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9話 可愛い子のお母さんは綺麗なんです

 この親にしてこの子あり。いつだって変わらないのは自身の中に流れる血だけである。


 頬を真っ赤に染めたアリアがぽかぽかと僕の胸板を叩いてきます。かわいいです。すごくかわいいです。

 経緯は省きます。さっきの続きですからね。

 ただ可愛いって言っただけなんですが、何故かぽかぽかされてます。可愛いですね。


「面と向かってって言ったけど!いきなり改まって言うなんてずるいって!!」


 これがぽかぽかの理由らしいです。不明瞭な気がしなくもないですが、女の子って難しいです。


「ごめん。でもアリアが可愛いのは本当だから」

「……レオもかっこいいよ」


 抱きしめていいですか?いやわかりますよ?売り言葉に買い言葉みたいな感じで可愛いに対してかっこいいって返してくれたっていうのはわかってます。でも嬉しいものは嬉しいですし、やばいです。意識が……


「……!?」


 手の中に柔らかく温かい感触。そしてほのかに漂う甘い香り。ぽかぽかが止まってます。

 これやった?やらかしちゃった?意識ない最中に抱きしめちゃった?この香りはダメかも。戻った意識が……

 ダメです!あとちょっとしたら離します。ここでまた意識なくしたらダメなんです。あとちょっと堪能しますけどね。


「……ご、ごめん!意識なくてつい!」

「別にいやじゃないけど……びっくりしただけだから……」


 いやじゃないってちょっと本当マジですか?だいぶ小声でしたけど、しっかり聞き取りましたよ!

 アリアからは嫌われてないっていうのが確約されたってことでいいんですよね!嬉しみしかないです。


「……練習再開しよっか」

「うん」


 喜びはひた隠し。アリアとお勉強しましょう。


「簡単な神法って言っても簡単すぎても神力をほとんど使わないから、ほどほどの神力を使うような神法を使ってみよう」

「わかった」


 アリアは両手を前に出して描き始める。

 アリアの描いたのは周りに吹き荒れる風だと思う。風量が明らかに上がっている。

 とは言っても髪がぶわってなるくらいですが。

 アリアがやると同時に自分も神法をやります。風の感覚を掴んでおかないと今後めんどくさいですから。

 大樹が揺れてます。それが悲鳴でないことは見なくともわかるでしょう。喜びかどうかはわかりませんが。


「なんかわかった?こう神力が流れてく感じとか」

「ふわあってしてたよ!手のひらから周りにふわあって!」


 表現の仕方聞きました?いや可愛いですね。とことん可愛いです。

 とはいえ、全体に広がるような神法なのに手のひらからっていうのはちょっとだけ発動までに時間が余計にかかります。神法は発動時間がなによりも重要なので、これは直さなきゃです。


