崩壊
だが、誰一人、皇帝ヴィルヘルムの声に応じて応戦する者がいない。
ゲルマニア帝国軍は全軍が崩壊した。
皇帝ヴィルヘルムのみが戦場に残り、全ての戦車と歩兵が遁走する。
皇帝ヴィルヘルムの側近たるブレーデリン帝国魔導師長は、茫然としていた。
(こんな魔法がありえるものか……)
魔導師である彼は、魔法の限界をよく理解していた。
いかなる魔導師であろうとも、これ程の魔法は行使できる筈がない。
(いや、そんな事を考えている場合ではない。今すぐに逃げなければ)
ブレーデリン帝国魔導師長は、飛翔魔法で宙空に飛び立ち、皇帝ヴィルヘルムをおいて逃げた。
皇帝ヴィルヘルムは、まさか股肱の臣と思っていたブレーデリン帝国魔導師長が、自分を見捨てるとは思っておらず、ポカンと口を開けた。 ブレーデリン帝国魔導師長が、空を飛んで逃げる。
その背中に炎の巨人が、熱線を放った。
ビーム光線のような熱線が宙空を走り抜け、ブレーデリン帝国魔導師長の頭部を撃った。
ブレーデリン帝国魔導師長は頭部を消失して絶命した。
頭部を失ったブレーデリン帝国魔導師長の死体が、平原に落下して墜ちた。
次の刹那、炎の巨人が、皇帝ヴィルヘルムのいる巨大な戦車めがけて2条の熱線を放つ。
一つが、戦車砲の砲塔に直撃して、砲塔が融解してとける。
もう一つの熱線が、戦車のキャタピラの一部を解かした。
もはや、戦車はくず鉄となった。
動く事も、大砲を撃つことも出来ない。