第9話 事後処理
「何が・・・」
娘の身代金を支払うために森のなかにある廃墟の倉庫に来た。
だが来てみるとそこにあったのは倉庫ではなくただの瓦礫だったのだ。
先程このあたりから大きな爆発があった。
大規模な魔法か何かだろうが・・・嫌な予感とは当たるものだ。
娘もいたはずの建物が無残に破壊されているところをみるともう・・・
「・・アちゃん!・・・リアちゃん!」
「この声は・・・」
その瓦礫の裏手、その木陰に誰かいるようだ・・・
「メリアちゃん!メリアちゃんしっかりして!」
「レイ?」
「あ!クーゲルさん!」
そこには最近屋敷で面倒を見ている少女、レイと、虚ろな目をした娘、メリアがいた。
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あのあと、爆発する倉庫から逃げ延び、メリアちゃんに回復魔法を施したが、メリアちゃんにいくら話しかけても返事をしてくれない。
相変わらず目が虚ろなままだ。
「クーゲルさん!メリアちゃんの様子がおかしくて・・・治療はしたんですけど・・・」
「見てみよう」
そう言ってクーゲルさんが鑑定魔法を使ってメリアちゃんを診る。
「うむ、体に異常は無い。魔力が足りなくて意識が朦朧としているだけのようだから、寝かしておけばそのうち元気になるよ」
「よかった・・・」
「ところで、これは君が?」
そう言って瓦礫の山を指差すクーゲルさん。
「あ、はい。自分の出せる武器を使って・・・壊してはいけなかったですか?」
「あ、いや。
その心配は必要ない。
もともと使っていない、取り壊しが予定されていたものだから」
「よかった・・・あ、まだアイツらがどうなったか確認できてないからちょっと見てきます」
「あ、ああ。わかった」
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「まあ、この瓦礫に潰されたら普通死ぬと思うけど・・・」
ん?なんか這い出してきてる?
生きてやがった・・・
「あ!お前!」
「お前らタフだねぇ・・・」
「ぜってぇ殺すからな!」
見たところ下っ端のやつが運良く軽傷で済んだみたい。
近くに気を失って倒れてるあの一番強そうなやついるし。
てか、腰から下を瓦礫に挟まれて動けないのによくそんなに強気でいられるねキミ。
「せい☆」
首の後ろ側を思いっきり叩いてみる。
アニメとかだと気絶させられるんだけど・・・
「やっぱりダメか・・・」
「クッ・・・コイツ・・・」
知っていたことだが現実でそれをやっても相手の首を傷めさせるだけだ。
「これでいいか・・・」
「お前・・・何を・・って!ちょっ!まっt!」
ゴン!
「・・・ちょっとやりすぎたかな?」
レイはPGMへカートⅡを呼び出しそのグリップ側を相手の頭へ思いっきり振り下ろした。
一般的な人よりも力が強い獣人族が、へカート(約14kg)を思いっきり振り下ろしたのだ!
「ま、いいや。
縛っておこう」
どうせコイツ等は犯罪者だ。
命あるだけありがたく思ってもらおう。
「あ、縄持ってなかった・・・」
「レイ様、大丈夫ですかな?」
「あ、トマスさん!」
「ふむ・・・生きてはいるようですので私が縛っておきましょう」
「あ!ありがとうございます!」
あれ?そういえば・・・
「トマスさんはいつからここに?」
「街を捜索してましたが、森の方で大きな爆発が見えましたので、来てみたら旦那様を見つけ、レイ様の手伝いをして来るように申されましたので。
ついたのはつい先ほどです」
「クルーガーさんは・・・」
「彼も今向かってるところでしょうか?」
「俺がどうしたって?」
「噂をすればなんとやら・・・」
そんな話しているとちょうどクルーガーさんも到着したようだ。
「にしてもこれは・・・レイ様がこれを?」
「あぁ、そうです」
「廃墟とはいえ建物1つを瓦礫に変えるとは・・・君の武器はそんなに威力があるのかい?」
「あはは・・・使い方次第ですかね・・・」
そう話しているうちにトマスさんが全員を縛り終えていたのでクーゲルさんのところへ戻る。
「メリアちゃんはどうですか?」
「今は眠ってるよ。
次に目を覚ましたときには心配しなくても元気になってるさ」
「そうですか・・・」
「それよりも、君は今日ハンターギルドに行く予定だっただろう?
この誘拐犯たちを捕まえた報酬も受け取りに行かないといけないし、これからどうだろう?」
「い、いいんですか?」
「当然だろう?」
「ありがとうございます・・・でも、せっかくメリアちゃんが一緒に登録しようって言ってくれたので、メリアちゃんと登録したいと思います」
「そうか・・・ありがとう」
そうして、誘拐犯たちを引き渡すために一行は自警団へ向かっていくのだった・・・