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21話 征服軍を結成しました

もといって言葉の使用用途は逆接みたいですが、並列で使ってます。完全に間違いですが、勘違いしてる人も多いと思うので、こっちを正解にしてしまえば、僕のミスがなくなるので、ずっと勘違いしててください。僕も勘違いしたままでいます。

 甘さは捨てるな。その優しさが、いつか俺の後を押す。だからまだ、甘さを捨てるな。

 俺のもとで踊っていろ……



「この地にいる魔族共。俺の声が聞こえてるか?」


 突然響き渡った底冷えするような声に、未だに眠かった意識が一瞬にして覚醒しました。

 体調はすこぶるいいです。なにせふかふかでしたから。

 今日は魔族含めて征服の話をするみたいですからね。だからあんな声聞こえたんですね。

 寝起きに聞くにはかなり嫌な音な気はします。こんな朝っぱらにする必要ないと思うんですけどね。

 嘘です。僕は何も言ってません。魔王様のお言葉に耳を傾けております故。


「人の住む大地。アカーシャ、ミドラ、イエレン、そしてオルバス。この四つを征服しようと思う。急な話だと思うかもしれないが、俺を手伝うのは嫌だろう?だが、俺は人手を求めてるんだ。さて、言い方を変えるぞ、人と争いたい奴は俺についてこい。人に一撃入れたい奴は、俺についてこい!」


 フォグナさんの宣言が響き渡った後、ゼルドラから歓声とも雄叫びともとれない、魔族たちの声が上がりました。

 魔族って血気盛んですよね。嫌いじゃないですけど、人を敵対視してるのは嫌です。

 ゼラファルムみたく……と思ったけど、あいつも十分人のこと嫌いだよな。最初襲われたし。

 ゼルドラ様って言うんだっけ?元魔王様の意思を引き継いでる魔族がどのくらいいるのかわかんないけど、その魔族たちが表立って、人との仲を取り持ってくれればいいんだけど。

