貴様らが持ち込んだものは証拠品として回収させてもらう。通関にもこちらで確認を取らせてもらうのでしばらく牢で大人しくしているように」
そう言うとエインは立ち上がり部屋を出て行った。残った部下に連れられ、フィルたちは他の仲間たちが拘束されている牢に連行される。
仲間たちは広い牢の中で身を寄せ合っていた。
「フィル! カイト!」
「ごめん、みんな。しばらくはここにいないといけないみたいだ」
「なんで? 事情は説明したんでしょ?」
「説明したさ。だけど聞いてもらえなかったよ。今ハーファンの通関に確認を取ってもらっているはずだから大丈夫だとは思うけど」
「ちくしょう! あいつ、はなからオレたちを犯罪者って決めつけてやがる! 気に入らねぇ!」
「落ち着けって。とにかく今は待つしかないんだ」
それから十分、二十分と時は過ぎていくが一向に開放される気配はなく、フィルたちはただただ解放されることを願って待つことしかできなかった。