「なるほど、じゃあ今度は今と同じ神法を手のひら以外からふわあってしてみて?」

「え?どうやって?」


 どうすればいいんでしょうか?考えてませんでした。さっきは手を前に出していたから、それで手に集中しちゃったのかもしれない。

 なら、


「えっと、手をぷらーんてさせて、手に集中しないでやってみて?」

「手に集中しないで……わかった」


 アリアは手をほっぽり出して描き始める。

 少しだけ手がふるふるしてますが、なんかちょっと可愛いですね。

 アリアの風に自分のをぶつけて相殺してみることにしましょう。なんとなくです。

 アリアの方に風をやってもダメだし、こっちに風が来るのもダメです。だいぶ難しい気がしますが、風に慣れるのは大事なんです。

 神法が発動してから神力を操作して威力を調整するっていうのができればいいのですが、風に慣れてないせいでまだできないっぽいです。

 アリアは表情を変えてないので成功したかな?完璧ですね。


「できた?」

「うん。なんかムズムズしたけど、できたよ」


 手をふるふるしてたのはムズムズしてたからなんですね。実に可愛いです。


「さすがアリア!次は、神法をやったあとに威力を変えてほしいんだけど」

「できないと思うけど」

「とにかく一回やってみよう。できなかったときのことはその時考えよう」

「わかった!どうすればいいの?」

「さっきはふわあってやってたから、やってる途中にふわあからぶわあってすればできるけど、ごめん。説明が下手で」


 ここで僕の父、リュウガの話をしましょう。いえしません。

 この親にしてこの子あり。認めざるを得ませんね。教え方が全部フィーリングになってしまってます。擬音じゃわかりにくいですよね。アリアじゃなきゃ無理だと思います。

 アリアでよかったです。心からそう思います。


「ぶわあ……うん。やってみるね」


 残念なことに僕にはまだできない所業です。アリアの頑張りを見守ることしかできないですね。

 まぁ、ふわあのところまでは相殺しておきますが。

 こっちまで風はこないですが、大樹が嘶いていることから風が吹いているのはわかります。

 アリアが目を閉じました。手を前に出さないでって言ったから、手が迷子になってます。体の横でふるふるしてるんですね。可愛い。

 簡単じゃないですよね。手のふるふるがちょっと大きくなった気がしましたが、特に変化はないっぽいです。

 カッと見開かれた目が紅く輝いた気が……

 相殺していた神法は一瞬にしてかき消されました。ちょっと吹き飛びそうになりましたがなんとか踏み止まって事なき。

 アリアの風が収まって笑顔。意識が吹き飛びそうになりましたがなんとか踏み止まって事なき。


「レオ!できたよ!!」

「すごい威力だったよ。このままもう一回やってみよう」

「もう余裕なんだから!」


 勢いづいたアリアは止まらないようです。

 もう一度やったら更に威力が上がった気がします。対抗意識を燃やしたけどまだできない模様。


「完璧だね!アリアのセンスだね。俺には風の神法の調整はまだできないから」

「ふふん!さすがわたし!!」

「さすがアリア!飲み込み早くて助かるよ。本当可愛い」

「……ありがと」


 雑な説明だったけど、アリアの元々の素質がよかったからできたっぽいです。さすアリアです。僕が説明する意味もない気がしますが。

 いやいや、会うための理由がなくなるのは嫌なので教える役は手放しません。

 一緒に飛びたいですしね!


「アリアの飲み込みが早すぎて、すごく時間が余ってる気がするから、何かしたいことある?」

「えーっと、あ!レオの神法もっと見てみたい!!」


 難題が飛んできました。自分の使える神法(と言っても神法に定められた形はないんですが)はそんな派手だったりかっこいいのはないんですよね。

 でも、見せない手はないです。アリアが土の神法を使える以上、全てがお勉強です。

 全てを今見せる必要はないですし、アリアの驚きを見たいから、あれだけ見せることにします。

 もともと高いモチベーションが更に上がる可能性もなくはないですからね。


「わかった。一個だけ見せるよ」

「えー、一個だけなの?」

「うん。俺の中で多分一番強い神法だと思うから、場所を変えよう?」

「レオの一番強い技……うん。いこう!」


 アリアの興味を誘えたみたいです。本気見せてやりますよ!

 今現在での最上最強の技と言っても過言ではないので、アリアも驚くと思います。

 威力だけで言うなら、神力を一方向に一気に放った方が強い気がしますけど。それは神剣ができてからより強力になってからやりたいので今は封印です。

 触れてなかったのですが、アリアが手を差し伸べてきてるんです。握っちゃっていいですよね?差し出された手を握らない手はないですよね?手汗はないですね。いざ!

