第6話 異世界の森にて。2度目ですが
この森ではE〜D程度の魔獣が多く出るらしい。
普段狩りをする森、つまり俺が倒れた森ね。
は基本的にEランクにしか出会わないのだとか。
「Dランクの魔獣ってどんなのがいるんですか?」
「普段狩っているホーンラビットやラッシュボアが少し大きくなったようなものですよ」
比較対象がウサギやイノシシならおそらく大丈夫・・・だよな?
「その2つのランクはやはりEですか?」
「いえ、ランク外のその他扱いですよ?」
E未満だった
「それにしてもレイちゃんは何も知らないのですね」
「ははは・・・」
実際は記憶は健在なので乾いた笑みを浮かべるしかない。
「お、魔獣が近づいております。
私はお2人が危険と判断するまでは手出ししませんので、できるだけお2人で倒してみてください」
「わかりました」
「私は魔法での遠距離攻撃が得意です。
あなたは?」
「私は魔法では無いですけど遠距離中心ですよ?」
「では近づかれる前に倒してしまいましょう」
「そうですね」
少し開けた場所で足を止めると魔獣が姿を現す。
そこにはクマがいた。
レイの知るクマの倍近くの大きさを持つクマだった。
「【アイシクル・ランス】!」
その姿を確認するとすぐに魔法で攻撃を始めるメリアちゃん。
メリアちゃんは全長1mほどの氷の槍を作り出すとそれをクマに向かって撃ち出す。
レイもそれに続いてワルサーを撃ち込む。
槍は鈍い音を立ててクマに突き刺さったあと砕けた。
そこから血が滴る。
だがレイの弾丸はその毛皮に弾かれ、傷を負わせることもできなかった。
ワルサーでは威力不足のようだ。
「レイの武器では傷をつけられません!
大規模な魔法を撃ち込むのでそのすきに離れていてください!」
「・・・わかりました」
レイは残りの弾丸をすべてクマの頭に向かって撃ち込む。
半分近くが外れてしまったが一発がクマの右目に当たった。
クマの眼球が爆ぜ、赤黒くなったのを確認しトマスさんの場所まで下がる。
「【アイシクル・レイン】!」
今度の魔法は空から大量の氷の針が落ちてきた。
大量の針がクマを襲う。
だが1つ1つが弱すぎる。
その針のすべてをものともせず、クマはこちらへ突進を開始した。
「!?」
恐らくウサギやイノシシならそれで倒せたのだろう、だが今の相手は強靭な肉体を持つクマだ。
最初の槍はその質量でねじ込むようにして刺さったにすぎない。
故に釘程度の針では意味がない。
クマの巨大な手がメリアちゃんを襲う。
それを危険と判断しトマスさんが手をかざす。
「【アイシクル・・・」
ドーーン!!
だが、トマスさんの詠唱を途中でより大きな音がかき消した。
そして、頭の無くなったクマは血を噴水のように吹き出しながら後方へ倒れ、生命活動を停止させた。
PGMへカートⅡ
戦車などにダメージを与えることを目的とした対物ライフルの1つで12.7mmと最大級の大口径弾を使用する銃だ。
重量は13.8kgもある。
レイはトマスさんの隣まで撤退したあと、この銃を呼び出し、うつ伏せの状態でエイムを合わせていたのだ。
「大丈夫ですか?」
「え、えぇ」
「レイ様。今のは?」
「私が使える武器の1つです。
中でも高火力なやつですよ」
高火力どころか戦車などを除けば恐らく最高火力である。
探せばもっと威力のあるやつもあるかもしれないが、パッと思いついたのはこれだった。
「あまりにすごい音でしたので、Aランク魔獣でも出たかと思いましたよ」
そう言って微笑を浮かべるトマスさん。
「それにしても、クローベアの頭を一撃ですか・・・
確かに高火力のようです」
「あの距離で正確に頭を撃ち抜けるのですか・・・これは・・・」
メリアちゃんはそれ以上言葉を続けなかった。
「おかげで今夜の食事は豪華になりそうです。
予定より早いですが、屋敷へ戻りましょう」
「これどうやって運びますか?」
「心配いりません。
【ディメンション・ホーム】」
トマスさんがそう唱えると、空間に穴ができた。
「【サイコ・キネシス】」
今度はクマの体が突然持ち上がり、空間の穴へ吸い込まれていく。
「すごい・・・後で教えてもらえますか?」
「ええ、大丈夫ですよ。
ところで、魔法のレベルは何がどれほどお持ちでしょうか?」
「恐らく全て、全部レベル1ですが」
「ほう・・・全属性お持ちでしたらいろいろできるかもしれませんな」
「私と同じ全属性持ち・・・レベルはまだ1だけどもしかしたら・・・」
そんな会話をしながら一行は屋敷へ戻っていく・・・
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「私はクローベアをヒューズに渡して来ます。
しばらくはお嬢様が魔法を教えていてもらえますか?」
「えぇ、わかった」
「よろしくお願いします」
そうしてメリアちゃんから魔法を教えてもらっていた。
「まず魔法を放つには詠唱する言葉を覚える必要があって」
「え?魔法ってそのイメージさえ出来れば使えるんじゃ無いですか?」
「え?」
「え?」
それから詳しく聞いてみると、魔法とは詠唱が重要で、使える人はその属性の素質がある人のみという考え方なのだそう・・・
「だから・・・こうやれば・・・」
「うそ・・・」
手をかざすとあっさり出てくるアイシクル・ランス。
「おや?レイ様はもうアイシクル・ランスを習得されましたか・・・
これは未来が楽しみですな」
「トマス、違うわ。
彼女は無詠唱で出したのよ」
「ホントですか?」
「この顔が嘘をついているように見える?」
「魔法に本来詠唱は必要ないんです。
やりたいことのイメージができるなら無詠唱でも何でもできますよ」
「これは・・・」
今俺の周りには各属性の槍が出ている。
「ファイア・ランス。アイシクル・ランス。ウォーター・ランスにアース・ランスも出せるのですか・・・」
「これ私達が教える必要ありますか?」
「なんか・・・ごめんなさい」
そして、魔法を教えてもらうはずが、逆に教えることとなり、そうしているうちに夕ご飯の時間が近づき、3人は屋敷へ戻っていった・・・