第41話 夜の見張りにて
お久しぶりです。
受験も片付いたのでまたちょくちょく更新していきます。
ところで皆さんはこの作品に対してどう呼んでるんですかね? 私は「現代兵器」と約すことが多いですけど、これこの作品の略称としては……みたいなところありますし。良ければ何かいい案を募集してます。
防腐加工してたら暗くなってきてしまった。
「し、仕方ないから今日はここをキャンプ地としようか」
普段その日帰りかせいぜい1泊2日の狩りばっかだったから長期間の狩りなのにいつもと同じ獲物を狙っていた…
メルに言われなければ手遅れになっていただろう。
「夜の見張りはどうしようか」
「私はそちらに合わせますわ」
「私もそちらで決めてもらって構わない」
と、二人は言う。
それならと二人には最初の方の見張りの時間を入れておく。
残りをアイリスの4人で埋めていく形だ。
さり気なくフィルリアの入る見張り時間を他より少なくしているが、まあ王女殿下だしな………
「それじゃ、見張りよろしくー」
「えぇ、時間になれば起こしますわ」
「おやすみー」
「ん・・・おやすみ・・・」
そうして、フィルリアと二人で最初の見張りだ。
「アナタは……」
「うん?」
みんなも寝静まった頃、焚き火で揺らめく炎を眺めながら見張りをしていると、不意にフィルリアから話しかけてくる。
「アナタは、どうして強いのですか?」
うーん、難しいな。
俺の強さの理由か…デザートイーグルなどの現代兵器が使えるから?
魔法の応用力? レベル?
いや、レベルはどうだろう、あんまり関係ないかも。
今一度自分に鑑定をかける。
名前:レイ・アマミヤ
性別:女
年齡:12
種族:獣人族(狼)
レベル:31
魔力:20100/21350
スキル:【能力付与】【言語取得】【道具創造】【鑑定】【自然治癒】【剣術(6)】【斧術(3)】【槌術(3)】【棍棒術(1)】【刀術(9)】【爪闘術(2)】【牙闘術(2)】【射撃術(13)】【盾術(5)】【二刀流(10)】【体術(9)】【料理(4)】【隠密術(6)】【錬金術(4)】【魔力交換】【スピードブースト】【魔法(火:10 水:9 風:14 土:10 氷:14 雷:12 鋼:8 空間:15 光:13 闇:10)】
加護:バハムートの加護
この世界にはゲームの世界のように魔法が使えるし、レベルシステムやスキルシステムが存在している。
だけどこのレベルシステム、上げたらはい最強ってわけでもないと最近わかった。
そもそも、レベルの表記はあるけどSTRとかVITとか、所謂パラメーターというのが存在してない。
だから、レベルさえ上げれば巨岩を殴り壊せるとか、剣で切られても無傷とかそんなことは起きないのだ。
まあできる人も中にはいるのだが……
じゃあなんだこれというと、あくまでその人が今までどれだけの生物を殺めて来たのかの指標、というイメージっぽい。
つまり戦闘経験の数値なのだ。よりたくさん戦闘をこなしてきた人はより高いレベルを持ってる。
そして、レベルの高い人ほど様々なスキルを持ってることが多い。
魔法と違ってスキルというのはこの世界に組み込まれたシステムの1つらしく、色々な人が色々なスキルを持ってる。
ただ、スキルシステムもそう単純ではないようなのだ。
例えば『料理』というスキルがある。
これはより高いほうが美味しい料理を作れるという至って単純なスキルなのだが、当然料理人なんかはレベルが高い。
ただ、ないからといって美味しい料理が作れないかというとそういうわけでもないのだ。
あくまで、『本人の技能』+『スキル』という感じ。それもほんのちょっと補正が入っている程度。
これに該当するのが『剣術』や『体術』などのスキルだが、まあ基本的にそれを扱える人はレベルが高くなる。
だがスキルの中には【鑑定】などもあり、こういったものは正直まだ良くわかってない。
俺でいうと【能力付与】や【道具創造】も同じように分類できると思うのだが……
任意で発動できるアクティブスキルと常に効果のあるパッシブスキルの差とかだろうか……
特にその中でも魔法はヤバい。
魔法とは? 想像を現実に変える力だ。空気中にはマナと呼ばれる無色透明無味無臭そして無害な物質があちこちに漂っている。
場所によって多少濃淡の差はあるが、概ね何処にでもあるこの世界では一般的な物質である。
そして、生物の中にもマナは流れており、魔法を使う想像をすると、この体内のマナが指向性を持って必要な場所に集まる。
そして、体内からマナが放出されたとき空気中にあるマナも変質、想像を具現化するという流れだと最近わかった。
つまり、空気中のマナを使用して魔法を発動できるが、空気中のマナを魔法として具現化するにはその命令を行う体内のマナが必要なのだ。
だから魔法を使ったときは魔力が減るというわけだ。
人、特に人間種は魔力量が人によって大きく変わる。
メリアや俺のように万を超える場合もあれば、カナデのように千程度のこともあるのだ。
種族によっては多くの魔力を保有していることが多い種族もいる。
ただ、獣人種は多くの場合魔法があまり得意ではなく直接の殴り合いや切り合いなど、物理的な攻撃を好む傾向にあるようだった。これは本で読んだ。
魔法は想像力と、マナの操作力が重要となる。
同じような魔法でも注ぎ込む魔力によって威力は大きく変わるし、慣れていれば反射的に撃ち出すこともできるだろう。
そして、カナデの【殺神閃斬】やルナの【双剣衝突発】は俺の考察では魔法の亜種だと思う。
ただ、魔法と違って鑑定したときスキルの欄に並ぶようになっていたためただの魔法とはまた違うらしい……魔力を使うのだが特にカナデは魔法が苦手なんだよな……まだ良くわかっていない。
仮に必殺技系スキルとしてまた別に設定されているのだろうか……
さて、それを踏まえた上で強さとは何か?