 そもそも人の方の意識も変えなきゃいけないのか。魔族が人を嫌いなの以上に、人が魔族を嫌ってますからね。

 もともと先にやり始めたのは人なわけだし。フォグナさんがどのくらい尽力するかによる気がします。

 あの言い草が本当なのか否かだなんて、僕にはわかりませんけど、あの人がそんな人だなんて少なくとも僕には思えないから信じようと思えば簡単に信じれるんです。

 あの竜のことが頭をよぎるせいで、簡単なものも簡単じゃなくなってしまうんですけどね。


「征服に参加する奴はここに来い。金色塔の最上階で俺は待ってるぜ」


 どうやってここまで声を届かせてるのか理解できませんでしたが、フォグナさんの言いたいことはそれだけみたいです。

 僕も参加しなきゃなので行かなきゃですね。ゼラファルムも連れて行きますか。

 扉を開けると目の前に巨大な人影。思わず悲鳴をあげかけました。なにこの人こわー。

 人じゃなくてゼラファルムでした。ゼラファルムも僕を呼びにきたみたいですね。


「レオニスも行くんだな?」

「当たり前だよ。アリアのためなんだから」

「お前はぶれねぇな。早いとこ行かねぇと魔族で溢れ返るかもしれんから、さっさと行こうぜ」


 ゼラファルムの提案にしっかりと頷き返し、後に続く。

 天へと向かう螺旋階段の下からは騒音が鳴り響いており、見えるわけではないが、魔族が溢れてるのが理解できた。

 自然と足が早まり、みるみるうちに階層が変化し、一分とたたないうちに九階へと辿り着いていた。

 竜の紋章の描かれた金ピカ扉を開け、ゼラファルムと共に中に入る。

 豪華絢爛なこれまた金ピカな椅子に座す、一人の青年と視線が交錯する。

 青年、もとい魔王様は僕らを見るなり、少しだけ微笑みました。


「早かったなレオニス。それにゼラファルムもな。下の方はどうなってた?魔族はどのくらい集まってたんだ?」

「いっぱいいましたよ。それこそ、上の方まで喧騒が聞こえてくるくらいには」


 僕の返答を聞き、さらに笑みを深める魔王、もといフォグナさん。すごい悪い顔してますね。まるで魔王です。もともと魔王でした。

 魔王が悪の象徴として出てきてしまう辺り、僕も人なのかもしれませんね。れっきとした人なのですが、そう言う直接的な意味じゃなくてね。わかって。


「ゼラファルム含めた数体しか強い魔族はいないとは言え、数が多いに越したことはない。うまく焚きつけれたみたいだな」

「人に対していい感情を抱いてる魔族なんて存在しねぇからな。腹立つが的確なところ射てやがる」

「俺が誰か忘れたか?魔の王だぞ。つまりお前らの王だ。配下の扱い方くらい弁えてる」

「その割にはうまくいって満足気ですけどね。扱い方わかってるなら別に上手いも下手もない気がします。いや、なにも言ってないですよ?」


 一瞬めっちゃ睨まれました。魔王の眼光です。攻撃力が4くらい下がった気がします。

 特に機嫌を損ねる必要はないです。無駄なことは言わないようにしましょう。


「まぁいい。そろそろ魔族共もここにたどり着くだろう。お前らは俺の横にでもいろ。立場は上の方だからな」

「誰がお前の近くになんているかよ」

「だからって俺の隣に来なくても」


 僕の位置フォグナさんの隣なんですけど。それでもいいんですかこいつ。

 本人が満足なら別にいいですけどね。


「今から魔族が来るんだから、お前の近くにいるのは当たり前だろ。お前に戦わせないのが俺の仕事だ」

「人を危険人物みたいに言わないでほしいんだけど」


 不服です。なんですかなんですか。別に喧嘩売られたら買うのは当たり前ですよ。

 危ないのは僕じゃなくて魔族の方です。


「危険なのはお前の強さだっつーの。本気出したら誰か死んじまうだろうが」

「相手によって変えるに決まってるでしょ。それに、本気出してもやれない人がそこにいるから」


 不服です。ゼラファルムに対して全力で戦ったことなんてないのに、どうしてそんなイメージがついたんですか。

 本気の全力でやっても勝てない人だっているっていうのに。


「イエレンだったらどうなるかわかんねぇぞ?俺はここで加護を受けれるが、レオニスはイエレンじゃなきゃ加護がねぇからな。まぁイエレンだと俺の加護が無くなるし、真に平等なのはミドラだろうけどな」


 確かに加護っていうアドバンテージがありましたからね。ずるですずる。

 ミドラで平等だと思ってるみたいですが、ミドラなら完全に僕が有利なんですよね。

 加護あるし、吸収使えるし、何よりもアリアがいるから。カッコつけたくなっちゃうよね。


「そうですね。いつかミドラで全力でやりあってみたいです。そのときはアリアと一緒に戦うと思うから、二対一になっちゃいますけどね」

「平等という言葉を一切無視してやがるなこいつ。そのアリアっていうやつは強いのか?」

「それはオレも気になるな。レオニスがここまで入れ込む女なんだ。きっとすげぇだろ」


 みんなアリアのことが知りたいんですね。でもダメです。教えませんよ。


「アリアのことを知りたい気持ちはわかりますけど、アリアは僕のなのでダメです。教えません」

「ん?あぁ、お前の好きな女の名前か。特に興味もないから別にいいけどな」

「いやオレは興味あるんだが」


 ゼラファルムとかいうやつもしかしなくてもアリアのこと狙ってるんですか?

 絶対あげないですよ。僕のアリアなんですから。


「絶対教えないからね。ゼラファルムがアリアに興味持ってたとしてもダメ」

「……なるほどな。わかったよ」


 わかってくれて何よりです。満足です。

 アリアの話をしたせいか唐突にアリアの顔が頭に浮かんできました。

 かわいいという言葉がいかに不甲斐ない言葉なのか理解できます。しょぼいよ。しょぼすぎるよ!

