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5話 その争いに価値なんてありません

 一日一万回、感謝の素振り。

 当初は一回につき六秒ほどかかり、全てを終えるのに十八時間を有した。

 ひたすら繰り返していくうちに動作は速度を増し、しまいには一万回を一時間でこなせるまでになる。

 ある日剣を振ると、ビュッという風を切る音が遅れて聞こえた。音速を超えたのだ。

 音を置き去りにした……!


 リュウガは得意げに弟子へと語ったが、無論嘘である。

 音速を超えた剣戟などできた試しはない。本気を出せばもしかしたら或いは?くらいのものだ。

 特に話したことに意味はない。強いて言えばすっごい父親というイメージを息子に持たせたかった。結局すぐにジト目を向けられたのだが。

 とにかく、リュウガは生まれて初めて弟子をとった。その弟子に尊敬されたいと思うなど普通ではなかろうか。

 件の弟子は師匠のリュウガに対して呼び捨てで呼んでくるのだが。きっとそのうち様とか付けてくれるはずだ。そうに違いない。

 そもそもシャルナに対しては先生をつけているのにも関わらず、何故自分だけ呼び捨てにされなきゃいけないのか。まったくもって解せぬ。

 先生と呼ばれたときのシャルナのはしゃぎ方が今も目に浮かぶ。すごく笑顔で自慢されたのだ。

 別に羨ましいわけじゃないですしー。嫉妬なんかしてませんしー。ちょっとシャルナに懐いてるからって凹んでなんかいませんしー。

 はぁ。

 いや、教えていくうちにきっと尊敬されていくはずだ。師匠は伝承してなんぼなのだ。

 なにも教えずして尊敬されようということ自体間違っている。今はまだ尊敬なんていらない。

 まずは手取り足取り教えてやろう。


「とりあえず、何から教えればいいんだ?」

「……」


 痛い。弟子からの視線が痛い。

 まずいぞ。考えろ。剣術に大事なのってなんだ?

 素振り、いやなんか違う気がする。型、多分まだ剣についての理解が追いつかない。

 まだ剣を持たせるには早いのでは?

 そうだ、そうに違いない。基礎体力から作らずして何を指導するというのか。


「えーっと、まずは体力づくりだ!これから一ヶ月間、毎日走って筋トレしよう」

「え?剣は?」

「体力なくして剣は握れん。握らせん!」

「そうですか。じゃあ、がんばります」


 渋々といった感じではあったが納得してくれたらしい。

 ノルマは課してはいないが、あの無駄に努力家の弟子ならきっと自分を追い詰めるはずだ。

 さっそく村の周りを走ってるみたいだな。

 ん?なんかやたら速くないか?

 ちょっと待って、え?速度おかしいって。絶対おかしいって。

 どうなってやがる。そんなにでかい村じゃないし外周走ったら一周三分くらいしかかかんないだろうけど、さすがに一分はおかしくないですか?


「ちょっと待て。お前速すぎだろ!」

「そうですか?ちょっと神力こめて走ってるだけなんですが」

「ん?今なんつった?」

「神力こめて走ってるって」


 肝心なことを忘れていたようだ。弟子は神子なのだ。

 つまり、神力の絶対値が他と一線を画している。

 その余りある神力を惜し気もなく用いて走っていると言うのだ。はっきり言ってせこい。

 それに神力を使ったら基礎体力などとは無縁だ。神力操作ならシャルナから学べばいいだろうに。


「……あのなぁ、神力使ったら体力が向上するわけないだろ?確かにお前は神子で、神力容量も俺よりだいぶ多いかもしれないが、体力づくりに神力は使うな。そうすればもっと強くなる」

「長所をけせってことですか?」

「いや、そういうわけじゃない。身体を動かすときに神力に頼りすぎていたら、日々の生活でも神力を消費することになるし、肝心なときに神力が足りなくなるときもありえる。だから極力神力は使うな。今は基礎だからなおのことダメだ」

「……わかりました。使わないでおきます」


 渋々といった感じではあったが納得してくれたらしい。

 さすがに神力を使わなければ、神子であろうと普通の速度らしい。

 俺の方が速いな。

 別に子供に対してムキになってるわけじゃないぞ?俺の方が速いなんて当然のことだ。

 ざっと20分くらい走り続けてるが、さすがにペースが落ちてきたな。


「おーい。そろそろ終わっていいぞー」

「はい。わかり、ました」

「シャルナとの特訓?で走ったことってあったか?」

「いえ、一回も、ないです」

「そっか、よく頑張ったな。とりあえず休憩だな。終わったら筋トレだぞ」


 ちょっと嫌そうな顔が一瞬見えたような気がしなくもないが、素直に頷いてくれたしきっと気のせいだろう。

 我が弟子ながら従順でいい子だな。普段はなめられてるような気がするが、今は師匠なのだからそんなことはありえない。

 見ろ、あの眼差しを。向いてる先は、ミドラの方か?

