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執事の主人の証明完了

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 舞が走り出すと男は思い出したように名乗りをあげる。


「俺の名はもり 桜花おうか覚えておきな!」


名乗り終わると男はその場で軽くジャンプしてそのまま空へと飛び上がった。そしてそこから手を振るう。振るった手からヒュッという音をたて何かが舞へと飛んでくる。舞は見えないそれを音を聞き、避ける。その勢いのまま、舞も軽くジャンプする。垂直に1メートル程飛ぶが、桜花には届かない。しかし舞がジャンプの最高高度に達すると同時、再度、舞の体が1メートルほど上がる。桜花は予想外の舞の動きに焦り、即座に距離を開く。だがその距離も舞に対しては意味は無かった。今度は二段三段と桜花に向かって加速する。舞の能力を知らない桜花は何故、舞がまだ浮いているのか、そして自分の方に高速で飛んできているかがわからないでいる。反対にユウ達はここ2人をぶつけたことが正解だと確信する。舞の能力とは衝撃作成しょうげきさくせい自分の体から衝撃波を生み出すという至ってシンプルな能力である。ただそのシンプルさが非常に強力なのだ。舞の能力は特に汎用性が高い能力。先ほどから浮いているのは自分の体から出した衝撃波で自身の体をその場から弾くことで浮いているのである。高速移動も同じ要領で行っている。そして一度触れて仕舞えば相手に衝撃波の乗った一撃を入れることが可能となる。つまりほぼ確実に相手を昏倒させることが可能な一撃を放つ事が出来るというわけだ。そんな人間が高速移動できるのだ。強くない訳がない。しかし、桜花が冷静さを取り戻すと状況が一変する。桜花自身も舞と同様の速度で飛行し始めたのだ。そして桜花はその合間で舞に向けて腕を振るう。そこから発生する攻撃を舞は左右に自分の体を押すことで回避し続ける。そこで舞は相手に自分の能力が割れたことに気付く。すると舞の表情から読み取ったのだろう。桜花が流暢に話し出す。


「お嬢ちゃんの能力、衝撃波かなんかだろう?その動きを見てりゃわかるぜ」


そう話し終えニヤニヤといやらしい笑みを浮かべている。しかしその顔は続いた舞の言葉に崩れた。


「お兄さんの能力は風かなんかでしょう?その攻撃と動きを見ていたらわかりますよ。あなたが先程から腕を振るっているのは風の刃か何かを飛ばすためでしょう?」


そう挑発するように自分の予想を口に出す。その予想が図星だったのか、桜花の表情から余裕がなくなり怒りへと転じる。このアマッ、と吠え、滅茶苦茶に腕を振るい出す。しかし舞は見飽きたと言わんが如くそのまま桜花に突っ込んでゆく。そして一つ目の風刃が舞に触れる直前自分の前から風刃を押し返すような向きに衝撃波を発生させ風刃を弾く。二つ目、三つ目と自分に向けられる風刃を全て弾きつつ桜花へと距離を詰める。残り1メートル程の距離に来たところで桜花が今度は腕を振るうのではなく突き出した。そしてそこから発生した風に舞の体が押し出される。その予想外の攻撃に舞が一瞬怯む。そしてその隙を突き、桜花が最大の一撃を放つ。その一撃とは横向きに発生した小さな二つの竜巻であった。その攻撃に見かねたユウが飛び出そうとするが、命がそれを止め、舞の方を指さす。それを受け、指さす先を見るとそこには、その竜巻を前に直進のスピードが殺しきれず竜巻に突っ込んでいく舞の姿があった。しかし、舞はその状況に笑っていた。その笑みは恐怖に引き攣った笑みではなく、勝利を確信した舞の可愛らしい微笑みだった。舞は竜巻に触れるギリギリで浮遊するのをやめ、地面に落ちていった。そしてそれを見て桜花が、攻撃に当たり気を失ったと錯覚し、勝利を確信したことで気が緩む。その一瞬を舞は逃さなかった。あと5センチ程で地面に激突するという状況で、舞が急激に加速し、桜花よりも高く飛ぶ。そして大きく踵を振り上げ落下する。桜花との距離が数センチになったと同時。踵が桜花の頭、目掛け振り下ろされる。それが桜花に直撃する瞬間、踵から発生した衝撃波が桜花の脳味噌を揺らす。そして衝撃波はさらに強さを増し桜花を地面へと凄まじい速さで叩き落とす。流石に不味いと思ったのか舞がユウに指示を出そうと思い、やめる。なぜならユウは既に桜花が落ちる先に走り込んでいたからである。ユウは自分の足に岩の性質を付与しその場で踏みとどまる準備をする。そしてそのまま落ちてきた桜花の体を受け止める。そのあまりの衝撃に地面がへこむ。しかしその衝撃でも桜花には命に関わるような外傷は見られない。とはいえ先程の一撃が少し不安だったユウは陽の性質を自分に与えその状態で相手の体に触れる。陽の効果は治癒。怪我や傷を治すことが可能なのである。一通り治癒を施すとユウは命に縄を持って来させ、桜花をその場に寝かせる。そして舞が降りてくるのを待ち、降りてきた瞬間舞に駆け寄り外傷がないか確認する。舞はアハハと軽く笑ってから、


「そんなのないよ。全くユウ君は本当に心配性だな」


と応える。そんなやりとりをする内に桜花が目を覚まし舞にひとつ問いを投げる。



「お嬢ちゃん。あんた一体どうやって俺の能力に気付いたんだい?俺の攻撃はあんたの目には映らなかったはずだろ?それなのにどうして」


その問いに舞は簡単といった様子で答える。


「あなたの後ろをついて行くときに風を感じたんだよ。あなたの体で風は遮られているはずなのにね。だから気付いたの」


その答えを聞き納得したような顔で笑い出す桜花。そして桜花はそのまま舞の方に顔を向け、呟く。


「やっぱり見えてた訳じゃなかったんだな」


その言葉に舞が首を傾げる。直後舞の体が横からの衝撃に倒れる。見ると自分のことをユウが押し倒した様だった。その理由がわからず、舞は一瞬混乱する。しかしその理由が分かった瞬間。舞の顔から血の気が引いてゆく。舞が見たもの、それは先ほどまで自分が立っていたところに向かって抉れた地面であった。ユウが押し倒してくれなければ自分は今頃、そんな事を考えてしまう。ユウはもう桜花の腕を掴み、捻りあげている。そこに命が縄を持って走ってくる。ユウは縄を受け取ると手早く桜花を縛り上げ地面に叩きつける。それにより背中を強打することになった桜花が咳き込む。ユウが舞の方に駆け寄ると、舞はもう立ち上がっており、ユウが駆け寄って来たことに気付いたのかユウのことを見つめる。


「ほらね?やっぱり私の執事さんはこういう時に、きちんと助けてくれるんだよ。」


そう言って薄い胸を張る。すると、先程の攻撃で切られたようで着物の帯がはらりと地面に落ち、そしてそのまま着物も地面に落ちる。あまりのことにその場にいた全員の動きが止まり、数秒後に舞が急いで自分の胸を手で覆う。


「見た?ねえ見たよね、見たよね!?ねえなんとか言ってよ。ねえ、ねえってば!?」


そう喚く舞から、恥ずかしさと困惑からユウは顔を背ける。命は屋敷に服を取りに行ったようだ。そして、悔しさと恥ずかしさから舞は座り込んで


「あ〜も〜嫌だ〜!」


と叫んだその声は、屋敷にいたにまで聞こえたらしい。

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