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幕間 わたしってほんとバカ

ソウ◯ジェムが黒く濁ってたりはしません。魔女化もしません。杏さやを推したい

 もしも、あなたにもう一度会えるなら、今度ははっきりとあなたに好きって伝えたい。

 もう、あなたと離れるのは嫌だから。

 あなたとずっと一緒にいたかった……


 レオが行っちゃった。

 勘違いされちゃったのかな。というか絶対そう。

 あんな言い方されたら誰だって勘違いすると思う。重要なところが全部抜けてたし。

 本当に世界の半分を取りに行っちゃったのかな。わたしはそんなのいらないのに。

 わたしの世界にはレオがいてくれるだけでいいのに。

 こんなことしてる場合じゃない。今ならまだ間に合うかもしれない。早く止めに行かないと。


 神法でレオのお家まで飛んできたけど、玄関に突っ伏すシャルナさんを発見。


「シャルナさん、レオは?どこ行きました?」

「ごめんなさいアリアちゃん。一瞬でも冗談だと思ってしまった私がバカだったわ」

「まさか……」


 もう行っちゃったの?でも、どこへ?


「レオニスは世界の中心に、魔王のところに向かったわ。世界の半分が欲しいって言って」

「どっちの方向ですか!?」


 わたしが撒いた種だから、わたしが拭わないと。


「アリアちゃんには行かせられないわ。レオニスがあそこまで後先考えずに行動するのはアリアちゃんのためなんでしょう?わたしはレオニスを止めることができなかった。だからせめてレオニスの帰る場所だけは守らないといけないの」

「わたしのせいで……わたしのせいでレオが危険な目に遭うかもしれないのに、わたしにはなにもできないんですか!?」


 シャルナさんの言い方はずるい。レオを追いかけても、レオのためにはならない。

 わたしはレオを信じて待たなきゃいけない。それが一番レオのためになるから。

 でも、それでも……納得いかないよ……


「レオニスはそんなこと思っていないわ。アリアちゃんのせいじゃなくて、アリアちゃんのためにあの子は動いてるんだから」

「レオ……」


 わたしがもっと素直だったら、きっとずっと一緒にいられたのに……

 わたしがもっと、素直だったら……


「アリアちゃん。レオニスのこと、今はどう思ってるの?」

「大好きです……世界で一番……」


 もう、いや。素直じゃないわたしはもういや。

 わたしはレオのことが好き。大好き。


「そう。ありがとね。レオニスが帰ってきたら、わたしの娘になってもいいんだからね」

「そのときは、よろしくお願いします。お義母さん」

「……うん。ありがとう、アリアちゃん」


 シャルナさんと別れて、わたしはお母さんの元へと向かうことにしました。

 レオは世界の半分を取るまできっと帰ってこない。それがわたしのためだと思ってるから。

 レオはいつもわたしを優先してくれる。初めて会ったときからずっと。

 でも、だからこそ、レオは自分のことを疎かにする。今回だってそう。わたしのために危険を顧みずに行ってしまった。

 レオのそんなところが嫌いで、そして大好き。

 もう長い間会うことは叶わない。お母さんになんて説明すればいいんだろ。

 家について、お母さんの部屋のドアを開ける。

 音に気付いて振り返ってきたお母さんに、レオのことを伝えようとするけど、言う言葉が出てこない。

 なにも言わないわたしに焦れたのか、お母さんが首を傾げながら口を開ける。


「アリア、どうしたの〜?」

「えっとね……」


 うまく言葉がまとまらずに、考えてると、見かねたお母さんが、核心に触れてしまった。


「レオニスくんとの間に何かあった?」

「うん……」


 わたしの肯定を聞いたお母さんは、いつもの軽い感じの雰囲気が一瞬でなくなり、いたって真剣な顔つきへと変化。

 え?かっこいい……


「あなたたちの間になにがあったのかは後で聞くとして、アリアは後悔してるの?って愚問ね。顔を見ればわかるわ」

「うん……すごく」


 わたしが今どんな表情なのかはわからないけど、後悔してるのがバレるような顔らしい。

 実際わたしは後悔してる。もっとわたしが素直だったら、今も隣にいてくれたはずなのに。


「話せるようになったら、私にも聞かせてね。あと一つだけ言っておくと、アリアもわかってるでしょうけど、レオニスくんの行動は全部あなたのためなのよ」

「わかってるよ」


 とっくにわかってる。わたしは後悔していても、レオは今の状況を後悔していない。

 どれだけの困難が待っていても、レオは絶対に後悔しない。だって、全てわたしのためなんだから。

 お母さんもレオと過ごした時間は長い。それにわたしよりも鋭いし。

 そして誰よりもレオと一緒に過ごしてきたシャルナさんが言っていたのだから。

 お母さんにはわたしたちのことは言わないといけない。もう全部わかってるだろうけど、改めて伝えておきたい。

 さっきまでは見つからなかった言葉を一つ一つ形にしていく。


「さっき、レオに改めて告白されたの。一緒に生きていきたいって。それで、それに対してわたしが、世界の半分をくれたらいいよって言っちゃったの」

「その言葉に込められた意味は?」

「あなたさえ良ければ是非……」


 お母さんは頭を押さえてため息を漏らす。


「アリア。あなたはそれで伝わるって本当に思ってたの?」

「……ううん」


 伝わるとは思ってた。なんて言ったら嘘になる。

 でもそのときのわたしはそう思ってた。そしてなによりも、素直に返すのが恥ずかしかった。


「はぁ。アリア、恥ずかしがってばっかじゃダメよ。レオニスくんが好きなんでしょう?なら正直に言わないと伝わるものも伝わんないわよ?」

「でも、もう言えないし……」

「レオニスくんはどこへ向かったの?」

「魔王のところ」

「……!?シャルナは止めなかったの?」


 お母さんの明らかな狼狽。

 お母さんも相当な強さのはずだけど、そのお母さんがここまで慌てるって、魔王ってどんな存在なの?

