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17話 竜種と魔族に遭遇しました

2章はすぐ終わります。一瞬です

 空の覇者は地上に住まう小さき存在を睥睨する。

 群れなすことはなく、ただ動向を見守っていた。

 



 どうも、レオニスです。

 現在、ミドラ上空を飛行中。左手側には見渡す限り何もない砂漠地帯イエレン。右手側には緑が広がっています。

 そろそろ見て見ぬ振りはできないみたいですね。

 ミドラ上空に浮かぶ謎の島。あれってなんですか?

 以前聞いたことがあったような気はしますが、もう覚えてません。

 まぁ、特に気にする必要もない気がしますが、嫌な予感が的中しないよう祈るしかないです。

 聞こえてくるこの振動は……いや、考えちゃダメです。

 こういうときって大体予想が的中するんですよね。

 噂をすればなんとやらです。その場に停滞して描きます。

 さっきアリアの使っていた絶対の防御神法。

 目の前に現れた存在にはそれを使わなければ、まず間違いなく吹き飛んでいた。ただの風圧だけで。

 竜都市ドラドという名がふと頭の中に入ってきた。厳密にいうと思い出しただけだが。

 ミドラ上空に浮かぶ竜の住まう都、竜都市ドラド。

 そういえば、ミドラって竜で有名なんだっけ。今ならはっきりわかるよ。

 これはちょっとどころじゃなくまずいですね。まさかこんなところで遭遇するなんて。


「小さき者よ。お前は空が欲しいのか?」


 目の前に現れた強大な存在、少し黄色がかった赤い竜がこちらを見据えながら問うてくる。

 あまりの威圧感に神法が途切れそうになるが、なんとか持ち堪え、問いに答える。


「いえ、そんなことを思ったことは一度もないです」


 少しだけ竜の口角が上がったのを見逃すほど、余裕があるわけではない。

 どういった意味があるのかはわからないが、一挙手一投足を見逃してしまえば、終わりになるのは確かだ。

 どうにか穏便に済んでくれればいいのだが……


「そうか、ならなぜ貴様は飛んでいる?空を目指しているわけでもないのだろう?」


 正直に答えるべきか否か。仮に嘘をつくとしても、どんな嘘が有効的なのかもわからないのであれば、わざわざバレるというリスクを付加する必要はない。

 ここは正直に答えるべきだ。


「世界の中心を目指しているだけです」

「そうか、ゼルドラ様の地へ向かうのか。それはなぜだ?」


 なぜって、そんなわかりきったこと聞かないで欲しいんですけど。


「アリアのためです」

「アリア?誰だそれは?」


 あ、この人アリアのこと知らないじゃん。そもそも人じゃなくて竜だし。


「俺の大好きな人です」

「ほう、女のためか。それで、その女のためにゼルドラ様の地へ何しに行くのだ?」


ゼルドラ様の地、というのが引っかかるが、正直に答えてもいいのだろうか?

 まぁさっきも大丈夫だったしべつにいっか。


「魔王様に会いに行きます」

「魔王、か。嫌な響きだな。そいつに会ってなんになる?」


 すごい質問攻めにされてるんですけど。なにこの竜。僕に対して興味津々ですか?


「世界の半分をもらいたいなって」

「……は?」


 あ、すごい動揺してる。なんだろう、さっきまで警戒してたのがバカらしくなってきたかも……

 この竜、いい竜なんじゃないかな?


