15話 この戦いに勝ったら、好きな子に告白するんだ
誰も死にません
芽吹いたよ、始まりの種が……
時が過ぎるのは早いものでアリアのお家での生活もすでに2年が経ってます。
2年間もあれば、僕もアリアも当然の如く飛べるようになってるわけであって、お互いの属性の上級魔法まで神法で使えるようになってます。
飛べるようになるまで時間は全然かからなかったから、先生たちと離れてから2週間後くらいにアリアと一緒にバアムへと飛んで行きました。
それからも1週間に1回くらいは先生たちの方へと飛んでいって、他の日は二人で遊んだり、神法の練習をしたりと充実した日々でした。
飛ぶという当初の目的を果たしたのだから、わざわざアリアのお家にいる意味もなかったんですが、シャルナ先生とリリアさんで話し合った結果こうなりました。
アリアが嫌がるのであれば、二人がなんと言おうとも帰るつもりでしたが、そんなことはなかったのでい続けることにしました。
アリアと同じ屋根の下ですからね。こんな幸せなことはないです。
リュウガに頼んでいた神剣もすでに完成していて、僕の手元にあります。
以前先生たちが急用で帰らなきゃいけなくなったのは、神剣に必要なものが手に入らなくなる可能性があったかららしいです。
神剣に使われてる具体的な素材はわからないですが、神力を通す鉱石がすごい稀少らしいです。
剣身はアリアと同じように紅く輝いていて、柄には小さく名前が彫られています。
作成者と使用者、そして神剣の名前。
アルラトス家全員の名前とドラガリアという名前が刻まれてました。かっこよかったです。
これは僕にとっての、いや僕ら家族にとっての宝物なので肌身離さずに持っておくつもりです。
何度か試しに使ったことがありますが、はっきり言ってやばいですね。切れ味は言わずもがな。特筆すべきは神力機構です。
ただ単純に神力を濃縮して放つだけなのですが、なんかよくわからない威力が出てびっくりしました。
神剣ができた後に約束通りリュウガと真剣勝負しましたが、僕の中にある全神力を濃縮して放ったらリュウガが死にかけました。
ギリギリ剣先を逸らせたから大事には至りませんでしたが、直撃してたら本当にまずかったと思います。
近くで見てたアリアとシャルナ先生もドン引きしてました。神力を全部を込める必要はないみたいです。
本当に困ったときだけ使おうと思います。威力があれ過ぎるので。
2年間で起こったことはそれくらいです。
普通に幸せな日々でした。アリアに感謝。
基本的にずっと一緒にいたので、僕のアリアに対しての好感度は毎日上がっていきました。
いろんなアリアが見れましたからね。いや本当に最高の日々でした。
お風呂に一緒に入るなんてそんなことはないです。ありえなかったです。
一回だけリリアさんの計らいで、僕が入ってるときにアリアが入ってきそうになったことはありましたが、途中で気づいてました。
いえ、惜しかったとか思ってないですよ?ほんとこっれぽっちも思ってないです。別にアリアの裸が見たいわけじゃないですし。アリアが見れればそれでいいですし。
でも、恥ずかしがるアリアは超絶かわいいので少し惜しい気もしなくもないですが。
僕が好きなのはアリアなので。そこに衣服があろうとなかろうと、想いは変わらないので。アリアがどんな格好だろうとアリアが好きですから。
僕からアリアへの想いはどんどんと強くなっていきましたが、アリアから僕への想いがどうなったのかは一切想像がつかないです。
友達としては好きって言うのは何度か聞いたことはあるのですが、所詮そこまでです。友達止まりです。
ずっと一緒にいれるなら友達でもなんでも構いませんが、ずっと一緒に生きるとなると友達では厳しい気がします。
だから今日。僕は改めてアリアに想いを伝えようと思います。
告白ってやつです。今からすでに緊張していますが、ただ単に告白するってわけでもないです。
今日はアリアと戦います。神法だけで戦う約束をしてるんです。
傷つけるのは嫌ですが、アリアは僕と同じくらい神力による自己治癒が早いので大事には至らないはずです。
アリアに向けて神法を撃つだけでも心が締め付けられるんですが、手加減は抜きって決めてあるので本気でいきます。
もし、アリアとの戦いに勝ったら、そのとき告白しようと思います。
だから勝たなきゃいけないんです。絶対に。
さっさと支度を整えて決戦の地へ赴くことにしましょう。
大樹から数分飛んだ場所にある何もない草原。
二人で一緒に飛んできて、向かい合う形で着地しました。
「レオ、準備はいい?」
「待って。流石に早すぎだから」
「まだ準備できてないの?わたしはもう準備バッチリだからね」
「そのさ、勝った方にご褒美かなんか付けない?」
「え?いいけど……どんなのにするの?」
「勝った方は負けた方に一つだけお願いするっていうのは?」
「お願い……うん。いいよ」
これであとは勝つだけだね。アリアが受け入れなかったらどうしようかと思ってたけど、受け入れてくれてよかった。さすがアリア。
「レオはわたしにどんなお願いするの?」
「アリアは?」
「わたしは、レオと……い、言うわけないでしょ!!」
一瞬言いかけてたけど何だったんだろう?
