処刑
三日後。
王城の広場で、捕らえたマフィアの幹部たちの公開処刑が行われた。
広間には大勢の群衆が押し寄せ、ショーとして処刑を楽しむべく、群がっている。
女子供もおり、酒屋が酒を売り歩き、楽士達が音楽を奏でて盛り上げている。
処刑は、立派なエンターテインメントなのだ。
地球のフランス革命時と同じである。
エルヴィンは、宰相セシリア、親衛隊長官ルイズ、宮廷警護隊総帥ソフィア、近衛騎士団団長グレーテル、王国騎士団団長トリグラフとともに広場にいた。
エルヴィンは、広場に設けられた高台に乗り、大衆の歓声で迎えられる。
常日頃、犯罪組織達に苦しめられてきたのは、広場にいる大衆達である。
自分達を害する悪党どもを捕縛してくれたエルヴィンに対し、熱狂的な歓声と賛美、尊崇が集まる。
マフィアの幹部たちは全部で、五十六名。
全員、顔面蒼白となり、泣き出している者もいる。
ヤクザなどこんな程度のものである。
ヤクザは暴力が本質であり、拠り所だ。
自分よりも弱い相手ならば、虚勢を張れるが、自分よりも強い者には屈服するしかない。
「これより、ヴァリス王国国王エルヴィン陛下の名において、卑劣なる罪人達の処刑を開始する」
王国騎士団団長トリグラフが、宣言文を読み上げる。
処刑台に五十六名のヤクザたちが連行された。
そして、後ろ手に縛られたまま、正座させられる。
ヤクザたちの背後に、斧を持った処刑人達が一斉に斧を振り上げた。
「助けてくれ!」
「お慈悲を!」
「嫌だ! 死にたくねぇ!」
ヤクザの幹部たちが泣き叫んで命乞いをする。
エルヴィンは、あまりの醜態に眉をひそめた。
「少しくらいは堂々と死を覚悟するヤクザがいると期待していたのだがな……」
エルヴィンは嘆息した。
「それは物語の中だけです。ヤクザなどこの程度です」
宰相セシリアが、冷静に告げた。
(確かにその通りかも知れないが、どうにも、つまらん)
エルヴィンが、豪華な椅子に座り足を組む。
司法官が、罪状を読み上げた。
犯罪組織【赤蜘蛛】や、同じく犯罪組織【黒蛇】などの複数の犯罪組織の名をあげる。
そして、彼らの名前を言った。
その後、彼らの罪状が読み上げられた。
「殺人、強姦、輪姦、強盗、詐欺、脱税、誘拐、人身売買、麻薬売買、窃盗、奴隷売買……」
罪状の数があまりに多く、聞いているエルヴィンたちは不快さを隠しきれない。
大衆達が怒号して、ヤクザの幹部たちに悪罵と石を投げつける。
特に、幼児を誘拐して売春婦にするという罪状を読み上げた時、民衆の怒りは頂点に達した。
「暴動になりかねません。即時、処刑すべきかと……」
親衛隊長官ルイズが、エルヴィンをかばうように前に進み出ながら言う。
エルヴィンは頷き、処刑を宣告した。
処刑人の斧が振り下ろされた。
犯罪組織の大幹部たちの首が飛ぶ。
大衆が喝采をあげて、
「エルヴィン陛下、万歳!」
と歓呼した。