「お前の女が、それを望んだのか……?」


 確定です。めっちゃいい竜じゃないですか。

 アリアのこと僕の女だなんて……


「そうですね。いつかそうなってくれると嬉しいんですけどね。俺のアリアか……想像するだけでもやばいな……」

「……おい。お前は何を言ってるんだ?」


 はっ!危ない危ない。アリアのことしか考えられなくなるところだった。意識は強く持たないと。


「すいません。そうです。アリアが欲しいって言ってました」

「……すごい女だな」


 この竜わかる竜ですよ!アリアはすごいんです。それはもうすごいんですよ。


「わかります!?そうなんですよ。アリアってすごいんですよ。ちょっと教えただけですぐできるようになるし、アリアの方から風の神法を教えてもらったりとかもあったし、なによりも可愛いんですよ!本当に!いつだって恥じらいを忘れることなくすぐ赤くなってそっぽ向いたり、言い訳したくても墓穴掘っちゃりしてて、もう本当に可愛いんですよ!!いい匂いですし、太もも柔らかいですし、唇も……ってそれはダメです。あれは俺も恥ずかしかったですしね。そもそも初対面で事故とは言えアリアとあんなことになるなんて、幸運とかいうレベルじゃないです。多分あのとき今までの善行が全て消費されたんですよ。前世で徳積んでおいてよかったです。シャルナさんの息子でよかったです。生まれてこれてよかったです。アリアに会えて本当によかったです。でも、ここから長い間会えないんですよね。そう考えるとすごい悲しいですけど、これも全部アリアのためです。アリアが望んだなら叶えるが性です。それに、アリアと一緒に生きていけるっていうご褒美までついてますからね。やらない手はないです。どれだけ頭悪くてもみんなやりますよね。あぁでも、アリアが他の男と一緒にいるとか絶対許せないし、アリアは俺のものであってほしいし、俺だけのものにしたいし。あぁ、アリアに会いたいよ。大好きって伝えたいよ。抱きしめたいよ。って、抱きしめたら怒られそうです。どのくらいアリアに会えないのかわかんないけど、耐えれる気しないな。世界とらずに帰ったらアリアに呆れられるのかな。嫌われちゃうのかな。アリアがそんなふうに思うわけないってわかってるけど、不安感は拭えない。世界をとるのは本当はアリアのためじゃないんです。自分のためなんですよ。欲しいのはアリアからの確約なんです。絶対が欲しいんです。俺って最低ですね。アリアのためとか言いながら本当は自分のためなんですから。ただアリアと一緒に生きたいだけなんですから。アリアの隣に立つ資格なんてあるんでしょうか。いや考えちゃダメです。アリアから認めてもらえればいいだけじゃないですか。俺が今何を考えて、思ったって意味ないんです。アリアしか知らないことですし。あわよくば、アリアと両想いになれたらそれほど幸せなことはないんですけどね。アリアが俺のことを好きでいてくれたらもう死んでもいいです。アリアは俺が死んだら悲しんでくれて、俺が傷ついても悲しんでくれる。優しすぎるよ。大好き。まだアリアと離れてちょっとしか経ってないのにこんなに会いたいなんて思ってたらこの旅最後まで続かないと思うんですよね。でも仕方ないんです。アリアに会いたいだなんて常に思ってることですし、アリアのことを常に想い続けてるわけですから。涙出てきそうです。アリア……会いたい……」


「……終わったか。とりあえずお前が頭がおかしいのはわかった。そういえば、名前を聞いてなかったな。名はなんという?」


 やばい。アリアへの想いが爆発した。

 でもこの竜怒ってないぞ?やっぱいい竜じゃないですか。


「レオニス・アルラトスって言います。あなたは?」

「本来竜種とは、人如きには名乗らんが、いいだろう我が名はガウラ。胸に刻み込んでおくがいい、レオニスよ」


 竜、もといガウラは片翼で胸のところを指し示してきた。仕草がちょっと可愛いな。


「はい。あの、ガウラさんはどうしてここに?」

「あぁ、お前の惚気話のせいで忘れていたわ。空は竜種のものだ。風の神子なのか風竜法の使い手なのかはわからんが、人如きが飛ぶなどおこがましいわ。もしお前が飛びたいのなら、我らにその力を示すがよい。というのが竜種の取り決めであるのだ」


 途中まではすごい威圧感だったのだが、最後の最後で完全に解け、あげく微笑まで浮かべているガウラさん。

 いい竜ですね。やっぱり。


「そうなんですか。これでも急いでいるんですが……」

「お前がどれほどその女のことを大事に想っているのかはさっきの話の長さから理解している。だからこのまますぐに向かわせてやりたいが、他の竜種が黙ってはいないだろうな。他の竜と戦いならば、このまま飛んでいくがよい。それが嫌ならば、地に落ちるべきだ」