アリアの顔が赤くなってますが、本当に何だったんだろう?
「……準備できた?」
「ちょっと待って。アリアを傷つけなきゃいけないんだよね。本当あとちょっと待って。覚悟決めるから」
アリアに背を向けて、神法を描く。
それはこれから与えるであろうアリアへの痛み。その全てを自分自身に向けて、具現した。
岩や風によって身体が傷つけられ、尋常じゃない痛みが襲いかかるが、その全てを無言で耐えきり、傷ついた身体を神力を使って無理矢理に治していく。
覚悟はできた。
「……!?ちょっとレオ、何してるの!?血!血出てるよ!!」
「大丈夫。覚悟決めただけだから」
「だからって……どうして?」
「アリアが背負うべき痛みは、俺も背負うから」
アリアが背を向けてきたけど、流石にそれはないよね?
念のためにアリアの背中に触れておく。
「レオ、熱いんだけど……」
「アリアが自分自身を傷つけるとは思ってないけど、もしそうだったら止められるように触れておかないとだから」
「自分だけしておいてわたしにはさせてくれないなんてひどい……」
「アリアは準備バッチリなんでしょ?俺ももう準備バッチリだから。いつでも始めていいよ?」
「やっぱりレオって意地悪」
……痛い。めっちゃ痛い。でもアリアが傷つく方がもっと痛いから、このくらい問題ない。
ちょっとほんと辛くなりそうだからやめて。アリアのこと傷つけなきゃとか思い出させないで。
落ち着かないと。深呼吸。すー、はー。
「じゃあ、始めよう?」
「うん」
アリアが右手を前に出す。それに追随して俺も右手を前に出す。
いつもなら左手にドラガリアがあるけど、今日はないから手持ち無沙汰。左手を遊ばせておくのももったいないから右手に添えておく。
アリアも俺を真似て左手を右手に添えていた。
開戦の合図、それは二人が一瞬のズレもなく放った神法。
土と風がちょうど二人の真ん中で衝突し爆ぜた。
初級レベルの神法にも関わらず、少しだけ地面が捲れるほどの爆風が巻き起こる。
土煙が上がり、視界が悪い中で飛んでくる風の刃。
俺の姿は見えてないはずなのに正確に捉えてくるのはアリアの天才的センスなのか。
風刃は視界を晴らすことなく、最小限の範囲で、それでいて最大限の風量で迫ってきていた。
風の速さを足で避けられるのは超人だけだ。一般凡人には到底不可能の領域と言っても過言ではない。
故に、撃ち落とす。風には風で対抗すればいい。
一瞬のうちに神法を描き、具現。
どこからともなく現れた風を迫り来る風にぶつけて相殺。
込められていた風が弾け、全ての土煙が吹き飛んだ。
クリアになった視界で、表情を一切変えることなくこちらを見据えているアリアの姿を確認。
お互いにまだ一歩も動いていない。始まる前となんら変わらない状況だった。
アリアの技を俺は全て使える。逆もまた然りで、アリアは俺の技を全て使える。実力は完全に拮抗している。
神法だけで考えた場合は。だけどね。
俺にあってアリアにないもの、それはリュウガとの1年間。
俺はアリアに神力による筋肉の増強という術を少ししか教えていない。
もちろん、その少しでアリアは使えるようになってはいるが、練度が違う。
リュウガと長い間無駄だと思いながらも特訓してきたのだから、俺の方がうまい。
だから俺の方が上。絶対に勝たせてもらう。
それに、あの技があるから……
「……どうして?」
不意に聞こえたアリアの声に強制的に意識を思考から戻される。
「レオが神法を使うとき、全部軌道がわたしから逸れてる」
「神法を相殺するためだよ」
「風くらい、レオなら簡単に避けれるんだから相殺する必要なんてないでしょ?」
一体どういう理屈でそうなったのか教えてほしいけど、それくらいアリアは俺のことを過大評価してるってことか。嬉しいけど期待が重い。
「アリアのは速すぎて無理だから」
「ふーん。とにかく、レオはわたしを傷つける覚悟はできてるけど、わたしを傷つけることはしないんだよね?」
