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執事の苦悩と主人の信頼

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 蓮間との一件から2日ほどが経った。龍斗が命に渡したあの紙の内容はユウに対するSOSの手紙だった。手紙によると龍斗の妹が人質に取られており、仕方なく向こうに協力しているとのことだ。命の話から考えるに相手の組織は教会という組織らしい。龍斗はその幹部になっているということか。しかし、ここで命の話から気付ける事がもう一つある。それに気付いた舞がユウに問いを投げかける。


「君と龍斗君の関係を聞かせてくれないかな。君はあの子を回収しに来た男が龍斗君であると確信していたのでしょう?だからあの時君の動きが一瞬止まった。そうでしょ?」


その質問に答えるのに一瞬躊躇い、観念したかの様にゆっくりと口を開く。


「私と彼は数年程前に知り合ったんです。その時彼らに少し協力して、それからも連絡をとっていたのですが、一年程前から連絡が途絶え、今にいたるという訳です」


言い終わるとユウは少し調べ事をしてきますとそう言って部屋に困ってしまった。翌日からは何事もなかったかのように笑顔で挨拶をしてくれる。しかしその笑顔にどこか影が掛かっていることに舞だけは気付いていた。今日もユウが舞を起こすために部屋の前にやってくる。その左手には先程できたばかりの朝食が乗っている。空いている右手でドアをノックして、部屋に入る。そのまま左手側にある机の上に朝食を置き、ベッドの方を向くと、今日は珍しくすでに起きていた舞がベッドの上に座って眠そうに瞼を擦っている。舞はユウに気付くと寝起きのふにゃふにゃの声でおはよう、とユウに挨拶する。その声のあまりの可愛さにユウの鼓動が速くなり口元が緩む。そんな自分にユウが気付くと軽く咳払いをして気持ちを切り替え、


「おはよう御座います。今日もとても可愛らしいですね」


と軽口を叩く。しかし寝起きの舞にはその軽口が効いたらしく顔を真っ赤にしてもうバカ、と言ってユウに枕を投げつける。それをヒョイと躱し


「着替えたら庭に出てきてください」


と言い、ユウは部屋を後にしようとする。直後ユウの背中に温もりが伝う。その正体を知るために背後を向こうとして


「振り向かないで!」


と舞からの静止の声に動きが止まる。温もりの正体。それはユウに抱きついた舞の体温だった。それにユウが気付くとほぼ同時、舞が


「君が無理をして壊れるところなんか私は見たくないよ。君は今、龍斗君のことでとても思い詰めている。君に彼との事を聞いたのは私だけど、君が傷付くのは嫌なんだ」


と震える声でユウに話しかける。その言葉を聞きユウは自分が舞に悟られてしまうぐらい無理をしていた事に気付く。確かにあの一件からろくに睡眠もとっていない。でも、それでもまだ無理をしなければならない。だってそうしないと今のままだと、そんなユウの思いが声になる。


「今のまま、龍斗さんを助けに行けば確実にあなたを危険に晒すことになってしまう。それだとまた、また、守れない。そんな結末はもう嫌なんです!また自分の手から守れたはずのものがこぼれ落ちていくのは!だから、だからもう少しあと少しだけ、無理を、無茶をさせてください…」


それは一切、嘘も冗談もないユウの本心そのものだった。そのことが理解出来たから舞も優しく本心を伝える。


「君が私に出会うまでにどんな人生を送ってきたかは知らない。でも、君が思うほど私も君もそんな弱くないよ。私だって君の主人だ。君がそう思ってもらえると、嬉しいけど、君にずっと守られ続けなきゃいけない訳じゃないんだ。たとえ私が危険に晒されても私は平気だよ。きっと私が命の危機にあっても私がどうにかなる前にきっと君がどうにかしてくれるでしょう?だって君は私の執事なんだ。私の執事が私が危ない時に駆けつけない訳ないでしょ。私は君を信じるよ。君は私が信じられないかい?」


その言葉に辛そうにユウは答える。


「貴方のことは信じられます。でも私は私自身をそれほど信じられない!」


その台詞を聞いてそれでも舞は優しく続ける。


「なら君は私が信じる君を信じなさい。私のことは信じてくれているんでしょう?」


その問いにユウは答えることができなくなる。数秒の沈黙。その沈黙を打ち破ったのはけたたましく鳴る警報の音だった。

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