 全然視線がこっちに向いてないな。まるで興味持たれてないなこれ。まぁなにもしてないから当然か。

 特にミドラの方に何かがあるわけではないのだが、一体なにを見てるんだ?

 今はまだ疲れてそうだし、話しかけるのも悪いか。


「リュウガ、私の弟子の様子はどう?ちゃんとやってる?」


 不意に聞こえた声、それは俺が愛してやまない声。とか言ったらシャルナにいじられそうだから絶対言わないが。

 癒されるな。疲れてるわけではないが。

 というか待てよ?聞き捨てならないこと言わなかったか?


「あぁ、俺の弟子は偉いよ。しっかり言ったことをこなしてくれるし」


 シャルナさんの頬がひくついたように見えるのは気のせいですよね?

 張り付いた笑顔が恐いのですけれど!


「さすが私の弟子ね。褒めてあげなくっちゃ『穿て』」


 眼前をすれすれで通り抜けていく鋭利な石。

 たかだか石とはいえ、神力で加速され飛んでいくその様は弾丸。当たれば普通の人ならば間違いなく致命傷だ。

 それをこの女は、なんの躊躇いもなく放ってきた。そこにあるのは絶対の自信。

 神力制御を見誤ることがないという確信から放たれた一撃だった。

 すでに何度もやられてきているのだ。今更その程度で取り乱すことはない。

 絶対に当たることがないという確信を持って、何一つ表情を変えることなくシャルナを引き止める。


「いやいいよ。褒めるのは師匠である俺がしとくよ。シャルナは俺の弟子に追いつかれないように鍛錬でもしたらどうだ?」


 笑顔でこっちを見つめてくるシャルナさん。なにこの子怖い!子じゃないけど。


「そうね、私の弟子は神子だからね。でも、鍛錬って言ってもなにしようかしら?ねぇリュウガ、付き合ってくれる?」


 なるほど、わかりやすい。つまりはそういうことだ。

 勝った方が師匠ということなのだろう。


「おう。鍛錬は大事だからな」


 誘いに乗った途端になんかシャルナさんの笑顔が美しくなったのですが、楽しんでいらっしゃるのでしょうか?

 美しいな、俺の嫁。


「……じゃあ、場所を移すか」

「わかったわ。リュウガとやるのも久しぶりね。いつ以来だったかしら?」


 上機嫌の理由が分かった気がする。

 シャルナは俺とやりたかったんだな。まったく、正直に言ってくれればいいのに。

 そう考えたらちょっと、というかだいぶ気乗りしてきたぞ?

 愛想尽かされることはないとは思うが、一方通行の思いじゃない保証は無かったからな。

 子供ができてからはなおさら。


「最後は……子供ができる前だから、五年くらい前か?確かにだいぶ久しぶりだな」

「え?もっと前じゃなかったっけ?結婚する前だったと思うけど」


 どうにも話が噛み合ってない気がするが、そんな前だっただろうか?