アリアも最近どんどん鋭くなってきてませんか?というか俺のことを理解してるっていった方が正しいか。
「アリアが俺のことをわかってくれてて嬉しい限りです」
「そりゃあ2年もずっと一緒にいたから……それで、レオはどうやってわたしに勝つの?」
「さぁ?ちなみにだけど、負けるつもりはさらさらないから。アリアのお願いっていうのも気になるけど、絶対に勝つから」
「わたしも負けないよ。わたしはレオに傷つけるからね。あとわたしにも……」
「させないから。絶対にアリアには傷つけさせないから」
アリアを傷つけさせないためにも勝つしかない。アリアが俺のことをどう思ってるのかはまだわかんないけど、少なくとも俺のことを傷つけるのは嫌みたいだから。嬉しい。
傷つけずに勝つ方法、それはきっと、アリアにはできない。アリアはまだたどり着くことができていない。
アリアに近づければ俺の勝ちだ。
「レオ、行くよ!」
「うん。来い!」
アリアの神法が一瞬のうちに具現。
先も見た風の刃がたった一枚。しかしそれは、威力が先ほどとは比べ物にならないほどに圧倒的な一枚の刃。
アリアの身長を優に越すほどの大きさの一陣の風が吹き荒ぶ。
回避できるような速さだが、逃げる場所が存在していない。それほどまでにその風は大きかった。
相殺しようにも、威力が大きすぎて周りに起こる被害が尋常じゃない。俺はもちろんのこと、アリアも吹っ飛ぶ。
もともとなにもない草原だから、どんなに荒れようともなにも言われることはないと思うが、村の方にまで被害が及ぶ可能性も十分にあり得る。
アリアがそのことを考えてないわけないからほぼほぼありえないとは思うが。
とにかく、相殺は選択肢から外れる。もちろん回避もだ。回避なんて悠長なことをしてたらその時点で負けだ。
ならどうするか。
俺は描く。
目の前に現れたのはアリアのより少し小さい風の刃。少し小さいとは言っても普通のと比べたら規格外の大きさだが。
まっすぐ吹きつけてくるアリアの刃に対して、斜め下から上へと上げるように迎撃する。
決して正面からぶつけるわけにはいかない、圧縮された二つの空気が衝突したら大惨事じゃ済まなくなる。
だから割り込ませる。そして空気をちらつかせる。
前に進むことしかできなかったアリアの風は進行方向を強制的にねじ曲げられ、俺にかすることなく上へと消えていった。
アリアの表情は変わっていない。この結果が分かっていたかのような表情。
威力が威力だけに使った神力の量がぶっ飛んでいたが、俺らの神力は実質無限。神力の枯渇なんかでは勝敗はつかない。
と、アリアは思っているだろうが、俺は神力を吸収しない。
一撃だけでごっそり神力が持っていかれたが、決して補うことはしない。
だから早めに決着をつけなければ、俺の負けは間違いない。
今度は俺が攻める番だ。
神力で脚力を強化し、さらに神法で風を出して一瞬でアリアの元へと肉薄する。
さすがにこの行為はアリアも予想外だったようで、目を見開き固まっていた。
その隙があれば十分。アリアの背後に着地し、背中へと手を触れさせる……ことはできなかった。
アリアの周りに展開されていた風。内側から外側へと延々と風が吹き荒れる、アリアにとっての最強の防御神法。
想いを込めれば込めるほど風量が増大し、ほぼ全ての神法を防ぐことが可能となる。神力が少ない今の俺では突破することは厳しい。
しかし、不可能ではない。
神力が有り余っている状態であれば同じ神法で以って風の方向を強制的にねじ曲げて、突破することは可能だが、今の俺にはできない。
少ない神力で神法を描く。それは小さな女の子を浮かせるほどの小さな風。
アリアの神法は欠点がある。それは神力の消費量。
展開している間は継続的に神力を浪費し続ける。アリアは大地から神力を吸収し続けているから明確な欠点にはなり得ないが。
だが、吸収できなかったらどうか?無論、神力が消えていく。アリアの神力容量だとそれでも長い時間持つのがきついけどね。
