2-2 入学式
水蓮が席についてから数分後チャイムが鳴った。
それとほぼ同時に配布プリントであろう紙を右手に抱えた先生がやってきた。
おそらくこの1年2組の担任の先生だろう。
年は20代後半から30代前半で若い女性の先生だ。
(会話が通じないとか面倒くさい人じゃないといいな
中学校時代のあいつがいるし)
あいつというのは、水蓮が中学2年生時の担任で全校から避けられるくらいの人気があった人だ。
そのエピソードはまた時間があればやっていこう。
「皆さん、おはようございます。
本日からこの1年2組の担任をさせていただく、木村智花です。
これから1年間よろしくおねがいします。」
「本日は入学式です。きちんとした態度で臨みましょう。
開始は9;00です。それまで時間がありますが、教科書類の配布をまずしていきます
これから配るので一冊ずつとって後ろに回していって下さい。」
この学校の一クラスあたりの人数は30人と決まっている。
(推薦組クラスは少し少なめ)
そして教室のなかは、机が6×5で配置されている。
(廊下側から1,2,3と数えていく。)
水蓮は2列目の前から2番目の位置だ。
先生が、前にある大きめの棚を開き、そこにある教科書を取り出していく。
(手伝ったほうが絶対いいよね。けど、初めてだしどう思われるか怖いしなー。)
と考えていると、
「先生、手伝いましょうか?」
1列目の先頭に座っている女子が手を挙げた。
「お、助かる。そこに入っているやつ全部そこの机にだしておいて。
5冊ずつ分けてもらえたら助かる。」
そこの机というのは黒板前に配置されている先生の固定席。
つまり教卓だ。
「分かりました。」
(え、すごい!勇気あるなー。)
けど、よく考えるとこの学校って同じ中学かスポーツクラブ出身だから大体知り合いなのか、、
え、じゃあ僕ぼっちみたいなもの!?
確かに、来た当初を振り返ってみるとみんな笑ったりしながら仲良く話していたし、
そういうことだったのか!そういえばどっかで書いてあったな、、
だから琴音も一緒がよかったのか、、納得。納得。
なにか僕に思いがあるかと勘違いして恥ずかしい思いしないとだったじゃん、、
(鈍感なふりしていたが、
琴音の反応見てから緊張しまくっていた。)
なんか、すげー安心した。
けど、僕の計画した青春ライフはどうなるんだ?
友人関係も出来上がってるだろうし、、
まあ、同じグループで関わりが多くなりそうな周りから話かけていこうかな
そして教科書が配られてくる間、後ろに回すと同時に
水蓮はさっとあたりを見回した。
そこで、、
えっ、、女子しか周りいなくね?
というより女子割合高くね。その割には男子の位置固まってるし、、
軽い先生からのいじめかなww、、
だから名簿並びはなにも考えられてないから嫌なんだよ!!
どこの学校もはじめは名簿並びが普通なのでこればっかりは運としかいえないだろう。
(席替えは先生との関係と駆け引きでなんとかいけるので運じゃないと思う!)
と、水蓮が軽く絶望していると
前の人が教科書の端でつんつんとつついてきた。
すると目の前にいくらか教科書の配るのがたまっていた。
焦ってすぐに後ろに回す。
前の人は女子だが、どんな顔とか確認しておきたかったが、イメージが損なわれたと思って恥ずかしそうに下を向いて3人分の教科書なんてなんのそのという感じで、後ろに素早く、まったく無駄なく送る。
まあそんなことは置いといて、一つずつ丁寧に記名をしていく。
配られたものにすぐ名前を書くというのは、中学校の頃は耳にタコができるほどいわれ続けてきたことなのでさすがにちゃんとやる。
僕は小、中とサッカーにすべてをかけてきた。
課題なんてはやく終わらせて、練習をしたかったので、字はどんどん汚くなっていった。
小学校入るまえのほうがきれいだといわれるほどまでに、、
丁寧といわれても水蓮自身の渾身の文字なので上手かどうかは定かではないが、、
そのおかげ?で時間に少し余裕が持てる。
その間に教科書内容を確認しておく。中学だったら後ろの席のやつにちょっかいかけていたが、今はそういうわけにもいかない。
僕は数学と歴史が好きだ。数学に関しては数学オリンピックの問題のRTAとかよくチャレンジしてた(しかし、出場はしたことがない)し、大学の問題集とか暇だったらやってたぐらいだから、
高校の内容は全部暗記したレベルだし、みんなよりは得意だ。
歴史は昔、おじいちゃんに大量に教育向け歴史漫画を買ってもらってよんだので、
林羅山は温泉好き とかいう誰のなんの情報やねん っていう感じの雑学をいっぱい持ってるし、
すごい歴史の知識は全部入ってる。
平安時代の戦いの名前と年数は大体覚えてる。
(テスト以外で使うことあるんとかという感じだが)
パラパラーと歴史と数学をめくったが、とくに難しいものは見当たらず、
逆に簡単すぎるぐらいだ。
ただ、僕の苦手な教科だが、、英語だ。
英語はほんとに無理!単語の並び替えとかむり!
have の使い方とかもう意味わからん!
水蓮は英語が苦手すぎて学校の定期テストの平均が大体40点代と、
悲惨である。
他もそれぐらいだとただバカなだけだなと思うが、
(バカとよばれるのもいやだが)
数学、社会は学年一位ぐらいの実力だったので、水蓮の心を『なんでこんなにできないんだ!!』
と何度も萎えさせていた。
「しっかり名前書いてくださいね。
あ、名前書く前に軽くページ抜けてないかも確認しておいてください」
そういえば教科書のページが抜けていることなんてあるのかな?
小学・中学合わせてもそんな人がいたことないんだよな。
さすが、学校相手にしてること?はあるなと思った
「今やることはこれぐらいなので、少し楽にしてていいですよ。
初めて会った人とかとも友情を深めていって下さいね。
ちなみに、明日の一限のホームルームで自己紹介してもらいます。
好きなこととか趣味とか言えるようにしてください。
あと、これから3年間の目標とか入った理由とか一言言えるようにしていてください」
あした、自己紹介しないとなのか。面倒だな。
けど、初めての人からしたら誰にどんな話をすればいいか、きっかけになるから助かるな。
視線を自分の机からまわりに向けてみる。
前と隣の女子はその人同士でこれからの楽しみとか語っている。
僕の周りの男子は席を立って、ほかの人のところに行ったり、本を読んだりしていて、
完全に僕が孤立してしまった。
本って学を深める以外にも、暇なとき読んで浮いてる感じをなくすこともできるのか。
持ってくればよかったな。
家には参考書とかしかないけどww
話かけられない、哀れな陰キャだなとか思われたくないから緊張で眠れなかった程で寝るふりをする。
(あーしんどい。人見知りはサッカーで克服したと思ったけど、やっぱ無理だな
はー。)
腕を机に置いてそこに頭を乗せる感じで早く入学式始まってくれと願っていた。