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3話 先生ができました

 あ……ありのまま、今起こったことを話すぜ!俺は地面に立っていたと思ったら、いつの間にか倒れていた。何を言っているのかわからねーと思うが、俺も何をされたのかわからなかった。


 レオニスはシャルナの魔法をくらった。ほんの一握りの泥がレオニスへと襲いかかり、あまりの速度に避けることもできず、レオニスは倒れた。

 魔法には階級があり、初級、中級、上級の三つがある。

 先程シャルナが放ったのは初級魔法。少ない神力を言霊に込めることで、使用することが出来る。

 言霊は基本的にはなんでもいいのだが、己の望みを口に出したり、ゼルドラの定めた語句を言うと、威力が上がったり、神力の消費量が減る。

 土の初級魔法でゼルドラの定めた語句は『泥弾』である。初級故に、言霊は少なくて済むらしい。


「あ、ごめんなさいレオニス。大丈夫?怪我はない?」

「はい。だいじょぶです」


 レオニスはさっと起き上がる。先ほどまで倒れていたのが嘘のように飛び起きる。

 レオニスは感動していた。たかだか初級でこの威力だというのだ。中級や上級となれば一体どのくらいすごいのか、想像するだけでワクワクが止まらない。

 そして、なにより、自分自身が今の技を使うことが出来るのが、レオニスの興奮に拍車をかけた。


「やりかたをおしえてください。シャルナせんせい!」

「先生って。まぁいいわ。レオニスの場合は神法だから、わざわざ言霊を使う必要すらないわ。こう、泥の弾丸を出したい!って思ってみて」


 レオニスはうなずき、神力を意識しながら願ってみた。

 すると数瞬後、手の方が少しだけ熱くなり、小さな泥の塊が出来た。

 えいっ!という小さな掛け声とともに、手を振ってみると、泥の塊が飛んでいった。

 庭にある小さな木に当たり、泥の塊は弾けとんだ。


「流石レオニスよ。まさか一回で出来るなんて」

「シャルナせんせいのおしえかたがうまかったからです」

「ありがとう。でもレオニスはすごいわ。本当にね」


 初級魔法(神法バージョン)を覚え、その日の特訓は終わった。シャルナ先生がいなくなったあとも、レオニスは一人で神法を使い、少しだけ庭の木が傷ついたのは、シャルナには秘密です。


 一週間ほど、初級魔法の練習をし、特訓は第二段階へと移行する。


『大地よ、私に力を貸して!』


 シャルナが唱えたのは願い。願いに神力が乗り、魔法として、世界に顕現する。

 一言で言えば、それは土砂崩れ。どこからともなく岩石が出現し、落ちてくる。

 アルラトス家の庭は岩石で埋め尽くされた。

 中級魔法『落石』ゼルドラの定めた語句を唱えるだけでは発動することは不可能で、己の願いなどを込めなければ発動することすらできない。神力の消費は激しく、連発できるようなものではない。中級魔法においての最強魔法だった。

 中級魔法は他にもたくさんある。少量の岩石を飛ばしたり、石で壁を作ったりと、色々なものがあったが、シャルナが最初に見せたのは『落石』だった。


 レオニスは驚愕した。埋もれながら。

 ちょっとちょっと先生!なんで自分まで巻き込むんですか?おかしくないですか?

 必死に叫ぼうとするが、埋もれているため、声など出せるわけがなかった。

 パチンっという子気味いい音が、レオニスの耳に届いた瞬間、レオニスは解放された。

 込められた神力が少なく、言霊が揺らいでいたところに、新たなる振動を加えることによって言霊を消滅させたのだった。

 シャルナは慌ててレオニスの元へかけよった。


「大丈夫?怪我はない?」

「あのシャルナせんせい。けがはないです。少し身体が熱いくらいです。けどなんでわざわざあてるんですか?」

「んー、えっとね。身体に傷を負うと、神力で回復できるの。回復って言ってもすぐに動けるようになるわけじゃないけど、長い間安静にしておけば大丈夫なの。と言っても、神力を操作して回復させるから、扱いがうまければすぐ回復できるのよ。きっとレオニスは無意識のうちに、回復してるのよ。それを確認したかったの」

「そうだったんですね。ありがとうございました」

「その、ごめんなさいね。先に言っておけばよかったのに」

「いえ、だいじょぶです」

「そう、ありがとうレオニス。それじゃあ、やってみましょうか。ここ一週間でかなり神力の扱いも上手くなったはずだし、レオニスならできるわ」


 レオニスは思い描く。それは、先程見た光景。どこからともなく現れる岩石。そして埋もれた感覚。

 レオニスは願う。そして、それは顕現する。

 レオニスは埋もれた。岩石が身体に当たり、シャルナにやられた時よりも強い衝撃をくらい、倒れた。

 倒れたあとも、岩石は落ちてきて、確実にレオニスの体力を削っていく。

 導き出される一つの、ただ一つの解。自爆☆

 レオニスの意識は薄れていく。


「え?え?ちょっとレオニス?ねぇちょっと?」


 シャルナの声が聞こえてくるが、声を上げることはできず、助けを求めることすらできなかった。

 レオニスは思う。これやばくない?あっれれーおっかしーぞー?