「ガウラさんは優しい方なんですね。ありがとうございます。竜と戦うのは流石にちょっと勝てる気がしないので、素直に歩こうと思います」

「うむ。それがいい。……レオニスよ。一つ忠告をしておこう。魔王のことは信じない方がいい。人と魔は決して相容れない存在だ。人と竜もな」


 ガウラさんからの忠告をもらい感謝の言葉を言いながら、地上に降りた。

 竜種。今の僕の力じゃ勝つことは厳しい。ドラガリアを使えば勝てるが、それはタイマンの時だけだ。

 二匹を同時に相手にするのは不可能だろう。いや、ギリギリいけなくもないか。

 ただ、無駄な力は使わないに越したことはない。竜種との戦闘は極力避けるようにしないと。

 しかし、こうなると世界の中心にたどりつくまですごい時間がかかってしまう。

 それすなわちアリアに会うのも遅くなるということ。早く行かないと。

 脚力を神力で補強し、足の裏から神法を起動。

 およそ考え得る限り、地上において最もと言っても過言ではないほどに速い移動方法。

 デメリットは神力の消費量が半端じゃないことだが、常に吸収することで何も問題にはならない。

 もう一つは神力で無理矢理足腰を強化してるから、神力がなくなったときに足が終わることくらいだけど、後のことは考えても仕方ない。

 今は一刻も早くゼルドラに向かわないと。アリアに会いたいからね。

 その日は走り続けて日は沈み、土神法で適当に寝れる場所だけ作って終わった。

 竜の咆哮が聞こえたのは気のせいじゃないはずだ。


 翌朝、緊急事態が発生した。

 の、喉が渇いた。

 水持ってくるの忘れました。

 ちょっとどころじゃなくまずいですね。今から帰ろうにも、飛べないわけですから時間がかかりますし、それに脚力を無理矢理補っても運動すれば汗はかきます。

 汗の数滴すら惜しい状況なのは間違いないです。

 かと言って、何かできるわけではないです。

 近場に流れている水を探すのが一番な気がしますが、そう都合よく見つかるわけないですし。

 ……マジか。アリアのためとか言って何も考えずにきたのが間違いだったとは思わないが、先生にだけはアリアのことを話すべきだった。

 冗談だと思われたに違いない。あの全知全能と言っても過言ではないお母さんが何も言わないわけないんだから。

 アリアのことを言っていればすぐに本気だとわかったはずだ。それにシャルナ先生なら間違いなく俺のことを止めたはず。

 今ここにいること自体が、信じられていなかった証。アリアのことを話さなかったがばかりに、本当にまずいことになったみたいだ。

 今の俺にやれることと言えば、水場を探すことだけだが、探すとしても歩いてだ。それもゆっくり。

 とはいえ、ここに留まる理由もない。だから歩き始めた。

 諦めるわけにはいかない。俺が死んだら悲しむ人が世界にはいるから。

 アリアを悲しませることだけはしたくない。たとえ何があっても。

 だから、どれだけみっともなくても、最後の最後まで足掻き続ける。本当に薄い一縷の望みにかけて。

 一瞬、立っている場所が影になり、上空に強大な気配を察知。

 見上げるとそこには、どこか彼女を彷彿とさせる真紅の竜がいた。

 特に目的はないのか、くるくる空を回っている。

 他の竜の姿は一切見当たらない。竜都市ドラドとは反対側の空故に、空に浮かぶのは紅い竜ただ一匹だった。

 ガウラさんのときは周りに結構他の竜がいたが、あの竜の周りにはそう言ったものは見受けられない。全くのゼロ。

 あの竜はボッチに違いない。孤竜というやつだ。ちょっとかっこいいからボッチ竜でいいや。

 そんなボッチ竜の興味もすぐに消え去り、水場の捜索に意識を向けた。


 数時間と歩き続け、ついに水場は見当たらなかった。

 途方に暮れていた俺の前に、人のようで明確に人ではない何かが現れた。

 肌は少しだけ黒の混ざった肌色で、目は蒼く輝いている。

