はじまり
ネクロフィリア表現があります。
初恋、と言うものは自分が7歳の時に死んだ実の父親だった。
父は漁師業についており、いつ帰って来れるかも分からない、
連絡も取れないような仕事だった。
そんな中、久しぶりに父の船が帰ってくると聞いて俺と母親は
港に急いだ。港について一言目。
「この度は、誠にご愁傷様です。」
全くことの流れが把握できていない俺と深々と頭を下げる母親。
状況がわからずにぐいぐいと母の服の袖を引っ張ると母親が
淡々と俺に告げた。
「お父さん、死んだのよ。」
船の中に遺体安置所があるみたいだから行くわよ。と言われ、
半ば強引に手を引かれた。
そこにいたのは紛れもない自分の父だった。顔色も悪くなく、
今にも「おはよう」と目を覚まして話しかけてきそうな雰囲気
だった。
母が漁師仲間から仕事中の過失があったのかもしれないと話を
聞いている時、僕は船のデッキの上に座っていた。
その時、自分の体のどこかがおかしいと気づいた。
まるでリレーを一位で走り終わった後のような高揚感
どんどん早くなっていく心臓
7歳にして自分はこの状況に“興奮“しているのだと理解して
しまった。
最後に会った時は眩しいような笑顔で笑いかけてきていたのに、今はそんな面影もない。
そんな笑顔でいつも笑いかけてくれた父親が
“もうこの世にはいない”というたった一つの事実がこれからの
僕の人生を狂わせていった。