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真昼の幽霊

作者: 青空あかな
掲載日:2023/12/31

 幽霊は陽光に当たり続けると人間になれる。


 長年に渡る調査の結果、そのような仮説が立てられた。

 最も、まだ確信は得られていないが。

 仮説が正しいことを証明するため、私は今日も調査を行う。

 調査対象はここ、秘寺団地の住民たちだ。

 推定百人ほどの幽霊が棲みついていると思われる。

 団地前の公園で待機し、住民が出てくるのを待つ。

 彼らは毎朝、それこそ死んだような顔でアパートメントから現れる。

 おそらく、生前の辛い生活が未だに染み付いているのだろう。

 公園の時計が七時を過ぎたところで男性が出てきた。

 疲れ切ったサラリーマン風の幽霊だ。

 今日も生前と同じように会社へ行き、陽光を浴び、電車に乗り帰宅するのだろう。

 陽の光を浴びるだけならここでもできるだろうに……。

 死んだ後も生きていた頃の習慣が残っているのだ。

 同情しながら近寄り言葉をかける。


「おはようございます」

「……」


 いつものように返事はない。

 私は幽霊を見ることができるが、幽霊に私を見ることはできないらしい。

 この二十年ほどの調査で、私に気づく幽霊には一度も出会ったことがなかった。

 いずれは会話をしたいと思うものの、それは叶わぬ願いだった。


 幽霊は人間になるため、日中外に出てくる。

 では、夜は?

 日が沈んだ後、彼らはどこで何をしている?

 わかっていることは、夜になるとまたこの団地に戻ってくるということだけ。

 アパートメントに入るところは何度も目撃しているが、中で何をやっているのかはわからない。

 幽霊も寝たりするのだろうか。

 思案を巡らせていると、太陽が空高く昇っていた。

 時計の針は十時頃。

 この時間になると、子供連れの幽霊が公園に出てくる。

 親幽霊が子供幽霊を遊ばせるのだ。

 会社員の幽霊と同じく、彼らにも生前の記憶が残っていると考えられる。


「こんにちは」

「……」


 数組に声をかけるも返答はない。

 彼らは私など見えぬかのように公園で遊ぶ。

 ただ、子供幽霊の中には、稀に私の存在に気づく者がいる。

 特に幼少であればあるほど顕著だ。

 今も、公園の片隅にいる少女――おそらく、二歳ほどだろうか――が、私をジッと見ている。

 彼らとも会話は不可能だが、その視線には何かの意味があるようでならない。

 やがて時計は進み、幽霊たちはアパートメントへ戻っていく。

 私はこの公園から出ることができない。

 よって、幽霊を追っての調査ができないのが非常に残念だ。

 太陽は西に傾き日が暮れる。

 今朝出て行った幽霊たちが戻ってくる時間がきた。

 ちらほらとアパートメントに向かう幽霊の姿が見える。


「こんばんは」

「……」


 公園から声をかけるも返事はない。

 幽霊たちは私を少しも見ることはなく、まるで存在に気づかぬ素振りでアパートメントへ入る。

 朝と同じ死にかけた顔のまま。

 たっぷり陽光を浴びた後、彼らは何をしているのだ。

 ここからでは部屋の明かりしか見えない。

 もどかしい気持ちだ。

 まだまだ調査すべき事象は山ほどあった。


 不思議なことに、ここの幽霊たちは年を取るのだ。

 大人は少しずつ老け、子供は成長する。

 これは幽霊の中でも非常に稀有な現象と思われる。

 だが、二十年間の調査でそれだけは確かだと結論できた。


 さらには、アパートメントから出て行くこともある。

 一家総出のときもあるし、子供幽霊だけのときもある。

 決まって大型の自動車に荷物を積み込むので、どこか別の場所で暮らすことは容易に想像ついた。

 そして、それが人間になった瞬間なのだと、私は仮定している。


 早く幽霊たちの謎を解き明かしたい。

 そうすればここから出られる。

 気がついたときには、幽霊の呪いにより公園から出られない身体にされてしまった。

 早く元通りの生活に戻らなければ……妻と娘が私の帰りを待っている。

 私は今日もまた、寝ずに幽霊の動向を見張る。

お忙しい中読んでいただき本当にありがとうございます


【読者の皆様へ、青空あかなからのお願いでございます】


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