 人と決定的に違うのはその体格だった。アリアの2倍はあるであろう図体。下手したら3倍に届くのではないだろうか。

 未知に遭遇したら、誰だって警戒する。それは俺も例外ではない。

 油断なく様子を窺っていると、やがてこちらに気づいたのか見下ろしてきた。


「ガキか……まぁいい。オレの前にのこのこ出てきたってことは、お前もオレを殺したいんだろう?ってことは、オレがお前を殺しても文句は言われねぇよなぁ?」


 急に訳のわからないことを言い始めたと同時に、俺と同じくらいの大きさの腕を振り下ろしてきた。

 どうやら敵意があるようです。誰かは知らないけどね。

 抵抗しなければやられる。なるべく激しい動きはしたくなかったが、こうなった以上、もう渋ってもられない。

 足に神力を込め横飛び。おっきいやつの腕はそのまま地面へと突き刺さる。

 少しだけ地面が凹んだのを確認し、安堵。さほど膂力はないっぽい。

 神剣を使うかどうかが問題だが、ピンチになったら使うとしよう。


「なかなかいい動きだ。流石にそう簡単にはやられてくれねぇよな。そうでなくっちゃ面白くねぇけどよ!」


 巨体故の歩幅を活かして、即座に接近される。

 勢いそのままに振り抜かれた足を最小限の動きで抑えるべく、片手で受け流す。

 体勢が崩れたところにすかさず神法を叩き込むことにした。

 幾多数多という岩石をおっきいやつを中心に展開する。

 体勢を立て直したと同時に岩石がおっきいやつに向かって、弾丸の如きスピードで迫る。

 流石にあの巨体といえど、もろに喰らえばただじゃ済まないはずだ。

『神空包囲岩』とでも名付けておきましょう。いや、俺の顔は緑色じゃないよ。

 岩が積み上がったところを見ていると、やがて揺れ始めた。

 どうやら、あの程度の神法では決着がつかないらしい。

 甘く見ていたつもりはないが、それでもあれを耐えるのは予想外だった。


「痛ってぇな。そうか、お前神子か。なるほどな。悪かったな。ちょっと今から本気出すわ」


 おっきいやつの雰囲気が明らかに変化する。気のせいかもしれないが、周囲の温度も下がっている気がする。


『溺れろ!!』


 なんとなく予想はついてたけど、やはり魔法を使えるようだった。

 しかも、なんと言っても水魔法。運命に感謝。アリアに感謝。

 殺すのは初めから選択肢になかったが、万が一にも殺したらダメな状況になった。

 神剣を使うのは得策ではなくなったということだ。

 いや、あれほどの耐久力を誇っているのなら少しくらいならいけるか。

 わざわざ時間をかける必要はない。一瞬で終わりにしよう。

 おっきいやつの言霊によって具現した水の奔流が迫る中、腰元から剣を抜く。

 右手で剣身をなぞりながら、その名を口にする。その剣の名は、


『神剣・ドラガリア』


 一瞬。ほんの一瞬で大地が割れた。

 唸りを上げていた水魔法は蒸発し、大地には一本の亀裂が入っていた。

 一太刀を正面から浴びたおっきいやつは見事に倒れ伏していた。

 皮膚が焼け、血がダラダラと出ていたので、せめてもの償いとして自身の神力を譲渡。

 アリア以外に渡してしまったのが不服以外の何者でもないが、これも必要経費だ。

 俺から渡された神力はおっきいやつの神力と混ざる前に治癒のために使われ、みるみる外傷は消えていった。

 あれほどの傷を負ったにも関わらず、外傷を塞いだだけですぐに意識を取り戻す。

 俺の顔を見て、ありえないものに会った。という表情になる。ありえないものにあったのは俺の方なんだが。

 驚きを隠すことなく、早口でおっきいやつは話しかけてきた。


「なんで、なんで殺さないんだ?人はいつだってオレらを見れば殺しにくる。だから先にやらなきゃやられると思ってた。なのに、どうしてお前はオレを殺さないんだ?」

「殺して欲しかったの?」

「いや、そういう訳じゃ……人っていうのはお前のようなやつもいるのか?」


