第5話 ミエーラ伯爵家
「ところで、君の近くに倒れていたゴブリンは君がやったのかい?」
クルーガーさんがそう問いかけてくる。
「あ、はい」
「ゴブリン3体を1人で・・・
それもまだお嬢様と年の変わらなさそうな少女が・・・
獣人族とはそれほどに力を持つものなのか?」
「あのゴブリン・・・そんなに強いものなんですか?」
「ゴブリンはEランクの魔獣で、1体1体は大したことがないのだが、複数でいるときは見事な戦術でこちらを襲ってくる」
「なるほど・・・」
確かに、ゴブリンにしては見事な連携をしてくるやつだと思ったが・・・
この世界ではそれが標準らしい
「それに、君の近くに落ちていたあの道具。
あれはなんて言うんだい?」
「その道具ってもしかして、テーブルに置いてあったあの黒いやつ?」
「それのことですね」
「あーあれでございますか。
クルーガーがこれも彼女のものだからと持ってきていましたが、見たこともない道具のようでしたので、不思議に思っていたのです」
「良ければ、どういうものなのか教えてくれないかい?」
「ええっと・・・」
ワルサーを使っているところを見られたのなら、あれが自分の武器ということは隠しようがないが・・・
あれの事をそうペラペラと喋ってもいいものだろうか・・・
この世界には無く、高い殺傷性を持つ武器だ。
地球では誤って人を殺してしまうことだってあるし、実際日本では所持することですら犯罪だった。
でも、なんとなく。
この人たちなら大丈夫な気がした。
「あれは、僕・・・私の能力でだした武器です。
恐らくこの世界で私にしか作り出すことができず、正しく扱えるのも私だけだと思います」
「なるほど・・・」
「じゃあ、使っているところをみせてもらえませんか?
丁度このあとから私は魔法の練習をするので、そのときにご一緒に。
良ければ魔法も教えますよ。
構いませんよね?トマスさん」
「いいんですか!?」
「えぇ、教え子が2人になるくらい大して変わりませんからな」
「トマスさんはこの国でもトップレベルの実力を持つ魔道士なのですよ」
「それはすごい・・・」
「では、また後ほど庭で」
いつの間にか空になった皿を片付け、トマスさんを連れて食堂を出るメリアちゃん。
「うちの娘に付き合ってもらって悪いな。
このあとしたかったことなど無かっただろうか?」
「大丈夫ですよ。
王国トップレベルの魔道士に魔法を教えてもらうなんてことなかなかできなさそうですからぜひ教えてもらいたいですし。
特にやることも無かったので」
「うちの娘をよろしくね」
「はい!」
今度は笑顔で答えることができた。
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昼食も終わり庭へ来てみると準備を済ませたメリアちゃんとトマスさんが待ってくれていた。
「準備はできましたかな?」
「はい。いつでも大丈夫ですよ」
「では、いつもの森にはドラゴンがいるかもしれませんので反対側へ行くことにします」
「反対側となるといつもより魔獣のランクが上がりますよ?」
「お嬢様の技量であればそこまで問題ないかと・・・
レイ様も1人でゴブリン3体を相手にすることが出来るのですし、私も付いております。」
「それもそうね」
「では行きましょう」
そうして一行は森へ向かった・・・