第4話 始めまして。レイ・アマミヤと申します。
「ーーーーん・・・」
「あ、気がついた!」
「あ・・・え?」
ここは何処だろう・・・
なんか既視感を感じるセリフだがまあそれはいい。
確か・・・ゴブリンと戦って・・・勝ったけど倒れて・・・そこから記憶がない。
それと、目の前の美少女は誰だろう?
推定10歳程度。
金髪少女。
いかにも貴族令嬢なドレスに身を包んだ落ち着いた雰囲気の少女である。
「自分の名前わかる?」
「あ!始めまして・・・ですよね?
俺・・・私はレイ・アマミヤです。
あなたが助けてくれたんですか?」
「いや・・・私では無いんだけど・・・
うちの騎士がドラゴンの目撃情報を聞きつけて調査に行ったらあなたが倒れてたって言ってたけど・・・」
騎士とか言ってるしやっぱり貴族っぽい。
「私はメリア=ミエーラと言います。
とりあえずお父様を呼んでくるからここで待っててね」
そう言って部屋を去っていった。
部屋を見回せば、西洋の屋敷を思わせる寝室のような部屋であることがわかる。
そして、部屋に備え付けられていた鏡が視界に写った。
等身大の鏡だ。
その鏡へと近づくにつれ、鏡の中の人物がより鮮明に姿を見せる。
そこには綺麗な白い髪と尻尾を携え、真紅の瞳を持つ比較的童顔の美少女が写っていた。
体を動かせば、鏡写しに同じ動作をする美少女。
それが、今の雨宮 麗の姿だった。
「客観的に見ると結構可愛いな…面影は割とあるか…?」
しばらく鏡の中の自分に見惚れていたが、ハッと我に帰り、
「そうだ!ワルサーは・・・」
見回すとベッドの隣のテーブルに置いてあった。
弾数は・・・片方が0。もう片方が15発。
大丈夫誰かが使ったりはしていない。
ひとまずセーフティをかけとこう。
ホルスター出せるかな・・・
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ホルスターも無事出せたのでワルサーをかけておく。
そうしているうちにあの少女の父親らしき人物とその執事らしき人物。
そして騎士の方らしき人物がやってきた。
「あの、助けていただき、ありがとうございます」
「うむ、その言葉は私ではなくこの、クルーガーに言ってやってくれ」
「クルーガーさん? もしかしてあなたが・・・」
「あぁ、君を見つけたのは私だ。
私の隣にいるクーゲル=ミエーラ伯爵の騎士をやっているクルーガーと言う。」
「助けていただきありがとうございます。
クルーガーさん」
今この場にいる人全員に言えることだが、とても優しそうな人だという印象だ。
多分貴族の中でも当たりの部類。
しかも伯爵か、上には王族親類の公爵を除けば侯爵しかないから政治的にかなり力を持つはずだ。
「そして私がこの家の当主、クーゲル=ミエーラだ。
ケガの調子はどうかな?」
そうだ、確か頭から血が出ていたはず・・・
あれ?
「痛くない・・・」
「うむ、トマスの治療魔法はこの国でトップレベルの実力を持つ。
痛くないのなら恐らく大丈夫であろう。
ところであなたの名前を聞かせてもらってもよいかな?」
「あ、始めまして。
レイ・アマミヤです。」
「ではレイは何故あの森にいたのか、教えてもらえるかな」
「・・・」
どうしよう・・・
恐らく異世界から転生したなんて言っても信じてもらえないだろう。
だったら・・・
「大丈夫かい?」
「あ、いえ、大丈夫です。
ただ、気づいたらあの森にいて・・・名前以外はほとんど思い出せないんです・・・」
「そうか・・・」
「記憶がない・・・やはり脳にダメージがありますかな?
もう少し治癒魔法をかけてみましょうか」
「あ、大丈夫ですよトマスさん。
倒れる前から思い出せなかったので」
「そうですか・・・」
「ではもう一つ質問したい。
あのあたりでドラゴンの目撃情報があった。
現在調査中だが、何か知っていることがあれば教えてほしい」
そのドラゴンって絶対バハムートのことだよね。
本当のことを言うと確実に誤解を生み面倒くさくなるから黙っておこう。
「すみません・・・私は何も・・・」
「そうか・・・」
「お父様、レイちゃんを食事に誘ってはどうですか?」
そう言ってさっきの少女が出てくる。
「それはいいお考えですお嬢様。
どうなさいますか?」
「うむ、せっかくの機会だ。
娘もこう言っているしどうだろうか?」
「え・・・」
この人たち・・・見ず知らずの人を食事に誘うなどして大丈夫なのだろうか・・・
伯爵だよね?
疑問の視線をクルーガーさんに投げかけると肩をすくめていた。
もしかしたらよくあることなのかもしれない。
「じゃ、じゃあご一緒させてもらいます」
「では、ヒューズさんにもう1人前作ってもらうように言ってくるね」
メリアちゃんはそう言い残して部屋を出ていった。
「どうやらメリア嬢はあなたを気に入ったらしい」
「そのようですな」
そう2人の従者は感想を零す。
「ということみたいだ。
良ければうちの娘と仲良くしてほしい」
「は、はい?」
クーゲルさんの言葉にそう返しすことしかできなかった。
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そうしてミエーラ家の人たちと食事をすることになった。
「公式の場でもないしそう緊張する必要はない。
友達の家族と食事する感覚で作法など気にせず食事を楽しんでほしい」
「は、はい・・・」
緊張するなと言う方が無理であるが、少しだけ気が楽になったきがする。
「どうやら私だけ自己紹介ができていないみたいだからしておくわね。
クーゲルの妻のエメルダ=ミエーラです
レイちゃん、よろしくね」
「はい。レイ・アマミヤです。
よろしくお願いします」
「ではせっかくの食事が冷める前に食べよう!」
クーゲルさんのその言葉を合図に、みんなが食事に手を付け始めた。