 結婚前にも確かにやったが、結婚した後もすぐやった気がするんだが。


「あれ?そうだったか?……まぁいいか。よし行くぞシャルナ」

「ねぇ待って。どこ行こうとしてるの?」


 服の袖をつまんでくるシャルナ。不満そうな顔を向けられてます。いわゆるジト目です。

 か、可愛い。じゃなくて、


「え?家だけど」

「……なにを勘違いしてるのかわかんないけど、リュウガ、家でどうやって鍛錬しようとしてたの?」

「……よし行くぞシャルナ」


 颯爽とシャルナの手を取って逆方向へと歩き始める。

 シャルナは強引に腕を引かれ不満そうにしながら振り返り、弟子へと声をかけた。


「あ、ちょっと!レオニスもついてきて!」

「?はい。わかりました」


 いまいち話を理解できてない弟子だったが、腕を引かれるシャルナについてきていた。

 村の外へと出て、数分といったところで目的地へと到着する。

 誰かさん達のせいでクレーターがいくつかできているが、当の本人達は気にした様子もなく、陽気に会話していた。


「あの、先生。これからなにするんですか?」

「これからね、私とリュウガが戦うのよ」

「そうなんですか!楽しみです。リュウガなんかやっつけちゃってください!」

「えぇ、任せなさい。レオニスの仇は討つわ!」


 ひどい話だ。おかしくないか?構図がさぁ、二対一なんだよ。

 レオニスのやつ完全にシャルナに懐きやがって。ここで勝って見返してやるよ。

 おい待て、確実に今シャルナさんこっち見て笑ったぞ。馬鹿にしやがって。

 超全力全開の最上最強の一撃で以って一発で終わらせてやるからな。


「シャルナ、ルールを決めよう。さすがに本気でやりあうのは気が引けるしな」

「え?あ、えぇ。そういえばそんなことになってたわね。いいわ、リュウガの好きなので」

「……あぁわかった。じゃあ一発勝負でどうだ?本気の一撃でどっちが押し勝つか」

「別にそれでいいんじゃない?」

「ちょっと待てシャルナ。適当すぎないか?いい加減レオニスと喋るのやめろ!」

「なによ、うるさいなぁ。レオニスがいい子なんだもの。リュウガとは違ってレオニスは可愛いんだもの」


 なんたることか。あのシャルナとかいう女は、自分から勝負をふっかけておいて勝負よりもレオニスを優先していやがる。

 確かにレオニスをかけた勝負だから間違いではないのだが、なんだろうか、俺もう負けてね?

 これ勝負する必要ある?いやない!なんてそんなわけあるか!

 ここで勝負して勝つことでシャルナからレオニスをゲットするんだ。

 目の前で余裕を見してるこの美しい女をしばき倒してやるわ。

 ……なるべく優しく。


「すぐにそんなこと言えなくさせてやるよ。構えろシャルナ!お前の最上最強の技を放ってみやがれ!」

「えぇわかったわ!レオニスは離れてなさい。魔法は想いの力、だから!『………ガ……好…』」


 負けた。勝てるわけがなかった。

 対抗する気すら起きないほどに、完膚なきまでの致命傷をくらった。

 シャルナのこぼしたその言霊は、近くにいないと聞き取ることは不可能なほどに小さく漏れ出た想いだった。されど、どこまでも強い想いだった。

 シャルナの一挙手一投足を見ていた俺は、微かに聞こえた言葉と、口元の動きを元にシャルナの想いを看破した。それ故に、敗北を確信した。

 勝てない。いや勝ちたくなかった。シャルナに刃を向けるのがどうしてもできなかった。

 息子の好意を受けることは叶わないが、シャルナがいればそれでいい気がした。

 レオニスのことはシャルナに任せよう。剣は教えるけど。


「なにやってるの?リュウガ、あなたも早く準備しなさいよ」


 シャルナは少し頬を赤く染め、目を逸らしながら言ってきた。

 そんな仕草一つでも、どんどん戦意が消えていくのがわかった。

 やがて焦れたように、シャルナが逸らした目をもう一度こちらに向けてから、はっきりと想いを告げる。


「……リュウガ、あなたのかっこいいとこ、私に見せてちょうだい?」


 身体の中に電流が走った気がした。

 戦う理由?シャルナにいいとこ見せるためだろ?当たり前だよなぁ!