『……お願い。レオニスを助けて!』


 レオニスは薄れていく意識の中、身体が熱くなるのを感じた。

 明らかに、自身の中の神力が増えていっている。そして埋め尽くされる疑問?

 そして気付く。熱いのは決してレオニスだけじゃない。今全身で感じている熱さは、大地から放たれているものだった。

 熱が入ってくる。地面から熱さが伝わってくる。その熱さは、つい先程感じたものと酷似していた。

 レオニスは意識が一瞬にして覚醒した。岩石が当たったことによる傷や痛みは綺麗さっぱり消えている。周りの岩石も消えている。

 駆け寄ってくるシャルナに少しだけ安堵を覚えつつ、今起こったことを振り返る。

 感じた熱さ。それは間違いなく、神力のもの。神法を使うときや、回復のときにも感じた熱さだった。

 その、神力の熱が大地から伝わってきて、自身の傷を癒した。

 結論は出ている。しかし、理解できないこともある。

 何故伝わってきたのか?そして、神力を操作していないのに、何故回復したのか?

 今考えたところで、どうにもならない気しかしないから、後々考えるとして、とりあえず今は無事を喜ぼう。

 大地の神力、すごく熱かったな。


「大丈夫?しっかり神力調整しないと威力も凄くなるから気をつけなきゃだめよ。まぁ、無事でよかった」

「つぎからは、きをつけます!」

「えぇ、頑張って。でも無茶はしないでよ?」

「はい。むちゃはしません」


 疑問はあるが、何が起きたのかは理解できている。だからする。そこに躊躇いは必要ない。

 レオニスは地面にそっと手を当てた。微かに、温かみを感じる。

 レオニスは神力を操作する。自身の手に意識を集中させ、下にある温もりを確実に我がものにしていく。

 身体が少し、ほんの少しだけ温かみを帯びていく。そして理解する。

 神力を大地から吸った。大地の神力を我がものにした。

 量は本当に僅かだが、自身の意思で大地から奪うことに成功した。

 シャルナはレオニスが突然とった行動が理解できず、声をかけた。


「えぇっと、何してるの?」


 シャルナの疑問に対し、レオニスは自身の疑問を返す。本当の意味で確信に近づくためには、頭の良い人に頼るのが一番なのだ。うちの先生は美人で博識ですよ。


「せんせい。じめんにしんりょくってありますか?」

「?えぇもちろんよ。地面には神様がいるからね」


 さすが先生です。なんでも知っていらっしゃる。確かに、自分もそうじゃないかなー?とか思ってましたけど、先生の言葉を聞かずして納得なんてできませんよ。

 とはいえ、大地に宿っているのが神様だとして、神様から神力を吸ったということになる。これはもしや強いのでは?


「じめんのしんりょくと、くうきちゅうのしんりょくってなにかちがうんですか?」

「さぁ?そこまでは知らないけど。多分一緒なんじゃない?」


 強くありませんでした。凡人のレオニスさんです。超レオニスゴッドは遠いのでしょうか?


「しんりょくのようりょう?っていうのはひとごとにちがうんですか?」

「それは間違いないわ。加護の大きさに関わってくるから、レオニスは大きい方よ。でも、まだ成長してないから、10歳くらいになるまでは普通の人と同じくらいよ」


 どうやら他者とはちがう部分もしっかりあるみたいです。なるほど、成長すれば超レオニスゴッドも夢じゃないんですね。

 問題なのは神法の制御だけど、その点については不安はない。さっきは思い浮かべるものをミスっただけだし、たとえ直撃したとしても、すぐに回復できる。

 成長すれば神力容量も上がるし、その前に制御と神力の吸収だけは完璧にしておきたい。

 シャルナと多少の会話をしたのち、今日は終わりという言葉を聞き、レオニスは自室へと戻った。

 今日はちょっと疲れました。明日から本気出す。


 一週間もあれば中級くらい問題ないさ。はっきり言って余裕?誰に教えてんだって感じだよね。

 え?神力の吸収?なにそれ知らないけど?すいません嘘です。すごい難しいんです。

 多分加護が足りないんです。増やす方法って、長い時間過ごすか、大地に神力を与えることなんですよ?

 与えようとしました!出来ませんでしたー!!