 あ、なんかすごく柔らかいです。今手を繋いでるって考えちゃダメだと思うんですよ。意識が……

 危なすぎです。本気で危なかったです。なんとか耐えきりました。にぎにぎ。幸せです。

 大樹のある丘を降りて村との反対へ約二分ほど。何もない草原です。ちょっと村が近い気もしますが、落とす気はないから大丈夫でしょう。きっと。


「本当だったら地面にばーんって激突してすごい衝撃がするんだけど、村も近いし危ないからその前に消すね」

「とにかく安全っていうことだよね」


 わかってくれて何よりです。理解が早くて本当に助かる。大好き。


「いくよ」

「うん。頑張って」


 エールもらいました。活力が一瞬にして漲りました。

 さて、本気出すか。

 描くのは一瞬。空から落ちてくる災厄。

 魔法ならば地面が揺れるが、神法は違う。

 一切の気配もなく、確実な殺戮を狙う暗殺者の如く静かに迫る災厄。

 圧倒的な質量でもって全てを押しつぶさんとする、土属性の絶技。

 言霊を必要とせず、瞬きの間に顕現するそれは落ちた。

 少し震えながら空を見上げていた紅い髪の少女の目の前に。

 少女は襲いくるであろう衝撃を予感し、目を瞑った。しかし、いつまで経っても衝撃はこず、目を開ける。

 少女が見た景色には、来たときと変わらない草原が風に靡いていた。


「俺の中で一番強い神法なんだけど、アリアもいつか使えるようになるから、頑張って。まずは飛ぶのが先だけどね」

「レオって本当すごいね」

「ありがとう。でもアリアも十分すごいからね」

「ありがと。頑張ってレオみたいに強くなるね」


 目指す場所が僕となるとかなり低い難易度なんですけど、でもアリアから目標にされるなんて嬉しいですね。

 本気を出した甲斐がありました。


「よし。戻ろっか」


 そっと頷いてくれたので、今度はこっちが先導する形で手を出してみます。スルーされたら泣きます。

 ……握ってくれました!感動で泣きそうです。柔らかくか弱い手ですが確かな温もりです。やばい。意識なくなりそう。

 耐えないと感じることができないので、死ぬ気で耐えます。ここで死んでも悔いはないです。

 いや、死んだとしても感じることができなくなってしまうため死ぬのもダメです。悔いしか残りません。生きます。生きていきます。

 自我と戦いながら丘を上り、大樹へと帰還。

 何をしましょうか。特にもう今日やることはないと思うんです。いっぱい神法練習しましたしね。

 かといって、何もしなければせっかくアリアと一緒の時間を無駄にすることになります。それは許されません。


「レオ、今日はもう終わりにする?」


 黙っていると見かねたアリアから問いが飛んできました。

 着目すべき点は『今日は』というところ。明日もあるってことなんですね。喜びしかないです。喜んでいられるような状況じゃないですが。

 早急に考えないと今日が終わりになっちゃいます。それはもったいないです。でも思いつきません。


「いっぱい神法の練習したし、今日はもうするつもりはないけど、アリアはどうしたい?」


 他力本願という言葉がありまして、この言葉ほど良い言葉はないと思うんですよ。人というのは一人では生きられない生物なので、お互いに支え合って共生して行かなきゃいけないんですね。故に、他者の力を借りるというのは非常に理にかなっているというわけなんですね。借りるとはまた違った意味の言葉な気がしなくもないですけど。

 とにもかくにも、アリアからの意見を聞くというのは大事なことなのです。自分本位で考えるなんて言語道断ですよ。自己中心的な人は嫌われてしまいますから。人の意見を取り入れてこそ真に人と呼べるのではないでしょうか?

 すいません。本当に何も思いつかなかったんです。アリアの意見を聞いて、アリアがもういいなら僕もそれに従うという従順な意志の現れです。アリア至上主義国家ですので。


「……レオは?」


 全

 反

 撃


 相手の虚を突くような完璧な一撃をもらいました。さすがアリア、恐ろしい子!

 痛いです。反撃が痛すぎます。もう立てません。実際には五体満足で立っていますが、そこは触れてはいけません。

 くっ……どうすれば……

 いや、あの手がある。今俺はかなりの深傷を負っている。なら……


 リベンジ・カウン◯ー!!


「俺はアリアの意志に従うよ。何かしたかったらいくらでも付き合うから」


 威力は増大していません。まだ不完全なのです。ただのカウンターじゃんとか言わないでください。そこ!カウンターですらないとか言うな!

 完全に自己をほっぽりだした考え方です。他力本願の最終は従順です。適当ですが。

 従順な意志をより強くストレートに相手に伝えることで、完全な形なのです。さっきのはツメが甘かったせいで隙をつかれました。

 今度は完璧です。絶対にもう反撃はくらいません。


「昨日のことをお母さんに話したら、レオのことを見てみたいって言ってて、それでここに来るって言ってたからまだ帰らないで欲しいの」


 反撃どころか治癒してもらいました。まさかアリアは女神族!?あり得ない話ではないですね。

 この可愛さにこの強さ。そしてこの圧倒的なまでに存在しているだけで他の人を魅了するほどの可愛さ。女神か……

 これでプリンが好きだったら確定です。紫の要素があればなおのことです。

 いや、アリアの髪は紅。それを考えると女神化したらオレンジかもしれません。すいません嘘です。

 帰らないでって言われちゃいました!理由が理由なだけに別に喜ぶようなことではない気がするかもしれませんが、いかな理由があれど、アリアに帰らないでって言いてもらったことに価値があるんです。