「何故強いのか、か………私が思うに、強さにこれといった形や正解はないと思うよ。人によっていろんな形で強さはあると思う。
そうだな…私の場合は…」
そう言いながらテントの方を見やる。
その中では僕らに見張りを任せてぐっすり眠るみんながいるだろう。
「みんながいるから、かな。みんなを守りたいしみんなのために負けられないっ! って気持ちがあるからだと思う」
サキュバスと戦っている時、負けるわけにはいかないって気持ちが強かったと思う。
負けたら、みんなを悲しませるから…
「……いい、友達ですわね…」
彼女は何処か自嘲気味に呟いた。
「強さに形は無い…じゃあ…どうすれば…」
「ところで、どうしてそんなことを? 強くなりたい理由でもあるの?」
「………あなたには関係ありませんわ」
純粋に気になるので聞いてみたのだが、その返事は冷たいものだった。
何処か痛々しいと思ったのは気の所為だろうか…。
多分、何かしらはあるんだろうが、言いたくないんだろう。
「努力していれば、強くなれるよ。精神的にも、肉体的にも。
継続は力なり、フィルリアも最近の稽古にも来てるけど、日に日に動きが良くなってる」
「本当ですの?」
「うん、対戦相手の私が保証する」
実際、最初の頃とは比べ物にならないほどの成長を見せているのがフィルリアだ。
例えば体育の走り込みだって下位集団に追いつく程度には走れるようになっているし、稽古も1年近くやっているメリアほどではないにしろ、サイコキネシスで動かしている銃の迎撃はできるようになってきていた。
「でも……」
「?」
「まだ、足りませんわ……」
最後の言葉は、あまりに小さく呟いていたためよく聞こえなかった。
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「おーい、交代だよー」
「あ、カナデにメル……もうそんな時間か」
「フィルリア殿下、交代の時間ですのであとはごゆっくりおやすみください。
何人たりともここには近づけません」
「え、えぇ…」
キリッと佇まいを整えそう告げるメルに対し、フィルリアは何処か乾いた返事だった。
「それじゃ、おやすみ」
「うん、二人共おやすみ」
そうして、レイはメリアやルナを起こさないよう細心の注意を払いつつ、静かに床に就く。
フィルリアもそれに倣い静かに寝息を立て始めていた。
その一方、テントの外では……
「ふっ! しっ!」
「こんな時間から素振りか…?」
「あぁ、こうしてる方が起きてられるし、程よく体も温まるんだ」
「そうか…」
カナデは愛剣を使って素振り、それをメルが眺めていた。
夜も更け、カナデの剣を振る音と息遣い、焚き火の音以外にはほとんど何も聞こえない、静かな森の中だ。
「グルルルル……」
「キキッ! キキッ!」
否、それは数秒前までのことであり、突如としてあちこちから獣の鳴き声が響き渡り、野生動物たちが一目散に逃げ始める。
「……囲まれてるな」
「そうみたいだね……」
「殿下達を起こす「いや待て」」
その数に一度起こしたほうがいいと提案するメルティーナだったが、カナデによって止められる。
「何故だ! この状況なら当然皆で逃げるなり体制を整えるなりするものだろう」
「ふぁああ……まだ寝たばっかりなのに…」
「その必要はないよ」
「ん・・・もう起きた」
メルが声のする方を見れば先程寝たばかりのはずのレイも含め、メリア、ルナの3人がテントから出てきたところだった。
「ま、フィルリアはまだ寝てるけど…わたし達がいれば十分でしょ。寝かせておこうよ」
「大丈夫なのか? 本当に。たしかに、君たちの実力は聞き及んでいるが、それでも同年代にしてはという評判で、中堅のハンター程度の実力のはずだが」
「君は王女殿下の睡眠時間すら守れないような実力なのかい?」
「………わかった、一先ず君たちを信じる。私はテントの周囲でいいか?
無理だと判断したら君たちを置いてでも殿下を救助する」
「ああ、それで構わない。それじゃあ行くぞ!!!」
みんなそれぞれの返事を返し、武器を構える。
視線の先にはゴブリン、フォレストウルフ、クローベア、よく見ると上位種のホブゴブリンやラッシュファングボアもいる。
みな敵意をこちらに見せていた。
「複数種が一様に敵意を持って見てる?」
「魔物の活発化だけじゃなさそうだな」
メリアの呟きにメルが返す。
通常、ここまで複数の種類に襲われることは滅多にない。
つまり、異常事態だった……
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