メイド戦線
人物名の表記を性から名に変えました。本文も少し変更しましたので前話以降もご確認ください。
命の能力は鉱物操作金属は勿論、宝石などを物理法則を無視して遠隔操作することが可能な能力だ。他にも半径5メートル内の鉱物を感知することや宝石にエネルギーを溜めて放出すること、さらに鉱物の鋭さ、細さ、長さを自由に変更できる。先程龍斗の頬を切ったのは手袋の中に隠してあった鋼鉄のワイヤーを鋭くとても細くした物を高速で飛ばすことで傷を付けたのだった。龍斗はそんなこと知るはずもなく頬を切られたという事実に飛び下がり警戒の色を濃くしていた。しかしすぐに龍斗は警戒するのをやめ、剣をその場で軽く横に振る。直後何かを感じ取った命が大きく横に飛び退く。すると、命の後ろにあった植木鉢に横一線のヒビが入り、切れた。割れることなく切れたのだ。命はその様子を見て龍斗の能力に当たるとまずいと考え、指輪を二つ外し、龍斗へ投げつけ、爆破させる。それを左に走り爆破を避け、再度剣を振るう。その斬撃が爆煙を晴らしていく。しかし、そこには先程まであった命の姿は無く、代わりに飛んでくる宝石が龍斗の視界には写り込んでいる。龍斗は先刻の爆破が自分に投げつけられたモノによることを思い出し、宝石の爆破を警戒し、そこから退避しようとする。しかし、時、既に遅く宝石が爆発する。爆破の轟音が止むのと同時に高く空に跳んでいた命が地面に足をつけ、本宮を殺していないかという不安から爆破した場所へと速足で向かい、即座に辺りを見回す。そう、そこには龍斗もその死骸も無かったのだ。命がその事実に一つの予感を覚え空を見上げると、予感が的中。龍斗の姿があった。龍斗はもうミコトに向けて落下してきている。その状況に命は既視感を抱く。既視感の正体に気づくまでには数秒もかからなかった。それはこの屋敷で働く際の試験中、ユウが自分に見せた動きに似ていたのだ。そのことに気づき避け方を即座に構築する。しかし龍斗が剣を振るう構えをとったことで考えを中断し、右手を縦、横交互に振るい網のように鉄線を龍斗に向かわせる。龍斗はそれを剣を数回振るうことで、切り裂いてゆく。鉄線が全て切れると龍斗は命の心臓に剣先を向け落下してくる。命は腰につけていたダイアモンドを外し壁のように広げて剣を防ぐ。猛攻を防ぎ切ったことで美琴が一息つく。その油断しきった命に一撃加えようと龍斗が再度剣を構え直すと、龍斗の耳についていた無線から男の声が流れる。
「淵獄が負けた。すぐ仕留められそうにないなら奴を迎えに行ってこい」
男はそう捲し立てると無線を切る。龍斗はその指示を聞くと、腰の鞘に剣を収め、命の方を向きポケットから紙を取りだす。それを紙飛行機の様に折り、命に向けて飛ばす。命が紙飛行機を受け取り顔をあげると、そこに龍斗の姿はもう在りはし無かった。