「俺は帰ろうとしたらどうするつもりだったの?」

「止めようと思ってた」


 いいこと思いついたので実行しようと思います。意識は飛びかけていますが、むしろ飛びかけているからこそこんなことをしようと思ってるんです。

 結構意地悪なことですし、嫌われる可能性が僅かとはいえ存在する以上、しっかりとした思考回路が健在ならば絶対しないんですが、先も言った通り正常じゃないんです。


「じゃあ今日は帰るね。ばいばい」

「え!?話聞いてた?帰らないでってじゃん」


 心苦しいですが、無視して歩いていきます。

 途端、手に触れる温かい感触。見なくてもわかる、アリアの手。止めてくれたみたいです。


「待って!帰らないで!レオのバカ!」


 バカという言葉。アリアが言うとすごく可愛く感じるのは何故なのでしょうか?可愛い人はなにを言っても可愛いと言うことなのですね。正義です。


「ごめん嘘。帰らないから大丈夫だよ。うん。焦ったアリアも可愛かった」

「……レオの意地悪」


 むくれてそっぽを向いてしまいました。手がまだ離れていないことを考えると嫌われてはいないようです。可愛いアリアが見れてよかった。

 自業自得とはいえ心がすごく痛いので、もう二度としないと思いますけどね。いや嘘。するかもしれません。性格悪いとか言ったやつ、その通りだからなにも言い返せません。


「本当にごめん」

「もういいよ。帰らないでくれるんでしょ?無理言ったのはこっちだから。でも嘘つくのはダメだよ」

「仰る通りです」


 やっぱもうしません。神に誓います。アリアには嘘はつきません。絶対です。もうほんと絶対です。


「何して待とうか?」

「お話」


 可愛くないですか?まず言い方が可愛いんですよ。すごくない?たった四文字でこの可愛さ。正義だ。


「なんの?」

「レオの話聞きたい」


 自分の話となるとなんでしょうか?先生との話でもすればいいんでしょうか?


「どうやったらそんなに強くなれるのか聞きたい」


 なるほど。リュウガの話を省くかどうかがかなり重要な話題ということですね。


「俺が強いかどうかはさておき、俺のお母さん、つまりはシャルナ先生の教えがあったから神力の制御は得意なんだ」

「どんな風に教えられたの?」

「魔法の実演を見してもらって、俺が試す。出来たら何回もやって身体に覚えさせて、出来なくても懇切丁寧に説明してくれるから、すぐに出来るようになるんだよ。さっき見せた神法も先生から教わった上級魔法だから、身体が覚えてるんだよね。すごく教え方がうまかった」

「そうなんだ……実演だとわたしたちの場合できないね。それぞれの神法はできそうだけど」

「やっぱり制御に関しては慣れてくしかないからね。かと言って適当に何回もすればいいって話でもないんだけど」

「わたし頑張るからね。レオもしっかり教えてね。神力制御も土の神法も」

「任せとけ。アリアも風の神法教えてね」

「うん!」


 話が逸れた気がするけど、そもそもほとんど中身もなかったのでうまくまとまった感が強いです。

 話始めてから少し経って、他愛もない話に花を咲かせていたところに一人の女性。

 アリアよりも薄い赤い髪に対をなすような碧い双眸。どこかの天使のような少女の面影を感じるその人はそっと微笑んだ。


「あら、あなたがレオニスくん?すごいかっこいいわね〜」


 この親にしてこの子ありですね。今回はガチです。すごく美しい方です。アリアがとてつもなく可愛いのも納得です。


「どうも。レオニス・アルラトスって言います。よろしくお願いします」

「丁寧にありがとね。アリアに神法を教えてくれてるんでしょう?ありがとね〜」

「いえ、こちらこそありがとうございます。アリアと一緒にいられるだけで僕は幸せですから」

「愛されてるわね〜」

「……!!」


 アリアがそっぽ向くのってすごく可愛いですよね。いや本当に。お母さんナイスです。


「あ〜、名前言ってなかったわね。私はリリア・ララモーラ。アリアの母です。アリアをよろしくね〜」

「お母さんっ!別にわたしとレオはそんな関係じゃないって!!」

「レオニスくんはアリアのことどう思ってるの?」

「一眼見たときから大好きです」

「ですって!よかったわね〜、アリア」

「……レオのバカ」


 なんでバカって言われたのかは理解し難いですが、可愛いからおっけーです。

 謎は謎のまま見果てぬ銀河へぽい!しておきます。そんなことより、アリア曰くリリアさんは飛べるそうなので今後の糧にしたいです。


「リリアさんが飛べるって聞いたんですけど、見てみたいです」

「あら、アリアから聞いたの?風の魔法なんて見ても、土の神子のあなたには関係ない気がするするけど〜」

「人が飛ぶ姿を見てみたいんです。あと、アリアはリリアさんが飛んでるところを見たことあるんですか?」

「あ〜、アリアにも見せたことないわね。レオニスくんも見たいらしいし、じゃあ久しぶりに飛んでみましょうか」


 説得に成功しました。人が飛ぶなんてすごいですね。僕もいつか使うことを鑑みて、しっかり観察です。


『私は飛びたいわ〜!!』


 言霊がすごくふわふわしてる感じがしましたが、あんなのって言ったら失礼ですが、あんなので本当に飛べるんでしょうか?