 その程度の言葉じゃアリアの凄さを全部表すことなんて不可能です。でもそれしかないから甘んじます。

 アリア大好き。


「……魔族共が来たみたいだな」


 アリアのことを考えてたら下にいた魔族たちが来たみたいです。

 扉が勢いよく開かれ大勢の魔族が入ってきました。ざっと見てどのくらいですか?だいたい50くらいいるかもしれないですね。

 圧巻です。みんな強面ですし、怖いです。

 あ、見知った顔です。昨日襲ってきた魔族じゃないですか。

 魔族ってみんな似てるから見分けるの難しいんですけどね。髪生えてるのちょっとしかいないし。

 昨日の魔族はちょっとこうほっそりしてるんですよ。他と比べるとね。あと目の色が違うんですね。それぞれちょっとだけ違うんです。ゼラファルムが蒼いのに比べて少し緑がかってる翠って感じの目です。

 彼もこちらに気づいたようで、手を振ってきました。

 振り返そうか迷いましたが、そんな関係でもないので微笑んで返すことにします。

 そうこうしてるうちに、フォグナさんが喋り始めてました。


「さて、お前らは征服に参加する意志がある。そう思っていいんだな?」


 魔族たちから上がる歓声。うるさ。

 その声を聞き、笑みを浮かべるフォグナさん。騒音聞いて笑ってますよこの人。こわ。


「それじゃあ始めるか。人魔大戦と洒落込もうじゃないか」


 いきなり壮大なことを言い始めたフォグナさんに魔族の騒音被害はどんどん悪化していく。こいつらうるさすぎ。


「先も言ったが、アカーシャ、ミドラ、イエレン、そしてオルバス。この四国を征服、つまり落とせば俺たち魔の勝利だ。邪魔する人は薙ぎ払え。俺たちの恨みをぶつけるぞ!」


 騒音被害は止まることを知らず、天元突破の大歓声があがりました。こいつらぶっ飛ばしてやろうかしら。

 四国を落とすって、住んでる人を殺すってことなんですか?だとしたら嫌なんですけど。征服ってそういう意味じゃないですよね。


「待ってください。征服するだけなら、人に降伏させればいいだけじゃないですか?落とすって言うのがどう言う意味かわからないけど、無意味な殺傷はしない方がいいと思います」


 辺りが静まり返りました。

 強面が一つを除いて一斉にこっちを向いてます。恐怖しか感じません。

 しかも全員が全員「なんでここに人いんの?なにこいつ殺してやろう」みたいな顔してやがります。こわ。


「甘いぞレオニス。人って言うのは愚かな生物だ。降伏させたところで、いつかまた中途半端な力をつけて争いを始める。見せかけだけの降伏じゃなんの解決にもならない」

「それはわかってますよ。だから見せかけだけじゃない降伏をさせればいいだけじゃないですか」


 フォグナさんの顔が少しだけ暗くなった気がします。そして響きだす不気味な笑い声。


「お前がそれを望むならいいだろう。基本的に人は殺したりしないさ。……ただ少し遅れるだけだからな」

「ありがとうございます」


 最後の言葉をそのままの意味で捉えることがどうしてもできないのは、あの竜の助言のせいですね。

 とはいえ、ひとまず無駄な戦いはなくなるみたいです。魔族の性格の方はどうしようもないですけどね。

 今もこっちに対して抗議の声があっちこっちで上がってますし。


「悪いな。紹介がまだだったな。ここにいる人はレオニス。土の神子だ。特に人に対して何かされたとかではないが、とある理由で征服に参加することになってる。先の発言に対する文句は色々あるだろう?不平不満があるなら、まずこいつを倒してから言うんだな」