 なんでそんな当然のことを忘れてたんだ。レオニスにいい格好見せたいがあまりに一番大事なことを忘れてたようだ。

 そうだよ。いい格好見せるのはレオニスだけじゃないんだ。シャルナに自分より強い夫って思ってもらわないとな。

 いいぜ。最上最強の一撃で以ってお前の想いを超えてやるよ。


「悪かったな、待たしちまって。後悔するなよ?本気で行くからな?」


 シャルナが笑顔を見せて頷く。その行動がより俺を強くさせてるんだけどな。

 目の前で魔法を構えてる金髪で、髪と同じ色をした眼をした世界で一番美しい嫁を見てそっと深呼吸。

 ためにため込んだ、されど常に放出されている想いを叫んだ。


『愛してるぜ!!シャルナ!!』


 想いが言霊にのって魔法を形成していく。

 やがて、辺り一帯は赤く染まる。それは全てが魔法とはいえないただの神力の塊。

 言霊に願いを込めなかったが故に、想いという力だけが吹き荒れた結果だった。

 シャルナが放った黄色のそれとリュウガの赤いそれが交わり、拮抗する。

 撒き散らされた暴風にレオニスは吹き飛ばされかけるが、両親の本気を目に焼き付けるべく、神法で以って暴風から身を守る。

 そんな息子の姿すらまるで目に入らない二人は限界まで神力を解放した。

 そもそもの神力容量の差というものがリュウガへと襲いかかり、赤の奔流は勢いを弱めた。

 シャルナはそっと微笑み、己から湧き出る神力をさらに強めた。

 必然、リュウガは押され、一歩ずつ着実に後退していった。

 リュウガの姿を見やり、シャルナは微笑みを崩さずに問いかけた。


「一発勝負だなんて、神力容量で負けてるリュウガが勝てるなんて思えないけど、一体なにを隠してるの?」


 シャルナから放たれた疑問を受けて、リュウガはこれが答えだと言わんばかりに腰から剣を引き抜いた。

 シャルナは剣を抜いたリュウガの姿を見て笑った。嘲笑や憫笑ではないただの微笑だった。


「そうよね。やっぱりリュウガは剣がなくっちゃ」

「あぁ、いくぞシャルナ。神力の総数が違うだけで、俺は想いでは絶対に負けてないからな。相棒と二人で勝たせてもらうぜ」

「ひどいわ。あなたの相棒は私じゃないのね」


 剣を構えて、宣言されたリュウガの言葉を聞いて、シャルナは涙を浮かべるフリをしていた。

 リュウガは一切の動揺を見せず、シャルナに言葉を返しながら愛剣へと自身の神力を送っていた。


「お前は俺のパートナーだ。相棒じゃない」

「全然動揺しないわね。リュウガも成長してるのかしら。でもいいの?そんな悠長にしてる暇ないと思うけど?」


 シャルナの黄色の嵐がさらに勢いを増し、完全にリュウガを飲み込んだ。

 神力の奔流を直接浴びれば相当な傷を負うのだが、シャルナはお構いなしにリュウガへとぶつけた。

 それはただ単に信じているから。


『神剣・ドラグレン』


 吹き荒れる黄金の中から果てしなく輝く赤の奔流が顕現する。

 リュウガは放った。それは全てを切り裂く正真正銘最上最強の一撃だった。

 神剣に込められた神力の圧縮、そしてもう一つの能力。

 それにより、神剣の力を全解放したリュウガの前に無事でいられるものは存在しなかった。

 たった一撃で魔族を七体屠ったことだってあった。それが銀ランクのリュウガの実力だった。

 ただ、相手もまた彼と同じ銀ランクの実力者だった。


「結局一撃勝負じゃないじゃないの。前もそうだった気がするけど」


 シャルナは言いながら自身の神力を重ねた両手に集めていく。

 貴族であるが故の圧倒的なまでの神力量が一点へと凝縮され、黄金の輝きが放たれる。

 迫りくるリュウガの最上最強の一撃を見据えて手の中にある神力を言霊で以って放った。


『顕現せよ!偽神咆哮!!』


 それはまさしく神の咆哮。荒れ狂う神力の波が世界を震撼させる。

 顕現した神が、赤い一撃を迎撃する。

 黄金の波動が神だとしたら、赤い剣筋は竜。

 神と竜が交わったとき、先ほどとは比べ物にならない衝撃が吹き荒れた。レオニスは神法を以ってしても防ぐのが困難なほどに。

 過ぎゆく時間とともに地面が捲れ上がっていく。土塊が吹き飛び、大地が沈んでいく。

 雲は姿を消し、太陽が姿を現す。

 辺りの熱気が上がっているのが先ほど顔を出した星によってもたらされたことではないことは明らかだった。

 燃え盛る竜が世界を焦がし、荒れ狂う神が世界を震わす。

 永遠とも一瞬ともとれる拮抗はやがて崩れ始める。

