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氷の記憶
どうして
困惑に揺れる瞳が、目の前の男をみた。
どうして
自分を守って死んでしまった彼女を抱き締める。
もう彼女の赤い瞳が僕をみることはない。
穏やかな春に咲く花のような笑顔も見られない。
どうして
もう、動けない。
心が凍りそうだ。
事実、その男の体は徐々に凍り始めている。
再度動かそうとした口にも霜がはりついて動かない。
急速に身体中の体温が奪われ、機能を停止していく。
凍りはじめた体には不似合いな鼓動がはっきりと聞こえる。
あぁ、神さま。どうして