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25.闇人


「≪宵闇舞踏セラータ・ダンス≫」



 ヴァクロムの言葉をきっかけに辺り一帯から闇が噴き出し、そこから次々に闇を纏った人間が現れる。顔を見ると、みな事件の被害者ばかりであり、その数は優に二十を超えている。


 その中にはロイや部隊長、宿屋の主人も含まれており、みな一様に感情が抜け落ちているかのような表情を浮かべていた。


「≪闇化ブーヨ≫」


 ヴァクロムから巨大な黒い塊が生み出され、次々に『闇人』たちに降り注ぐ。それを受けた者は全身が闇に包まれついに、誰が誰かの区別もつかなくなってしまった。


「さぁ、行きなさい『闇人』たちよ。侵略者たちに制裁を」


「「「ぎがぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」」」


 闇人と呼ばれた者たちは、およそ人とは思えない奇声を上げながら一斉にこちらへ襲い掛かってくる。


「≪水蓮ツェンレン≫!」

「≪勇敢小兎ハイネン≫!」

「≪大雷クラム≫!」


 仲間たちが一斉に迎撃を始め、フィルも応戦するのだが一体一体が強く、しかも元々は普通の住民たちのため、過度に傷つけることもできない。さらに、身体能力と耐久力が常人と比べ跳ね上がっており、気絶させようにもある程度の攻撃を叩き込まなければ難しいことが分かった。


「ちっ、こいつら相当硬ぇぞ!」


 厄介なのはその耐久力で、闇の鎧のようなものを纏っているせいで肉体まで攻撃が届かないのだ。


 全力で晶素をぶつける訳にもいかず、防戦一方のフィルたちに傷が増え始めたその時、その人物は突然現れた。


「大丈夫か君たち」


 闇人から繰り出される攻撃を、見るからに業物と思われる長槍で弾き返しながら、武具屋の店主バルトがそこに立っていた。


「バルトさん!? どうしてここに!?」


「巨大な晶素の気配を感じて飛び起きたのだ。駆けつけて見れば、こいつらは……?」


「奥にいるアイツに操られているみたいで、元はここの住民の方たちなんです。だから過剰に攻撃もできず……」


「なるほど、これが失踪事件の顛末か。なんとむごいことを……微力ながらこの老骨も力になろう」


 バルトはそう言うと身の丈程もある槍を構える。その様相は明らかに戦い慣れしており、襲い掛かる闇人たちに対し片手で流れるような連撃を放つ。


「≪白槍はくそう≫」


 白銀に輝く槍が襲い掛かる闇人を薙ぎ払う。さらに一体の闇人が背後から近づいているが、バルトは後ろを振り返ることなく迎え撃った。


「≪絶声穴ぜっせいけつ≫」


 後ろから襲い掛かった闇人は、突如飛んできた突きによって吹き飛びピクリともしなくなってしまう。


 バルトを脅威と感じたのか、闇人たちが一斉に襲い掛かる。さすがのバルトでも一気に襲い掛かられてはまずいと思い援護しようとしたのだが、フィルの心配は杞憂だった。


「≪蓮和領土れんわりょうど≫」


 自身の身体を軸に槍を高速回転させすべての敵を一気に薙ぎ払う。的確に捉えられた一撃に、五体の闇人は為す術なく弾き飛ばされ、この短時間でバルトが相当な実力者だということをフィルは理解した。


 バルトが戦う様子を応戦しながら見ていたカイトが叫ぶ。


「フィル! ここはオレたちで十分だ! お前は奴をやれ!」


 フィルは一瞬だけ逡巡したが、託された役割を全うするため、奥で不気味な笑みを顔に張りつけているヴァクロムと対峙する。


「いやはやこれは予想外ですねぇ。ワタクシの『闇人』たちと互角に渡り合うとは。まさかあなた方も保持者ホルダーだったとはねぇ。余計な乱入者もいるようですし」


 ヴァクロムを見るが、言葉とは裏腹に焦った様子などは微塵もない。むしろこの状況を楽しんでいるようにさえ感じる。


「ワタクシ少し楽しくなってきましたよ。せっかく集めた『闇人』たちを失ったらさすがのワタクシでも困りますし、あのお方のお顔に泥を塗ることはできませんからねぇ。では”真羅ルーラー”の一角の力をお見せいたしましょう」


 ヴァクロムの纏う晶素が今まで以上に膨れ上がり、次第に肉体にも変化が現れ始める。細身の体に赤黒い線が走り、頭の上から足先まで高濃度の晶素に包まれている。

 


 そして、真の力が禍々しいオーラと共に解放される。

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