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イリナ帰還す

王宮を出たイリナは待たせていた馬車へ向かう。本来であれば遅くまでここにいる予定であったイリナに御者は驚くが、馬車のドアを開けた。


「トーマスまっすぐ家まで帰ってくださる?」

「かしこまりました」


御者のトーマスが首肯すると、馬の嘶きが聞こえ馬車が走りはじめる。

王宮からガートルード家まではおよそ20分の距離だ。


イリナは馬車にかかるカーテンの隙間から街を眺めた。

通りすぎていく夜の街中にはお酒をのみ楽しそうな人で賑わう。今日の疲れを癒すため、友人と語らうため、恋人と過ごすため。この街にはたくさんの人がいて、たくさんの人生がここから見える。

いつもならそんな街をみて楽しむが今は余裕もなく、重石をのせられたように心が重い。

イリナは、街中の景色から目をそらすと早く家につくよう祈りながら目蓋を閉じた。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



馬車が止まる振動で目を開いた。いつのまにか寝てしまったようだ。

御者が、ドアを開けたので馬車を降り屋敷のドアが開くと侍女のナタリアが待っているのがみえた。


「お帰りなさいませ、お嬢様。王宮でなにかございましたか?」


ナタリアは幼いときから一緒に育ったイリナの侍女であった。いつもは明るい彼女だが、イリナの覇気のない様子に疑問をいだく。


「ただいま、ナタリア。お父様はどちらに?」

「………旦那様でしたら今は書斎の方にいらっしゃいます。」


それを聞いてイリナは、書斎に向かう。

ナタリアは、その後ろ姿を見送るとこれは何かあったなと確信した。イリナとガートルード公爵とは仲が良い親子だが理由もなく仕事中の書斎にいくことなどほとんどないからだ。


(部屋に戻られたらすぐにのめるようお茶の準備をしておこう)


ナタリアは、そう決めると厨房へと急いだ。

一方、イリナは二階の階段を進んで一番奥の部屋が書斎となっている。そのドアを控えめにノックし、入室の許可を待った。


「入りなさい」

ドアを開け部屋の中へと体を滑り込ませた。中にはイリナと同じ髪の色をした男性が、椅子に腰かけて待っていた。

その机に置いてある宿り木には、伝書鳩が一羽とまっている。鳩には王家の紋章の首輪がされておりどこからやって来たのかを主張していた。


「今しがたマリア王妃から連絡が来たよ。彼女も諦めが悪い」


ガートルード公爵家の当主アルマンは、読んでいた手紙から目をあげるとそばに控えていた執事に目配せする。それだけで主人のいうことがわかったのだろう。アルマンの机の前に椅子を置くと部屋から出ていった。

イリナは、その椅子に腰かけ父と対面する。


「さて、君からの話も聞かせてもらおうか」


にこりと笑ったアルマンは、いたずらをする子供のように目を輝かせていた。

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