 焚きつけるようなこと言わないで欲しいんですけど。あぁもう、魔族たちの顔つきが完全に変わったじゃないですか。

 昨日のやつは、全然止める気配ないですね。それどころかちょっとワクワクしてる感漂ってますね。すごい腹立つ。

 ゼラファルムが僕の前に立ってくれました。かっこいいじゃないですか。


「悪いことは言わねぇ。レオニスと戦うのはやめておけ。お前たちじゃ相手になんねぇよ」


 おいこのバカ、更に焚きつけてるよな。なんの役にも立たないじゃん。ゼラファルムは頭が悪いってイメージで定着しそう。

 魔族たちの幾人かは完全にやる気満々ですね。ため息が漏れ出そうですが、グッと我慢して、前に出ましょう。

 魔王の撒いた火種ですが、後始末は簡単でしょうから。仕方ないので受けて立ってやります。


「文句あるならかかってこいよ。全員返り討ちにしてやる」


 魔族に対しての安い挑発は効果抜群なことは理解してる。

 今の俺の発言で動いたのは八。わざわざ時間をかける必要はない。一瞬で終わらせてもらう。

 昨日のやつに土属性を見せるわけにもいかない。ならどうするか。そんなの決まってる。

 神剣に属性なんて関係ない。神力の波動の色は出るが、さほど参考にならないはずだ。

 故に、前に出た時にはすでに神剣を抜いていた。

 あとは、彼の名を唱えるだけ。


『神剣・ドラガリア』


 八つの巨体が地面に倒れるのを確認し、神剣を腰に戻す。

 ある程度の強さを見せれたはず。これでもまだ襲ってくるなんていう蛮勇を犯して欲しくはないが、どうやらそこまでの愚者はいないみたいだ。


「文句はありますか?」


 全員が全員首を横に振ってくれました。みんな認めてくれて何よりです。

 とりあえず後ろに下がります。ついでにゼラファルムを睨んでおきます。

 ゼラファルムから謝られましたが、ダメです。もっと自分のことを学んでください。

 そっぽを向いておきました。項垂れるようなら許してあげますけどね。

 仕方ないので許してあげました。


「レオニスの力はわかってもらえたか?そういうことだ。無闇に人を殺すんじゃねぇぞ」


 不平不満は漏れ出ないとはいえ、うなずくという行為も行われないみたいです。別に納得される必要はないからいいんですけどね。


「まぁ、どうせお前らそんなん聞かねぇだろうから、個々での行動なんてもんはさせない。一個団体の軍を作る。安直だが、征服軍でどうだ?もちろんだが、俺がまとめる」


 フォグナさん直轄の軍として征服。悪くないですね。名前は安直ですが。

 魔族は不満がありそうな顔をしてますが、フォグナさんに敵わないことはすでに理解するご様子。静寂です。


「異論はないな?どうせあっても言えねぇだろうからな。よし、征服軍結成だな。本当になにがなんでも嫌なやつは早急に去るがいい。残った奴らだけで、世界を変えに行くぞ」


 動いた魔族の数はゼロ。漏れた不満もゼロ。ここにいる全員が乗り気らしいです。

 世界を変えるのは難しそうですね。人の意識を根底から覆すなんて不可能に近いです。

 僕はアリアのことで精一杯なので、世界なんて気にしてる暇ありませんよ。

 願わくば、人と魔族が共存してくれればいいな。くらいに思ってます。


「誰も出ていくものはいないか。俺についてくるのは不服だろうが、お前らの選んだ未来だ。泣き言は許さねぇぞ。征服する順番だが、まずはアカーシャだ」


 妥当といえば妥当な気がします。フォグナさんは加護がありますし、なによりも、


「理由はわかるだろ。さっきのレオニスの神剣の力を目の当たりにしたんだ。あそこまでの業物はそう手に入るもんじゃねぇけどな。お前らも神剣使ってみてぇよな?」


 アカーシャは火属性魔法を用いた鍛治が盛ん。まずは武器の供給からというわけだ。

 神剣という言葉に幾人かの魔族が反応する。目線がこちらへと向き、少しだけ表情に畏怖。そんな怖がらなくてもいいじゃないですか。


「今すぐ出発するのもありっちゃありなんだが、準備とかもあるだろ?だから明日だ。明日アカーシャの方にこい。タイミングは俺が知らせてやるよ。今日はもう解散だ。ゆっくり休んどけよ」


 フォグナさんの言葉を聞き届けぞろぞろと帰ってく魔族たち。物わかりすごいよくてなんかかわいいですね。

 昨日襲ってきた魔族も速攻帰ってました。名前聞こうと思ってたんですけどね。

 魔族たちみんないなくなったし、僕も部屋戻ろっかな。


「レオニス。お前の力があれば、小国であれば一人で壊滅させれるはずだ。アカーシャにはレストっつー小さい国がある。そこにはアカーシャの中央よりも腕利きのやつがいるんだ。言いたいことはわかるか?」