 レオ……


「シャルナさんは冗談だと思ってたって、すごい悔やんでた」

「レオニスくんがシャルナに対してアリアが関わってることを話さなかったのね。アリア、あなたはレオニスくんのお家に泊まって頂戴。私はちょっとお父さんの方へ行ってくるわ」


 お父さんのところに?

 わたしはお父さんのことをよく知らないけど、お父さんはグリモーラっていうところの守護を任されてるすごい人?って聞いたことがある。そんなところになにしにいくんだろう?


「アリアもレオニスくんが心配でしょう?安心してとは言わないけど、お父さんが頑張りさえすれば少しは安全になるはずよ」

「ありがとう、お母さん」


 お母さんもやっぱりレオが心配みたい。

 この人がお母さんでよかった。


「じゃあ、早速だけどシャルナのところへいきましょう?」

「うん」


 お母さんに手を引かれて慌てて飛翔。

 お母さんと一緒に飛んだのは初めてですごい新鮮だった。

 相当なスピードで空を駆けたため、すぐにシャルナさんのところに到着。


「シャルナ急で悪いけど、アリアを泊めてあげてくれないかしら?」

「え?……わかったわ。ありがとね。リリア」

「じゃあ、そういうことだから。レオニスくんのことは任せて。少しだけ安全になるだけだけどね」


 飛行魔法を途切れさせることなく、空中で会話を終わらし、すぐに去ってしまうお母さん。台風みたいな人。

 さっきも会ったシャルナさんに改めて挨拶して、中を案内してもらう。


「ごめんなさいね。うち狭いから、部屋が足りなくて。レオニスの部屋を使ってくれる?」

「……!?わかりました。ありがとうございます」


 レオのいない最中にレオの部屋に勝手に入るなんて、すごいしちゃいけないことしてる感。

 レオのベッドで寝なきゃいけないんだよね。レオの留守はわたしが守らないと。

 誰がレオのベッドに寝ようとしても守りきるよ。任せて!!

 わたしはなにを言ってるんだろ……

 今日はレオと戦って疲れたし、もう寝ちゃおうかな。

 そこまでふかふかってわけでもないけど、寝るには十分すぎるね。

 レオの匂いがする。

 あれ?なんでだろ、レオが後悔してないならわたしも泣かないようにしなきゃって思ってたのに、涙が止まんない。


「レオっ……」


 後悔して泣いても、なにも変わらないことはわかってる。でも泣かずにはいられない。

 ずっと一緒だったから。心のどこかで離れることはないって安心してたから。

 心にぽっかり穴が空いた感覚。多分どうやったって埋まることはない穴。

 レオじゃなきゃ埋めることなんてできない。

 はやく会いたいよ……

 わたしが悪い。全部素直じゃなかったわたしが悪い。

 自責の念で押し潰されそう。

 レオならわかってくれるなんて無理があった。わからないだろうなって思ってた。

 でも、羞恥心に勝てなかった。

 さっきのわたしの言葉を思い出す。


「わたしの知ってる世界はここだけ。わたしの世界にはここにいる人しかいないの」


 わたしの知ってる世界には、ここにいるわたしとあなたしかいないの。


「どれだけ狭くてもいいから、わたしは世界を見てみたいの」


 どれだけ狭くてもいいから、わたしはあなたと描く未来を見てみたいの。


「世界の半分をわたしにくれたら、あなたのものになってあげる!」


 あなたがわたしのものになるなら、わたしはあなたのものになってあげる。


 伝えることのできなかった想いが頭の中で反芻され、自責の念が強くなる。

 後ろを振り返ったってなにも得るものはないから、前に進まなきゃいけないけど、わたしの進む先にレオがいないから、わたしは後ろを振り返るしかないの。

 でも、いつか、わたしの進む先にまたレオがいてくれるって信じれるから、わたしは信じなきゃいけないから、前に進む。

 もう一度あなたの隣を歩けるなら、わたしはもうなにもいらない。

 わたしに世界を見せてくれたあなただから……夢を叶えてくれたあなただから……


 欲しいのは、レオを守れるだけの強さ。でも本当はそんなものいらない。ただレオの前で素直にいられればいい。

 ただレオに好きって言えればいい。

 また言える日が来たら、もう絶対離さない。

 わたしの居場所はあなたの隣しかないから……

 レオ、ずっと待ってるからね……




 赤い女性が微笑む。

 紅き竜の咆哮が夜空に轟く。

 その声が紅い少女に届くことは決してなかった。

本当のタイトルは緋竜の目覚めなんですけどね。次から2章です。いざ、魔王の元へ

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