第7話 伯爵家での夜
そうして今俺は狩ってきたクローベアのステーキを食べている。
ところでなんで俺伯爵家の人たちと夕ご飯食べてるんだろ・・・
家族でも使用人でも客でも無いのに。
「レイちゃんは明日どうするつもりですか?」
「そうですね・・・明日はハンターギルドに登録してみたいと思ってます」
「なら、私と一緒に登録しませんか?」
「え?」
耳でもおかしくなったのだろうか。
今伯爵家のお嬢様がハンターになるって言ったような・・・
クーゲルさんに「ほんと?」という目線を送ると首を縦に振るクーゲルさん。
「言ってなかったな、我がミエーラ家は代々ハンターをやっていて魔王軍に対して功績をあげてきた家系なんだ」
「なるほど・・・」
「まあ、代々と言ってもまだ3代目だけどね」
「それで伯爵!?」
この世界のことはよく知らないが、それってかなりすごいことだよね。
毎代かなりの功績をあげてきたことだろう・・・
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「ごちそうさまでした!」
「美味しかった。ごちそうさま」
「は、早い・・・」
レイは量の多いフルコース料理は苦手である。
それは女の子になって胃が小さくなったとかではなく元からレイはあまり食べない人だったからだ。
「では、食べ終わったら一緒にお風呂に行きましょうね!」
メリアちゃんから最後まで食べ終わらないレイへお風呂へのお誘いである。
マズい・・・絶対に回避しなくては・・・
「だそうですよクーゲルさん」
「いやあなたですよ!レイちゃん!」
うん知ってた。
「そんなに大きなお風呂なんですか?」
「家のお風呂は10人入っても十分な広さがありますよ?」
大浴場レベルじゃねえか。
「見ず知らずの人とお風呂に入るっていうのは大丈夫なんですか?」
「私は気にしませんよ?」
チラッ
「娘が女友達と入る分には気にしないぞ?」
いつの間にか見ず知らずの人から友達にランクアップしてるが嫌ではないので気にしない。
だがそうなるともう回避することが・・・
「では、待ってますね!」
「あ・・・」
そう言って去っていくメリアちゃん。
回避失敗か・・・
せめて見ないようにしよう・・・彼女のも、自分のも。
何がとは言わないが。
食べ終わった皿を片付け、複雑な気持ちでレイは食堂を後にした・・・
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「それで、調査の結果はどうだった?」
私はレイと入れ替わるように入ってきたトマスにそう問いかけた。
「すみません旦那様。
私の力では何も・・・」
「そうか・・・」
娘に近付いた・・・いや近付かれた彼女は一体何者なのか、記憶のこともあるので早く家族に会わせてあげようと身元の調査を急がせたが、結果は出なかったか・・・
あれだけ特徴的な白い髪、耳、尻尾。
さらにあの見たこともない丈夫そうな不思議な服や道具。
これだけ特徴があって見つからないとは…
「ですが、今日1日接してみて、敵意のようなものは何も感じませんでした。
お嬢様とも好意的に接してくれているようですし、性格も良く、礼儀ができております」
「ああ、それは私も思っている。
あの年であそこまで礼儀ができるのは珍しい」
「鑑定の結果ではまだ11歳、お嬢様と同じ年のようです」
「まだ11歳・・・」
「もし、身元がわからなかった場合はどうしますか?」
「それは・・・」
その時は、どうするのがいいのだろうか・・・
娘の友達の範囲で支援するのがいいか、使用人として引き入れるか・・・
なにより、トマスの報告によるとかなり強力な武器を扱うことができるようだ。
よからぬ者に狙われる場合もあるだろう。
いくつか考えられるがやはり、
「本人に任せ、その中でできる支援をするのがいいだろう」
ハンターをすると言うならハンター家系としてできることを支援しよう。
「それがいいでしょうな」
「今夜は私も暇だ、私も調査を手伝おう」
「わかりました」
そうして、食堂にいた2人は食堂を後にした・・・
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「え? 着替え持ってないんですか? 下着も!?」
「えっと…あの…」
「うーん…わかった。私の貸してあげるよ」
「え!? い、良いですよ! 悪いですし」
「良いですよ。えーっと下着は…はい。これ、服は取ってくるからちょっとまってね」
「いや、あの…」
「いいからいいから」
そう言ってメリアちゃんは俺の分の服を取りに行ってしまった…
女子の下着、すなわちブラジャーだが…付け方知らないし…そもそも男としてこれをつけるといろいろ終わるような気が…
「はい、私と背格好が変わらないから今着てる服の1つ、似合いそうなやつ持ってきたよ…って、なんで下着まだ付けてないの?」
「えっと…」
「もしかして…付け方知らないの…?」
「…はい」
「嘘…? そのサイズで?」
うっ…その言葉で視線が下にさがる。
そこには男にしては膨らんだ胸があり、余計に恥ずかしくなりすぐに視線を上に戻す。
「ほら、貸して」
そう言ってメリアちゃんは背後に回り、手際よく下着を付けてくれる。
「はい、服は流石に着れるよね?」
「大丈夫です…」
かなり複雑な気持ちだがなんとかそれだけ言い、服を見てまた複雑な気持ちを持ちつつもうどうにでもなれと可愛らしいフリルの服を着ていく。
そして…またメリアちゃんと一悶着あったが割愛させていただく。
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「疲れた・・・」
メリアちゃんから正しい髪の洗い方などを伝授させられていたり、何がとは言わないが見ないようにしたりと精神的に疲れるお風呂だった・・・
そのうえ一緒に寝ようなど言い出した時は回避に苦労した・・・
そうして、一緒に寝るというイベントを回避に成功したレイは自分のために用意された客室へ向かっていた。
「この部屋か」
レイが部屋を見つけ、ドアノブに手をかけた瞬間、
ドーーーン!!!
大きな音が屋敷を襲った。
方向は・・・メリアちゃんの部屋だ!
それを理解した瞬間全力で走り出すレイ。
屋敷の間取りは地図を見たからなんとなくはわかる。
正確では無いところも多少あったが誤差の範囲だった。
メリアちゃんの部屋にたどり着き、ドアを勢いよく開ける。
「大丈夫ですか!?」
そこには、眠るメリアちゃんを担ぎ、窓に足をかける男と、その仲間であろう男2人がいた。
誘拐!
「おや?衛兵かと思ったんだが」
「こいつどうします?」
「こいつも売ればそれなりの額になるんじゃないですかねぇ」
レイは空間からワルサーを取り出し、構える。
「簡単には連れ去られてあげませんよ?」
「どうかな?やれ」
その言葉で男3人とレイの戦闘が開始された・・・
お風呂シーンは読者のご想像におまかせします(丸投げ)