魔王誕生
昔、世界は四柱の神による争いが繰り広げられた。
大地は神によりすっかり様変わりし、ある地では、火山が生まれたり、ある地では激流が渦巻いていたり、またある地では暴風が吹き荒れていたりした。
火神アカーシャ、水神オルバス、風神ミドラ、土神イエレンによる四神大戦は、後の世に語り継がれることとなる。
しかし、勝敗は定かではなく、世界が四つに分かれ、それぞれの地にそれぞれの神の名がついた。
そして、世界に神の力、神力が溢れたのであった。
生物は神力を身に宿し、生活していった。神力により、身体を動かし、思考する。生物は神力なしでは生きられない身体になっていった。
稀に、神力の扱いに長け、神の技である神法を使える人がいた。それは神子と呼ばれ、敬われた。
神子は、一国の王となり、国を築き上げていった。それ故に、神子は王族にのみ、産まれることとなる。
神子以外にも、神法を使えるようにするべく、ミドラ上空に浮かぶ、竜都市ドラドの王、ゼルドラは竜法を作り出した。
言葉に神力を込め、言霊として発することで、神の技を具現するものだった。
ゼルドラは人に讃えられ、世界の中心に住うことを許された。
世界の中心は、四神大戦の被害が全くなく、どの神とも関係のない土地であった。
やがて、人が世界の中心をゼルドラと呼び始めたことで、ゼルドラとして名前を広めていくことになる。
世界の中心にある、金色の塔の中で、ゼルドラは研究を進めた。
そしてたどり着いた境地。それは、生命の創造だった。
ゼルドラによって創り出されたのは、人よりかなり図体のでかい、強面の生物だった。
人は自身よりも大きく、よくわからないその生命体を恐れた。
魔と糾弾し、創り出したゼルドラのことを魔王と呼び、生命体の方を総じて魔族と称した。
やがて、人は魔族を襲い始めた。ゼルドラの創り出した竜法によって。
魔族は抵抗をしなければやられることを理解し、竜法によって抵抗した。
人は、魔族の使った法を魔法と呼び始め、竜法という言葉は使われなくなっていった。
人と魔族の争いは日を追う毎に加速していった。それにより、死者も増えていった。
人は対魔組織を創設し、魔族排斥を訴えかけた。
神子を中心に徐々に魔族を追い詰めるも、やがて神子も力尽き、戦況は拮抗する。
そして、人の中に英雄が産まれた。名前はフォグナだった。
フォグナは、火と水の神子の間に産まれた、二属性の神子だった。アカーシャとオルバスから加護を受けた少年だった。
魔族にとって、フォグナの存在は脅威そのものだった。
一つでさえ厳しいのに、二つの属性を持つ神子は圧倒的だった。
やがてフォグナは仲間と共にゼルドラの元へと辿り着く。
ゼルドラはフォグナと相対するが、敗北した。そして、人と魔の戦いは終わった。
フォグナは仲間と共に、ゼルドラの金色塔内で暮らしていた。そして、ゼルドラの書いたと思われる魔族についての文献を見つけた。
ゼルドラの魔族に対しての想いや、人に対しての想いを知り、フォグナは人と魔族の和解を提案する。
仲間たちは快くうなずいてくれ、早速オルバスへと向かい、魔族との共存を訴えかけることにした。
魔族と共にオルバスの地に踏み入れた瞬間、爆ぜた。フォグナの周りが吹き飛んでいた。
何が起きたのか理解できず、フォグナは振り返る。するとそこには何もなかった。文字通り何もなかった。
連れてきた魔族も、フォグナの仲間たちも、何もかもなかった。
フォグナは遠くの方でガッツポーズをしている対魔組織と思わしき人を消し、考えを改めた。
人は敵。大切な仲間を奪ったあいつらは殺すと。
世界に、再び魔王が誕生した。