 愚問でした。アリアが神子ならば、その親は必然に王族の血を引いていると言うことです。

 お父さんという可能性も捨てきれませんが、どうやらリリアさんが血を引いてるのでしょう。

 吹き荒れた風が圧倒的だった。アリアの目を見開いたときくらいの衝撃に襲われ、立つのにすら苦労。

 吹き荒れた風は徐々に吹く方向が変わっていき、内から外から、外から内へ。やがて風は上昇気流へと変化し、一人のシルエットが大地から離れ始めた。

 影が完全に浮かび上がり、見上げるほどに離れた瞬間、風は指向性を失い消え去った。

 しかし、風がおさまった後も空に浮かぶ影は落ちることはなく、悠然と佇んでいた。


「久しぶりにこれ使うときついわね〜」


 空に浮かぶリリアさんはすごく気楽な感じでそう溢します。あの人すごいな。

 ふわふわな言霊そのままにふわふわと浮かんでいます。右へ左へ上へ下へと忙しなく動いてます。

 一通り空を堪能したらしく、満足げな顔でリリアさんが降りてきました。指を鳴らして魔法を解除。結構な高度から普通に両足で着地してます。足腰を神力で補強したんでしょう。


「どうだった〜?」

「お母さんってあんなに凄かったの!?いつもあんな適当なのに!」

「見れてよかったです。いいものを見れました」

「ありがとね〜レオニスくん。アリアは私をなんだと思ってるのかしら?私はいつも適当じゃないわよ?」


 ちょっとアリアがびくっとなりました。確かに今のリリアさんの顔は怖かったです。


「今日はレオニスくんに会ってみたかっただけだったから、私は帰るわね〜。邪魔しちゃってごめんね。あとは二人で楽しくやってね〜」

「わたしも帰る」

「え〜!いいの?レオニスくんと一緒にいなくて」

「だから!わたしとレオは!そんな関係じゃないんだって!」

「レオニスくんは?アリアと一緒にいたいわよね?」

「はい。叶うならば片時も離れたくないです。でも、アリアが帰りたいならば僕は止める権利なんてないですから」

「いい子ね〜。ほんとよかったわね〜、アリア」

「……」


 アリアがぷいっとしました。頬が少し染まってるのが最高なんです。可愛いことこの上ないですね。


「アリアは帰るみたいだし、レオニスくんも一緒に帰らない?」

「いいんですか?」


 視線をアリアの方へ向け、目が合いました。そっと頷いてくれたので喜んで同行させてもらいます。


「レオも一緒に帰ろ?」

「うん。帰ろっか」


 一縷の望みにかけて手を差し出しましたが、望みは叶いました。アリアの温もりを感じます。

 リリアさんが繋がった手を見て微笑んでいます。そっと耳打ちされました。


「アリアのこと、本当によろしくね」


 任せろと言わんばかりに笑みを返しておきました。

 リリアさんも笑みを返してくれました。その意味がどう言った意味かはわかってるつもりです。

 それからほんの少しして、村へとたどり着き、アリアと明日の約束をして別れました。

 陽が沈みかけ、オレンジ色に染まった村を少し歩いて宿へと戻り、部屋でボケーっと椅子に座っていたリュウガを無視して、奥で何かを書いていたシャルナ先生へと帰宅の報告もなしに切り出しました。


「先生。二つの属性の神法を扱うのって可能なんですか?」

「わぁ!?え?レオニス?いつ帰ったの?」

「今です。それより、二つの属性の神法を扱うのって可能なんですか?」


 シャルナ先生は書いていた紙面を一瞬にしてひっくり返し、振り返ってきました。悲鳴と一緒に。


「二つの属性の神法?そもそも神子自体が稀だし、神法を使える人が少ないんだけど、今この世界の中心にいる魔王様?が火と水の神法を使えるって聞いたことがあるわ」

「魔王なんているんですね」

「火と水の神子の子どもらしいわ。二つの王族の血を引いてるなんて凄いよね」


 二つの王族の血を引いて二属性の神法を使えるんですね。だとしたら僕が風の神法を使えるのは理解できないです。


「聞いてきたってことは、なにかあったってことよね?」


 さすが先生です。全てお見通しですか。


「風の神法を使えるようになりました」


 ガタッという音がした方を見てみると椅子から落っこちたリュウガが床に倒れていました。

七罪楽しかったです。

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