 輝いたのは黄金の神力。シャルナが押しきった。

 赤の輝きが消える直前、響き渡る一人の声音。


『燃えたぎれ!』


 黄金が消えた。赤い剣閃は黄金の波動を穿ち、その先にいるシャルナをも呑み込んだ。

 完全に決着がついた。


 俺は剣を腰にさして、一瞬のうちにシャルナの元へ向かった。

 地面に倒れ伏す最愛の人を優しく抱き上げ、声をかけた。


「俺の勝ちだな」

「……えぇそうね。最後まで炎舞使わないのはどうか思うけどね」


 確かにそうだな。と頷き、俺はシャルナの背中と足に手を回し持ち上げる。俗に言うお姫様抱っこというやつだ。

 その状態のままレオニスの元へ向かった。

 辺りがやたらめったらガタガタしてて歩きづらかったが、御目当てのレオニスの元へたどり着き、シャルナを下ろしてから笑ってみせた。


「なぁレオニス、残念だったな。俺の勝ちだ」

「女性をいじめるなんてさいてーです」

「え?」

「よく言ったわレオニス。リュウガったらひどいのよ?一発勝負とか言ったくせに負けそうになったらもう一撃だしてきたの」

「ルールまで破るなんてさいてーです」

「……その節は本当に申し訳ありませんでした」


 笑顔はもうなくなっていた。

 そんな俺などお構いなしにシャルナはレオニスと話していた。

 レオニスから見た戦いの凄さや、シャルナの使った技の紹介などなど、たくさんのことを話していた。

 やがて話し終えたとばかりにシャルナは話を振ってきた。


「じゃあそろそろ帰りましょうか。リュウガ疲れたし恥ずかしいからおぶって」

「俺も疲れてるんだけど……」

「あなたのせいでこうなったんだから責任とりなさいよ」

「え?」


 疑問とともにシャルナの方へ目をやると、それはそれは目のやり場に困りました。

 服が……ほぼない!

 かろうじて大事なところは隠せているが、ほぼ半裸も同然である。これはこれは守らなくては。

 実際、神力に呑みこまれたら服だけじゃ済むはずがないのだが、そこはさすがシャルナ。傷は負ってはいても、かなり浅い傷だった。

 とにもかくにも、シャルナの言い分は大いに理解できたので、さっさとシャルナを背負って帰ることにした。

 帰宅途中で、レオニスはシャルナへと問いかけた。


「そういえば、なんで戦ってたんですか?」

「えーっと、確かどっちがレオニスの師匠にふさわしいか決めるためだった気がするわ」


 レオニスは目を見開き、小首を傾げる。あたかもどういうこと?と言ってる感じだ。


「シャルナ先生は先生だから師匠じゃないですよ?」

「え?じゃあ俺は?」


 今の聞いたか?シャルナは師匠じゃないってよ。

 戦った意味が全くと言っていいほどなくなってしまったとはいえ、どちらにせよ勝っているのは俺だったのだ。

 すでに権利は勝ち取っていると言っても過言ではないだろう。

 あとは答えを弟子の口から聞くだけだ。


「?リュウガはただのリュウガですよ?」

「え?でも、剣術教えてるんだけど……」

「まだ教えられてませんけど」


 全面降伏です。戦った意味がまるでないです。いやまぁ、シャルナと久しぶりに戦えて楽しかったですけど。

 というかなんだ?ただのリュウガってなんだよ!オセロだったら全部ハテナマークになるぞ。

 これからだな。やっぱり尊敬に必要なのは実績だ。

 日々の積み重ねでレオニスを納得させなければ!

 そうと決まれば特訓あるのみだ。まずはご助力を願おう。


「なぁシャルナ。教えるってどうすればいいんだ?」


 弟子に聞こえないように後ろにいる嫁へとそっと問いかける。


「動き方とか感覚とか適当に教えてればレオニスならわかってくれるわ」

「なるほどな。やってみなきゃわかんないか」

「信じてないの?レオニスは優秀よ。本当にね」


 レオニスの優秀さがわかっていないわけじゃない。確かにすごい。というか凄すぎると言っていい。

 あの小ささで上級を使うのなんて普通に考えれば不可能だ。

 だから必然的に教えた側も優秀ということになるのだが。そんな参考にはならないっぽいな。

 少しだけ思案していると件のレオニスから声をかけられた。


「そういえばリュウガ。一つお願いをしていいですか?」

「ん?なんだ?」

「僕に剣をください」


「リュウガの創った」


 倒置法ェ……

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