 時間がきっと解決してくれるよ。


「すごいわ!中級まで使えるようになるなんて。あとは上級だけよ」

「おねがいします。せんせい」

「えぇ、任せてちょうだい。当たったら危ないからレオニスは離れててね」


 ここは、村を出てすぐのところにあるイエレンの砂漠地帯。

 人は一人もおらず、誰かを巻き込むこともないため、なんの気兼ねもなく魔法をぶっ放せるらしい。

 シャルナが使用するのは上級魔法。えげつない神力を使用し、村ひとつくらいなら壊滅させるほどの威力を持った神の技。

 シャルナの願いによって、一つの災害が世界に顕現する。


『大地の神よ、私の願いに応え、その力を世界に顕現させよ!大地の怒り!!』


 上級土魔法『大地の怒り』凡人では唱えることすら不可能であるほどの神力を使用する、土魔法の絶技。

 その効果は圧倒的。地震が起こり、立っているのが困難になる。それだけならいいが、そんな甘っちょろくはない。

 地震によって足を絡めとられたあと、巨大という言葉ですら足りないと思えるほどの岩石が降ってくる。それはまさしく隕石。

 放たれた土地は、巨大なクレーターが出来て、運が悪ければ、大地に亀裂が走る。

 一騎当千の上級魔法。それはただの災害だった。


 レオニスは地震に足を取られて、立つことすらままならなくなる。

 膝をついた状態で必死に耐えているなか、付近に爆音が鳴り響く。

 レオニスは唖然とした。目の前の大地がなかった。綺麗に削り取られていた。

 レオニスは思う。使えるわけないと。


「せんせい。ぼくにはできないとおもうのですが」

「大丈夫よ。今のレオニスの神力ならぎりぎり使えるわ」


 シャルナは汗を流し、荒い息をしながらも笑顔で答えてくれた。どこからその自信が湧いてくるのかわからなかったが、先生は絶対なのだ。

 レオニスは覚悟を決め、意識を集中させる。

 願いを思い浮かべ、情景を描く。それは、巨大に巨大すぎる岩石の落下。

 身体の中から熱が抜けていく。神力が失われていき、立つのが厳しくなっていく。

 本当に神力が足りるのか疑問になりつつも、集中は切らさず、熱が奪われていく。

 少しだけ、大地が熱を帯びたのだが、レオニスが気付くことはなかった。

 レオニスは何故か温もりを感じたが、その温かみは完成した神法によってかき消された。

 大地が鳴動し、空から災厄が降り注ぐ。

 二つになったクレーターを前にして、レオニスは平然と立っていた。

 神力不足で倒れたりもせず、ただ平然と立っていた。

 内側から湧き出る熱を感じながら、自身の起こした災いを茫然と眺めていた。


 シャルナは息子の小さな背中に少しだけ恐怖を覚えた。レオニスの神力量を見誤っていたわけではない。

 まだまだ小さな子供とはいえ、神子だから神力容量は大きかった。だからぎりぎり上級を打てるとは思っていたが、自分よりも強い威力で、しかも立っていられるのが信じられなかった。

 神力の操作はさすがに歴が違いすぎるから勝てるかもしれないが、神力の大きさだけならすでに負けていた。

 シャルナは神子という存在がいかに特別なのか理解した。何人か会ったことはあったが、その力を見たことはなかった。

 リュウガとほぼ互角であるシャルナは、レオニスに負ける未来が容易に想像できた。

 神子には勝てない。レオニスには勝てない。神力だけじゃない。その強さは他にもある。

 思い出されるのは一週間前の光景。シャルナよりも強い中級を自らくらい、傷ひとつついていなかったレオニスの姿。

 訳がわからなかった。あれほどの威力をもった技をもろにくらって傷つかないなんてありえていいはずがなかった。

 導き出されるのは神力による回復。しかし、即座に回復するなんて聞いたことがなかった。

 シャルナはレオニスを見る。その目に浮かぶのは、明確な畏怖だった。


 レオニスの中を駆け巡る熱は一つの変化をもたらした。

 レオニスの神子としての能力が覚醒する。

 それは芽生え始めていた能力。生まれたときから片鱗を見せていた能力。

『吸収』

 何故このタイミングで覚醒したのかはわからない。どんな原因や条件があるのかもわからない。ただ、完成したことだけは間違いなく理解できた。

 超レオニスゴッド。神は赤くないけれども、間違いなく神の域に到達したレオニスだった。(嘘)

 意識を集中する。たったそれだけで、足の裏から熱が全身へと伝わっていく。

 身体から力が溢れ、空気中へと漏れていく。それが上限の合図。

 最大まで吸いきったレオニスは、再び願いを描く。己の力を知るために。


 シャルナとレオニスは家へと帰った。

 打倒リュウガの日は近い。父の膝をついた姿を想像し、ちょっとだけテンションアップ。

 しっかり定着させます。この力使いこなして見せます。そして髪を青くしてゴッドを超えたレオニスになります。

 敵は金色のリュウガですね。ゴールデンなリュウガです。しばきます。いざとなったら時を戻します。

 神力は漲っているのでさほど疲れてないように感じますが、疲労は内部に蓄積されているのでしっかりと休みます。

 おやすみなさい皆さま。ぐっどないと。

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