第33話 We are friends
やっぱり久々の更新。
動画編集やらリアルが忙しいやらゲーム楽しいやらが理由です。
EDF!EDF!
4.1の動画編集もしなきゃな…
『ルナさんなら、私が殺しました』
俺の大事な仲間を殺したと堂々と発言するのは、綺麗な銀髪の髪を肩の下くらいまで伸ばしている、最初に見たときよりは気持ち程度にマシになったが、未だ乱れた状態の、動きやすそうなゴシック調の服を着た、特徴的な紅い瞳をもつ少女だった。
「………」
突然の発言にレイは言葉が見つからないといった様子で立ちすくむ。
『………邪魔だったお父さんを倒してくれてどうもありがとうございます。これで堂々とこのあたり一帯の村……いえ、村だけでなく近隣の街、そしてそのうち世界を、私の手中に収めることができるでしょう。
レイさん、あなたのおかげですよ。
あなたがあのお父さんを倒してくれたから、私の野望が実現するんです。』
黒いオーラを纏わせながら、そう淡々と語るエル。
『さあ、レイ。どうします? ここで私と戦い私を止めるか、そうですね…あなたにはお父さんを倒してくれた恩がありますからね…逃げるというのであれば手出ししないであげましょう』
黒いオーラをより一層強く放ちながら、言葉を続ける。
『さあ、今なら逃げ切れますよ。私はあなたを逃してあげるつもりです。』
そんなエルにレイは一歩近づく。
『どうするつもりです? 逃げないのですか?』
彼女の言葉を無視しエルにまた一歩近づいていく。
『私と戦うつもりですか!? 止めるつもりなんですか!? 逃げないと言うのであれば…』
語気を強くしレイに強く投げかける。
それでもレイはエルに近づく。
『逃げないならば仕方ありませんね!』
そう言いながら手をかざし、オーラを手に纏わせる。
そんなものは見えていないというようにレイはエルに近づく。
『逃げるのであれば! 私はあなたを追わなかった! この攻撃であなたをも倒し! 私は私の野望を果たす!』
そんな言葉もまるで聞こえてないようにレイは歩み寄る。
そのうち、レイは手を伸ばせば触れられる位置まで歩み寄った。
『………』
「………」
この状況に似つかわしくない、静寂があたりを包んでいた。
片や黒いオーラを纏い、攻撃すると宣言し。
片や静かにただそこに堂々と立っている。
『……何をする気なんです。
どうして逃げないんですか!
どうして…どうして逃げてくれないんですか!』
そう激高するエルに、レイはただ一言。
「やっぱり」
そう呟いた。
『え…』
「やっぱり、エルさん。あなたは野望なんて考えてない。
本当に考えてるなら、それで私を攻撃すればいい。
今なら当たりますよ、私は逃げも隠れもしていない。
でも、あなたは私を殺せない」
『………ッ!』
静かに、しかしはっきりと確信を持って自分は殺されないと宣言するレイに対し、エルは静かにそのオーラを霧散させた。
「ほら、やっぱり殺せない。
ルナも死んでないですよね。
私を殺せないのにルナだけ殺すっていうのはチグハグですから」
『………』
静かながらも確信を持った発言に、エルは肯定も否定もしない。
『どうして…どうしてわかったんですか…私が、あなたを殺す気は無いと』
「わかりますよ。オーラで隠したつもりですか? その顔を」
『えっ…』
そう、エルは泣いていた。
それがオーラ越しでもわかったから、逃げる気になれなかった。
それに、俺はこの家の秘密について心当たりがついている。
「エルさん。あなたは…あなた達家族は吸血鬼の血筋だ。
お母さんは人間だったみたいですけどね。
でも、吸血鬼のお父さんには生きるために血が必要だった。
あなた達兄弟は人間とのハーフだから血以外からでもエネルギーを摂取できるが、お父さんは血じゃなければ駄目だった。
だから村と協力関係を結んでいたんだ。
村からは毎日少量の血を、お父さんはその見返りに周囲の魔獣の駆除をしていたんだ。」
この家が村を必要としていた理由がこれだ。
しかし、村は流行り病のせいで潰れ、人間だったお母さんも倒れてしまった。
「そして、協力関係を結んだ村が潰れてしまったことで血を摂取できなくなったことで、お父さんは暴走してしまった。
暴走したお父さんは周囲の村を意味もなく襲い、潰してしまった」
これが、この家の秘密と悲劇の顛末だ。
『そう…お父さんはまだなんとか正気を保っている時に、私をあの檻へ閉じ込めました。
あの檻は銀製、銀製なら吸血鬼であるお父さんは中にいる私を襲えないから。
兄さんは銀製のナイフを受け取っていました』
「エルさん、あなたが気に病む必要も、責任を感じる必要も無いですよ」
『それでも私は! 吸血鬼の血筋なんです! いつ私だって正気を失うかわからないのに…』
「だから死のうとした?」
『…ッ!』
図星。
エルは悔しそうに顔を俯かせる。
「死ぬ必要は無いですよ。
私達と一緒に来ませんか?
血が必要になれば分けてあげます。
それならあなたが危惧する暴走はしないですよね。
まあ、ハーフであるあなたなら血を必要としないので暴走の危険は無いんですけどね。」
『それでも!』
「だから! 大丈夫ですって!」
でもと涙を流しながら叫ぶエルに強く言い聞かせるように叫ぶ。
「私が、私達が付いてますから」
『どうして…どうしてそこまで』
「友達だから…じゃあ駄目ですかね?」
『えっ……』
驚いたように顔をあげるエルを、俺は正面から見つめる。
「少なくとも、私はあなたと今日を過ごして、友達だと、そう思っていますよ」
『私は…私は吸血鬼です』
「知っています」
『いつか暴走するかもしれない』
「そんなことはない」
『人をたくさん殺した吸血鬼の娘です』
「それがどうかしましたか」
『私は…私は…』
「エルさん。」
悪あがきのように言葉を探すエルに、レイはもう一度名前を呼ぶ。
「エルさんはエルさんでしょ。
吸血鬼だから?
暴走するかも?
吸血鬼の娘?
それがどうかしましたか?
私は、そんなこと気にしないですよ。
友達なんですから」
そこで、エルさんは限界だった。
大粒の涙を流し、レイの胸へと顔を埋めながら泣いた。
でもその涙は悲しみからくるものではなかっただろう。
それまで一人背負っていたものを下ろし、ただ一人の少女として、友達だと言ってもらえて嬉しかったから泣いたのだろう。
その顔は泣き顔ではあったが、確かな温かみに包まれた笑顔でもあった。
ひとしきり泣いたあと、エルは一言
『ありがとう』
と、ただありがとうと年相応の少女のように笑って言っていたという。




