司法
その後、逮捕した犯罪組織の構成員たちは、罪が重い者は処刑し、軽い者は、開墾作業をさせる事とした。
「罪の軽い者は開墾作業ですか、陛下は、随分とお優しいですのね。私は全員、処刑しろ、などと思ってしまいますわ」
親衛隊長官ルイズが、美麗な顔に揶揄を浮かべた。
ルイズは遠慮なくエルヴィンに意見するのが、自分の役割であると考えている。
そして、それは正しいとエルヴィンも周りの人間も理解している。
エルヴィンは楽しそうな苦笑を浮かべた。
「見せしめの効果は十分だったからな。それに殺すよりは労務させた方が利益になる。慈悲ではなく、打算だ。俺は利己的なのだよ」
エルヴィンは、穏やかに述べた。
ルイズは、頷いて了解を示した。
「しかし、見せしめの効果は大きいでしょうな。犯罪組織の大幹部達の死体は十日間野晒しです。これで王都はおろか、王国全体に司法にたいする恐怖と権威が芽生えましょう」
トリグラフ老人が、荘厳な声で言う。
「は、犯罪組織が……、無くなった……から、国民は……安心……だね」
宮廷警護隊総帥ソフィアが、小声で言う。
「はい。王国の重犯罪の8割は犯罪組織の仕業でしたので、これで相当治安は回復致します。治安の回復にともない我が国の経済力も上がるでしょう」
治安が悪化すると経済力も低下する。
犯罪が増えると流通にも影響が出るし、警備費用などの余計な負担が増えるのだ。
「さて、一仕事終わったな。卿らの尽力に感謝する。少し休むが良い」
エルヴィンが告げると、臣下たちは全員一礼した。