 このおっきいやつがどんな生を送ってきたのかはわからないけど、少なくとも人って言うのは危険な存在として認知しているらしい。

 俺らで言う魔族みたいなものか。


「俺のようなやつ……まぁ少なくとも見つけた瞬間に襲いかかるような野蛮人は少ないと思うけど?襲われたらやり返すけど」

「悪かったな、急に襲ったりしちまって。オレはゼラファルム。わかっているとは思うが、魔族って呼ばれてる存在だ」


 おっと、件の魔族だったみたいです。なら、こちらを襲ってくるのも納得です。

 対魔組織(ウィル)の人たちは魔族を狩ることを目的としていますからね。競争心を煽るためか、目標を定めるためか、ランクなんてものもあるそうですし。詳しいことは知りませんが。

 なんかよくわかんないけど、喋り方が雑になっていたのできっちり正しておきましょう。初対面ですし。


「魔族、初めて見ました。僕はレオニス・アルラトスです。えーっと一応土の神子です。」

「おいおい、今更そんな丁寧にされても困るっつーの。にしても、そうかお前まだちっちゃいもんな、魔族見たことなかったらそりゃいきなり襲われたらびっくりするか。いやほんと悪かったな。てか、一応ってなんだよ」


 言ってもいいですが、まだ完全に信頼できた訳じゃないですし、いつ襲われてもいいようにとっておきましょう。


「では遠慮なく。言っておくけど、襲われたら誰だってびっくりするよ。ゼラファルムさんも人から襲われたらびっくりするでしょ?あと、一応って言うのは特に意味はないよ。俺は土の神子。少なくとも自分ではそう思ってる」

「人に襲われるのも慣れすぎてもう、特に驚かないが確かに昔は意味わからなかったな。お前は……そうだな、レオはこんなところで何してるんだ?」


 何故?ゼラファルムさんからレオって単語聞いた瞬間嫌悪感が……

 その呼び方は、アリアだけのものにしておきたい自分が確かにいるみたいですね。


「レオって呼び方はやめてくれるとありがたいんだけど」

「おぉ、そうか。じゃあレオニスって呼ばせてもらうぞ」

「ありがと。俺が何をしてたかだけど、訳あって世界の中心を目指してる。魔王様に会うために」

「魔王に……?一体なんで?」

「好きな子のために世界の半分もらいに行こうかなって」


 ゼラファルムさんの顔がなんか歪みましたけど、変なこと言いましたっけ?


「そうか……お前は命の恩人だ。魔王の元へなら案内するぞ?」


 そんなありがたい申し出をしてもらえるとは予想外以外の何者でもないです。それに命の恩人って、ただ殺さなかっただけじゃないですか。

 いや、もちろんお言葉には甘えるよ?なにせ、ゼラファルムさん水魔法使えるんだから。問題解決です。


「え?嬉しい。じゃあよろしくねゼラファルムさん」

「おう。任せろ!!それと、さんもいらねぇよ。オレのことはゼラファルムって呼んでくれ」

「わかった。よろしくねゼラファルム!!」

「あぁ。よろしくなレオニス!!」


 偶然に助けられたといえばそれまでだけど、言い方を少しだけ変えて運命と呼んでみれば、この出会い必然さ。

 アリア、キミのものになるまでは、キミを俺のものにするまでは死なないからな。

 だから、どうかそこまで待ってて。そして俺に力を貸してくれ。

 腰に刺した剣を手で触れながらそう思う。

 ゼラファルムと出会わせてくれてありがとう。アリア、本当にありがとう。


「ゼラファルム。水出してくれない?ここ1日何も飲んでないからさ」

「……レオニス、お前、水持ってきてなかったのか?」

「うん」

「オレに会わなかったらわんちゃん死んでたぞ?『ほらよ』」




 空高く飛ぶ竜は、眼下にいる人と魔族を見て、少しだけ加速した。

 早急に彼女に伝えに行こう。運が良ければ、うん……

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