2: 最初で最後
真の殺人鬼は、一流の殺人鬼とは似て異なる
一流とは、それを生業として生きている者であり、
真とは、欠格したナニカを求めて、人を壊すのである
ーーーーーーーーーーーーーー《シャーロック・D・ホームズ執筆【悔恨】》
「……ハァ…」
彼女からの血を一頻り浴び続けた私は、自宅の風呂の湯船に浸かっていた。
ん?湯船のお湯は血なのかだと?ハハ…そんなわけないじゃないか
それはただの血であり、愛はそこには含まれていない。
つい先程迄に全身を駆け巡らせていた血が愛に満ちているのであり、
火や光で温めた血はただの血である。
……一体誰に言ってあるのだろうか。
風呂から上がった私は、地下にあるワイン貯蔵庫にて、とある商人から頂戴(平和的に)した赤ワインの蓋を開ける。
どのような名前かと言われても、酔いたい時に丁度良い程度の感覚でしか嗜まない為、よく分からない。
だが、あの商人のワイン樽を頂戴した時の顔は今にも忘れられない。
どのような意味でかと言われたら……そうだな、黙秘することにしよう。
世間から悪魔だの何だの言われる私ではあるが、隣人愛というものはあるのだ(大半は消えてしまったがな)
……最近独り言が多くなってきたな…齢かな?
まぁ良い…特に人は居ないからな。
自身に言い訳して苦笑いしながら、部屋の窓に近づく。
毎晩ロンドンを薄く閉ざす霧が、昔は怖かったが、今となっては仲間のように感じてしまう。
そのように黄昏ながらワインを一口、うむ、旨い。
今宵もこのような幸せに巡らことが出来たのを、あの商人に感謝するとしよう。
「……む?」
そこで気付いた。
いつものこの時間帯は、一秒毎に鳴る時計の音、私の吐息、軋む床、この三つしか音が鳴らない筈なのに
「!?」
私以外の足音の気配を感じる
バカな、この辺りは人が居なくなった(私のせいかもしれないが)ゴーストタウン、人の気配を感じるというのはおかしい、
さらに言えば、その気配は、誰かから隠れているような気配だ。
つまり
(……バレたか?)
ジャックザリッパーの捕縛、もしくは殺害が目的であろう。
あの薄暗い霧の中で彼女の骸を数時間で見つかるなどあり得ぬ、
さらに言えば、痕跡を残した筈さえない。
いや、しかし、バレたと言うことは、あったのだろうな。
「……さて、此処とはもうお別れか」
各地を転々としてる中で、この拠点は最も長く使っていたと思う。
その為か、愛着を感じてしまう。
まぁ、背に腹はかけられぬと、ジャパンでは言うらしいがね?
そうして飲み干したワインのコップをコトンとテーブルに置き、窓を開ける。
「さらばである」
そうして飛び降りようとした瞬間
背後から焼けるような痛みを一瞬だけ感じて
意識を手放してしまった。
この話はもうほぼフィクションとお考えください泣