思惑
六日後。
王城の執務室。
エルヴィン、宰相セシリア、親衛隊長官ルイズ、宮廷警護隊総帥ソフィア、近衛騎士団団長グレーテル、王国騎士団団長トリグラフがいた。
「ご報告申し上げます、陛下。ヴァリス王国各地で、反乱軍が決起致しました。陛下の奴隷解放宣言に反対する貴族、奴隷商人が中核です」
宰相セシリアが、報告するとエルヴィンは、
「待ちかねたぞ」
と笑んだ。
これで、こちらは大義名分をもって反対する勢力を一網打尽にできる。 同時に国内の貴族たちの力を削いで中央集権体制に移行する土台ができる。
まさにエルヴィンの思惑通りであった。
反乱軍は、三つの軍団に分かれていた。
東部と西部と北部である。
その内、北部の軍勢が最も大きい。
「速やかに鎮圧する」
エルヴィンが、言うと全員が頷く。
北部の反乱軍はエルヴィンが討伐する事となった。
東部は、近衛騎士団団長グレーテル。
西部は、王国騎士団団長トリグラフ。
エルヴィンは、近衛騎士団の兵力の1割を率いて、北部の反乱軍を制圧すると主張した。
「若君、さすがに近衛騎士団の一割では、寡兵過ぎませぬか?」
トリグラフ老人が、心配そうに言う。
「案ずるな。300名もいれば十分だ。それに試したい事もあるしな。それよりも、トリグラフよ。老いても武略は衰えてはおるまいな?」
エルヴィンが、微笑するとトリグラフ老人は胸を張った。
「御安心を。反乱軍を見事、征伐して見せましょうぞ」
「頼りにしているぞ。親衛隊長官ルイズ、宮廷警護隊総帥ソフィア」
「はっ」
「は、はい……」
エルフの母娘が同時に答える。
「卿らは予の護衛としての活躍を期待する」
エルヴィンが、紫瞳をルイズとソフィアにむけた。
「誓って陛下のご期待に添ってご覧に入れましょう」
ルイズが、大きな胸をそらした。
「が、頑張り……ます」
ソフィアが、オドオドしながら答える。
その後、エルヴィンは宰相セシリアを王城の留守居役に任命した。