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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
16歳編

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第八十五話 厄介事

極秘で隣国王太子妃のクレア様が訪問されて3日が経ちました。

お茶会から帰るとミリアお姉様が帰られてました。


「リリア、どうしたの?」

「お姉様」


帰ってきたお姉様に抱きついたのは仕方ありません。淑女として駄目なのはわかってますよ。

驚いても優しく受け止めてくれるお姉様に緊張の糸がプツンと切れた音がしました。


「リリーはお留守番も満足にできません。もうどうしたらいいかわからなくて」

「リリア!?ニコラス、どうしたの?」

「リリア、離れろ。義姉上が困ってるから。移動するよ。ここだと話せないだろ?」


強引にお姉様から引き離されてなぜ抱き上げられてるんでしょうか。家だからいいです。

私の部屋に移動するんですか。


「俺が事情説明するから泣いてていいよ。義姉上が帰ってきたから大丈夫だよ」

「うっ、クレア様」


ニコラスの頭を撫でてくれる手が余計に涙腺を崩壊させます。我慢していた涙が溢れてきます。


「義姉上、急に呼び出してすみません。実はクレア様が極秘で訪問されまして」

「え?」

「クレア様は極秘で訪問され今はイラ侯爵家に滞在しています」

「ごめんなさい。信じたくなかっただけ。続けて」

「セシル第二王子殿下が国王に即位するためには後ろ盾と功績が足りないから励めと国王陛下と正妃様よりクレア様に話があったと。友達に相談しろと言われ、リリアに会いに来ました。滞在許可書は国王陛下直筆です。陛下より内密にせよと命じられ誰にも話さず来られたと」

「リリアの手紙の意味がわかったわ。ノエル様ではなく私宛にした理由も。」

「王太子妃が行方不明はまずいので、ギルバート王太子殿下に頼んで、リリアの暗号でクレア様を保護していることをセシル第二王子殿下に伝えてもらう手筈になってます。ですが、それ以上はどう動いたらいいかわからず」

「リリアは陛下がクレアを排除させようとしてると思ってこんななのね」

「すみません。緊張が抜けたみたいです。クレア様の前では明るくして、レトラ侯爵家の社交をこなしてて。義母上もいないので」

「まさかこんなことがおこるとは思わないわ。義父様達もまだ当分帰られないもの。ただクレアはなにか隠してると思うわ」

「隠してる?」

「正妃様は自分の派閥の令嬢をセシル様に娶らせたいのかしら。第一王子が王族位を返上したから立場が低いもの。もともとセシル様や側妃様を嫌ってらしたからセシル様が即位した後は立場がさらに危ういものね」


涙も止まりました。心配そうに見ているニコラスに大丈夫と頷きます。


「ニコラス、降りる。もう平気」

「リリア、そのままでいいわ。いつもノエル様の膝の上で座ってるの見慣れてるから」

「だってさ」


お腹に回ったニコラスの腕が解けないのでこのままでいいです。時間が惜しい。

重石かわりにニコラスの訓練にもなりますから。


「お姉様、どうしてクレア様との婚姻を許されたんでしょうか」

「神の名のもとに婚約をしたから破棄するわけにはいかない。セシル様は臣下になるように育てられた。でももし有力貴族の後ろ盾を持ったら王位争いに発展しかねない。だからどこの派閥にも属さない中立貴族のエクリ公爵家との婚約。破棄できないように神殿で結んだのよ」

「セシル様は邪魔になれば殺されるって警戒してました」

「兄より弟の方が優秀だったから。正妃様は第一派閥の筆頭公爵家の出身。第二派閥の筆頭公爵家の私が第一王子と婚姻することで両派閥を掌握するつもりだったの。想像以上に第一王子が愚かで無駄だったけど」

「隣国に帰ったら新しい妃がいるんでしょうか」

「セシル様って融通が効かないのよ。国のために自分が気に入らない妃を娶れるような方じゃないのよ」

「王族なのに王族らしくないですものね」

「仕方ないわ。常に兄をたてて、臣下となるように教育されてたから。王になるなんて幻想を抱ける立場じゃなかったもの。こっそり帝王学を教えておいて良かったわ。」

「お姉様が教えたんですか?」

「ええ。教えるとすぐに吸収するのがおもしろくて。兄より弟の方が可愛げもあったしね。きっと今頃政務に追われているわね・・・」

「お姉様、クレア様はどうすればいいんですか?」

「たぶん陛下の思惑は正妃様とは違うのよ」

「どういうことですか?」

「まさか!?」


お腹に回ったニコラスの腕がきつくなりました。後を見るとニコラスが怖い顔をしてます。


「陛下は神獣に御執心」

「まだ諦めてないんですか!?」

「王家は国の利のためなら手段を選ばないものよ」


「待てよ、義姉上、リリアじゃなくて神獣ですか?」

「きっとね。歴代の王で神獣に仕えられたのは初代王だけ。陛下って、そういうものに弱いのよ。陛下がクレアに求めたのは功績。神獣をうちの国に欲しいのよ。」

「そこまで・・。義姉上、神獣ならなんでもいいんですか?」

「え?」

「セノン以外でもいいですか?」

「セノン以外にいるの?」

「うちにも一匹いますよ。あれでよければ譲りますよ」

「ニコラス?」

「リリア、シロとポポは魔力を持ってる」

「ポポが?」

「ああ。」

「だからポポはあんなに早く飛べるんですね。お姉様、ポポは時々庭に遊びに来る白い鳩ですよ。お姉様!?」


お姉様が頭を抱えてます。


「伝説の生き物がそんなにいるとは思わなかったわ。」

「結構いるみたいですよ。クレア様が神獣を連れて帰るのが望みなんでしょうか?」

「陛下はきっとね。セシル様とクレアが神獣に認められれば余計な横槍は減るわ。私がクレアを連れて謁見して正妃様とも話をしてくる。」


ニコラスとお姉様が話し合って方針を決めました。私はついていけませんでした。

この後はお姉様と一緒にイラ侯爵家に行くことになりました。

お姉様が帰ってきてくださってありがたいです。今日の予定は後は夜会だけなので良かったです。

昨日、迎えに行ったのにクレア様がお泊まりしたいと言うのでイラ侯爵邸に預かっていただいたんですが大丈夫でしょうか。ご迷惑をかけてないといいんですが・・。

イラ侯爵夫人はクレア様やセノンを夢中にさせるほど魅力的な方なんですね。さすがイラ侯爵夫人です。

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