大気からの吸収もアリアはできるが、自身の周りに展開してる風のせいで大気に触れることは叶わない。
つまり、大地から離せば神力は減っていく。
この風はそのための神法。アリアの軽さならこの程度の風でも浮かぶはずだ。
ただ、浮かせるにはこの風をアリアの足の裏まで持っていかなきゃいけない。普通の方法なら不可能だ。だが……
俺が2年間の間になにもしていないわけがない。
俺とアリアだけに許された技。
『吸収』そして、
『譲渡』
あの日、抱いた違和感はもうすでに形をなしている。アリアに神力を渡し、アリアから神力をもらったあの時から。
詳しいことはわからない。ただ俺たちは何かから神力や他の何かを吸収でき、何かへと神力や他の何かを与えることができる。
その特権を活かさないような俺じゃない。
譲渡に関してはなぜ使えるようになったのかもわからないし、完全に使えるようになったわけではないが、使えないわけではない。
右手の中に風の塊を握りつつ、アリアの周りの風に触れる。
表面に触れただけで腕が吹き飛びかけるがなんとか耐えぬき、手の中の風をアリアの神法の方に渡す。
アリアの足の裏へと目掛けて譲渡された小さな風は神法の一部となり、アリアの足の方へと向かっていく。
アリアの神法から渡したから、小さな風も神法の一部となっている。だから、アリアは神法を続けている限りは神力の吸収は使えない。
アリアが神法を一瞬解くだけでも消えてしまう風だが、一瞬さえ隙ができればなにも問題はない。
あとはアリアが神法を解くのを待つだけだ。
ずっと背中を見せていたアリアがこっちを振り返る。
その瞳には驚愕と少しの歓喜が混ざっている気がした。
「この神法をそんな方法で突破されるなんて思ってなかった……やっぱレオはすごいね」
「なら早く解いた方がいいんじゃないか?神力を浪費し続けるだけだぞ?」
「珍しいね。レオがわたしに催促するなんて。それに、レオが神力を節約するなんてもっと珍しい。吸収は使わないの?」
「使わなくちゃいけない状態になったら使うよ。今はまだ使う必要ないから」
アリアが怪訝そうにこちらを見てきているが、無駄な会話が多ければ多いほどアリアの神力は減っていく。好都合だ。
アリアがこっちの作戦に気付いているかどうかはわからないが、今のところは順調。一番厄介なのは神法を一気に使われることだが、それをしてくる様子はない。
「レオがなにを考えてるのかさっぱりだけど、このまま神力を浪費するのもばからしいから、さっさと決着つけちゃおっか?」
順調とか言うからこうなるんですね。もう順調ではなくなりました。
「俺としては、アリアとの会話を長いこと楽しみたいんだけど」
「戦いが終わってからいっぱい話せばいいじゃん」
ぐうの音も出ませんでした。これはまずいですね。
アリアが目を閉じ、描く。
顕現したのは災厄の一つ。
土の上級魔法の隕石に匹敵するほどの威力と破壊力を持ったその暴威の化身はもちろん、アリアがここ2年で習得した最上最強の一撃。
風属性上級魔法『大気の嘆き』
アリアと俺との間に竜巻が現れる。竜の如く唸り、俺の方へと向かってくる。
およそ考え得る限りアリアにとっては最良の、俺にとっては最悪の選択肢。
この技を今の神力でどう対処しようか……
同じ神法をぶつけると言うのも一つの手だが、アリアの方が風属性は長けている。しかも、この威力の相殺は余波がでかすぎる。
かといって、さっきのような逸らすという小細工は通用しない。上級は伊達じゃない。
相殺じゃなく、上から押しつぶす。俺の残りの神力をほぼ全て使えば可能のはずだ。
災厄には災厄で対抗すればいい。俺は土の神子だから。
描く。何度も使ってきたあの技を。ありったけの想いを込めて。
一瞬の立ちくらみを気合いでかき消して、神法を具現する。
アリアの竜巻よりも一回り、いや二回りほど大きな災厄が空から降り注ぐ。
アリアも上を見上げるが、もうすでに遅い。
災厄同士が触れ合い、凄まじい衝撃が起こるが、地面までは届かない。