「一人でってなかなかハードですね。加護があるわけでもないし、それに僕は聖属性使えないですよ?」


 戦力よりも何よりも、聖属性が使えなければ、絶対的な降伏というものはさせることができない。だから僕が言ったところで意味はないんだけど。


「そんなのわかってるよ。だからこれをやるよ」


 受け取ったのは小さな箱。中身を見てみると、掌サイズの球体があり、表面に赤と青の混ざったような、でも少し白っぽい色をした文様が浮かび上がっています。

 確かに感じる神力の熱。なるほどそういうことですか。


「俺の自作だから、大切に扱えよ。神力は込める必要ないぞ。すでに込めてあるからな」

「なるほど。でも、僕が負ける可能性は考慮してるんですか?こんなのが人の手に渡ったら悪用されそうですけど」

「俺には効かねぇから別にいいさ。それに、お前が負けるだなんて一ミリも思ってない」

「わかりました。明日に備えて、今日は休みますね」


 フォグナさんが頷いたのを確認して、球体を箱に戻し、部屋を後にした。

 箱から溢れ出す神力の熱が少しだけ冷たい気がして、恐怖を抱いたのは内緒。

 球体の正体。それは神力構成機器。略して神器。

 基本的には神剣と同じ構成になっていて、とある文言を言うことによって内包された魔法を使用する道具なのだが、これに内包されてるのは神法。言霊はいらないらしい。

 神器は身近にもたくさん存在している。例えば、イエレンにあるお家では、水属性魔法が内包された神器で水を確保しているし、うちにはリュウガがいるから関係ないが、火属性の神器も便利である。

 暑い日には風を起こして涼んだりなど、様々な用途に神器は用いられている。土属性は使い道がほとんどないが。

 そして、今この箱の中にある神器は世界でただ一つの聖属性の神器。

 出来ることは、他の神器とは一線を画すもので、対象の束縛。

 今回の征服における用途は契りの束縛。

 成功するかどうかはわかんないけど、そんなものはそのときの自分に任せるとして、今は明日に備えて休息をとるべきです。

 まだまだ起きて間もないから、今すぐ寝るって言うわけにもいかないんですけどね。

 とりあえず部屋に戻ってその後考えることにしましょう。


 部屋に戻ると、中に巨大な男がいました。案の定ゼラファルムです。


「どうしたの?」

「お前は一人で単独行動するんだろ?」

「うん」

「よし。濡れても問題ねぇ蓋つきの容器を作ってくれ」


 疑問に思い、首を傾げながらも言われた通りに描いて、具現する。

 ゼラファルムは僕の作った容器をでっかい手で持ち、短く言葉を発しました。


『水弾』


 みるみるうちに容器は水でいっぱいになり、ゼラファルムが満足気にこちらに返してきました。


「水不足になって死んだりするんじゃねぇぞ。その量ありゃ足りるとは思うが、無理だけはすんなよ」

「ありがとう。肝に命じておくよ。前みたいな失敗はもう嫌だからね」

「おう。水のことならオレに任せておけよ!」


 頼り甲斐のある言葉を受け、明日の準備は完了しました。ゼラファルムから言われなきゃ絶対水は忘れてましたね。

 その後はゼラファルムの案内のもと、ゼルドラの地を回ることにしました。

 世界の中心といえどさほど広いわけでもなく、走れば数十分で端へと辿り着けるくらいです。

 施設はとことん充実しており、食事を提供しているところがあったり、衣服を提供しているところもありました。服ってどうやって作ってるんでしょうね。

 昨日襲ってきた魔族の見つけました。名前を聞いたところ、『ヴェス』とだけ名乗る。と言ってました。とりあえずそう呼ぶことにしました。

 ヴェスと別れ、徒然なるままに歩きつぶし、金色塔へと帰ってきました。

 ゼラファルムと部屋の前で別れ、ベッドにだいぶ。

 なんということでしょう。このベッドふかふかです。どうなってるんですか?

 とんとん拍子で話は進み、明日にはすでに征服が始まると考えるとびっくりですね。

 どのくらいの日数がかかるかわかりませんが、なるべくさっさと終わらせて、アリアの元へと帰りましょう。

 英気を養うべく、閉じた目の中に浮かび上がる竜の姿。

 なるほど。恐怖の意味の違いを少しだけ理解して、僕は意識を手放した。


 真紅の竜が、風を侍らせた姫の元へたどり着いたのは同じ月の下だった。夜空に轟く咆哮は彼の元へは届くことは決してなかった。

もう2章終わりだよ。すごい一瞬だったね。内容がないもん

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