隕石の表面が削れていく中で、竜巻は徐々に規模を小さくしていき、やがて完全に押しつぶされた。
災厄が地面に到達する前に指を鳴らして消滅させる。
遮るもののなくなった視界の先に茫然と立っているアリアを捉える。
神力はまだ有り余っているはずだが、驚いたせいか、神法は解かれている。
すぐに我に帰り、再び神法を展開しようとするがもう遅い。
少しだけ残していた神力をアリアとの距離を縮めるために全て使い、一瞬でアリアの目の前に着地し、アリアの肩に手を置く。
意識が消えかけそうになるのをなんとか耐えぬき、アリアへと微笑みかける。
「俺の勝ちだな」
アリアがこちらに目を向けるよりも先に、今まで使ってこなかった技を使用する。使わなくちゃいけないときはまさに今。
手に意識を集中させ、俺は今日初めて吸収を使った。
「んっ……んぁぁぁぁあああああ!!」
アリアの悲鳴を聞き、少しだけ胸が痛くなるが、アリアから吸収した神力で胸が熱く焦されていった。
何故かはわからないがアリアへの想いが止めどなく溢れてきていた。
意識を失い倒れかけるアリアを抱きとめ、寝かせてあげる。ついでに神力も譲渡。寝顔が少しだけ穏やかになり、安堵。
とにかく、俺はアリアに勝ったんだ。素直に喜ぼう。
アリアが寝ている間に場所を大樹へと移しておきました。やっぱり想いを伝えるならここがいいですからね。
やがて、アリアが目を覚まし、質問攻めに合いました。
「レオの残りの神力量じゃ絶対あの神法は打ち消せないと思ったのに、まさかほぼ全部の神力使ってくると思わなかった……神力がそこを尽きた時点で負けだったのに」
「そもそも、俺も吸収しようと思えばできたのに、なんでしないと思ったの?」
「それなら聞いたあのときに使ってるはずだからね。あそこで使わなかったのに、神法を前にして吸収するわけないもん」
確かにその通りですけど、いくらなんでも信用しすぎじゃないですか?嬉しいですけど。嬉しいですけど!
「それに、最後の吸収ってなんだったの?吸い取られる量が尋常じゃなかったけど」
「吸収する量を調整しただけだよ。次の一回だけは吸収する量を大幅に上げる代わりに自分に入ってくる量を下げるっていう。この状態にするのにすごい時間がかかったから、吸収が最後以外使えなかったんだよ」
「そんなことできるの?どうやって?」
「吸収とか譲渡ってほとんど神法みたいなものじゃん?だから、描いて効果を書き換えてみた。譲渡の方はどうやっても変わんなかったけどね」
「描くのにそんなに時間かかったの?」
「描くのは簡単なんだけど、具現するまでがすごい長いっていうか、書き換えるのに時間がかかってる感じなのかな?とにかく、書き換わるまで吸収自体が使えなくなって、なおかつ書き換えても次の一回しか反映されないから、そんな強いってわけじゃないんだけどね」
「そうなんだ」
「傷つけずに無力化するっていうのができるから使っただけだよ」
「一回でも触ったら終わりって結構強いと思うよ」
「アリアに対しては強いかもね。風の防御が突破できればだけど」
「そう!あれもすごかった。さすがレオだなって思ったよ」
「成功する保証はなかったけどね。成功してよかったよ」
「今回の戦いでレオの凄さがよくわかったから、次は負けないからね!」
「できればもうアリアとは戦いたくないんだけどね」
「……確かに。わたしもレオのこと傷つけるのは嫌なんだよね」
「その割には最初からえげつない神法放ってきてたけどね」
「それは、レオなら対処できるって確信してるから……」
「そ、そうなんだ」
「……そ、それで、レオが勝ったんだし、わたしになにをお願いするの?」
自分からは切り出しづらい話題をしっかりと持ってきてくれるアリア様さすがです。感謝感激雨プリン。
と、とにかく本題ですね。深呼吸します。すー、はー。
レオニス・アルラトス、人生初の告白、いざ参ります!!
「それは……」
次回で1章終わりのはず




