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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
16歳編

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第八十二話後半 お休み

私は一人で市に行ったためにお母様に怒られました。

窓から出るなんて淑女として許されないって・・。

せっかくのお休みもお部屋で謹慎です。


「え?」


私の前には少女がいます。

うちの使用人ではありません。この子は昨日市で会った少女です。


「リリア、入るよ」


ニコラスは了承もなく部屋に入ってきました。

いつの間にか私の目の前にいます。


「お前は」

「昨日はどうも。お話しかったのにすぐに帰っちゃうんだもん」


「転移魔法か」


緊張感のある声が部屋に響きます。やっぱりこの少女は勝手に入って来たんですね。

転移魔法いいなぁ・・・・。


「やっぱり君も魔道士ね」

「なんの用だ」

「私が用があるのは彼女。ねぇ、私の国に来ない?貴方の力を引き出してあげる」

「断る。彼女は魔道士として生きる人間ではない。」

「貴方に聞いてない。」

「相手にするな。」


この少女、なぜか嫌な予感がします。上皇様がそういうときは警戒しなければいけないと教えてくれました。直感は大切だそうです。


「駄目。この方、嫌な感じがします。お名前をお伺いしても?」

「魔導士は名前を教えないの」


名前で相手を縛る魔法をかけられる国もあるそうです。自己紹介はやめましょう。


「そうですか。私は貴方の国に行くつもりはありません」


「世界一の魔導士になれば全てが手に入るわ」


転移魔法は魅力的です。

それにはきっと多大な時間がかかります。私はそんなに時間をかけてられません。

修行してる間にオリビアが死んじゃうなんて許せません。


「全てなんていりません。私は大事なものさえ守れればいいのです」

「つまらない。興醒めよ」


勝手に訪ねてきたのに・・・。なんでそんなつまらない顔をされなければいけないんでしょうか。

剣を抜こうとするニコラスに手を重ねて制します。戦ってはいけない相手だと思います。


「せっかくおもしろいと思ったのに。やっぱり世の中はつまらないものばっかり。こんなに力があるのに、ねぇ、貴方の体、私にくれない?」


かわいい幼い少女の顔で言う言葉ではありません。

少女の体を乗っ取ってるわけではないですよね!?


「あげませんよ。怖いこと言わないでください」

「貴方が死んだらでいいの」


そういうことではありません。


「あげません。見ず知らずの貴方に渡す道理はありません」

「そこの彼なら?」

「渡しませんよ。私の体も彼の体も。目的はなんですか?」

「私も気まぐれで弟子をとってもいいかなって。大魔導士の私の誘いを断るなんて。どうして私の欲しい子にはいつも番犬が憑いてるのかしら」


憑いてるの言葉の感じがおかしいです。もの欲し気にみられても譲りません。


「弟子になる気も貴方の国に行く気もありません」

「どうして力があるのに遙か高みに登りつめたいって思わないのかな・・。いつまでも若く永遠の時を生きれるのよ?」

「なんの呪いですか・・。勘弁してください。全く興味がありません。」

「つまんない。つまんないわ。そこの彼だっていずれ若い女に走るわ。男は若くて可愛い女を選ぶのよ。例外もいるけど」

「別に彼が誰を選ぼうと関係ありません。」

「強がっても無駄よ。いなくなれば泣きわめくのに」

「しません」

「バカな子。水の女神に愛された子は風の御曹司に捕まった。癒しの女神に愛された子は封じられた男を選んだ。聖の女神に愛された貴方はどうする?」


女神に愛された子?

捕まったって大丈夫なんでしょうか・・?封じられた男ってなんですか?

物語に出て来る魔王でしょうか?


「女神に愛されし子は強い力の代償に試練や運命(さだめ)に襲われる。あなたはうまく逃げられるかしら?そこの彼は守りきれるかしら?彼の運命はすでにねじ曲がってるけど。」


何を言ってるんでしょうか。逃げる?

ニコラスの運命がねじ曲がってる?


「聞くな。俺は運命なんて信じない。なにがあっても守るだけ」

「運命の相手は別にいても?」

「俺は自分で選んだ道を行くだけだ。俺は彼女といられない運命なら壊す。壊すのは得意だしな」


ニコラス、強気な顔で物騒なこと言ってません?

壊すの得意って自慢になりません。


「女神に愛されし子は容易に他人の運命に巻き込まれるわ。離れれば貴方は平穏なのに」

「守ればいい。平穏なんていらない。もし運命があるなら俺の運命は彼女といる以外は認めない。どんな言葉を並べても彼女は渡さない。大魔道だろうが邪魔なら消すだけだ」

「執念深さはどの男もかわらない。気が変わったわ。私は高みの見物。あなたが綴る物話を。運命のねじ曲がった男と聖の女神の愛し子の。」


外見に似合わず妖艶に笑った少女の体が消えました。昨日と話し方が違うけど、こっちが素なんでしょうか・・。


「リリア、あんな訳のわからない怪しいやつの言葉は信じるなよ」

「え?」

「俺はリリアの側にいることをやめない。何があっても。運命なんて信じない」


真面目な顔で何を言い出すんでしょうか。

ニコラスなら笑い飛ばすと思ってました。私が気になるのは…。


「あの少女はなんだったんでしょうか・・・」

「気が狂った魔導士だろう。世話係の弟子でも欲しかったんだろう。」

「転んで泣きそうだったから子供だと思ってました。何があるかわかりませんね。市は不思議がいっぱいです」

「ああ。リリア、怪しいやつが部屋に現れたら叫べ。ぼんやりしてただろう」

「気のせいです。ニコラスがすぐに来ましたもの。そういえばどうしました?」

「次はすぐに呼べよ。魔導士相手なら速さが勝負だ。いや、謹慎くらって暇してるかと。寝るから膝貸して。セノンはいないだろ?」

「ええ。お母様が連れていきました」


仕方がないのでニコラスに膝を貸すことにしました。

この人、昔から好きなんですよね。

ニコラスに見上げられるのって新鮮です。


「リリア、俺ならくれるの?」

「なにを?」

「リリアの体」

「最期まで一緒にいてくれるなら構いません。でも死んでからにしてください」


なぜか嬉しそうに笑っていた目が丸くなりました。


「は?」

「魔術に利用するんでしょ?」

「しない。そういう意味じゃない」

「売るんですか?」

「バカ。売らない。なんでそうなるんだよ。どうしたら伝わるんだよ」


おかしいことを言うほど疲れているんでしょうか。ニコラスの額に手をあてて治癒魔法をかけます。


「何が言いたいかわかりません。疲れてるなら休んでください。明日からまた忙しくなりますよ」

「魔法はいらない。何があろうと俺は傍にいるよ。だから心配するな」

「はいはい。言葉ではどうとでも言えますわ。おやすみなさい」


諦めた顔をしたニコラスが目を閉じました。暇なので本を読みましょう。

クレア様への手紙の返事は後でいいです。返事をしなくてもお手紙がくるのでもう少したまったらお手紙を書こうかな・・。あんまり手紙を放っておくと第二王子殿下から催促のお手紙が来るのでさじ加減が大事です。

クレア様、もう少ししっかりしていただけたらいいんですけど。

遊びに来てと言われても私は成人するまでは国から出られません。

お父様とお兄様も国内で覚えられることを今はしっかり身に付けてほしいと言われています。

お兄様が世界中を飛び回るので、私はお母様のお仕事を覚えてほしいそうです。将来、お兄様のお役にたてるように頑張ります。

よくわからない少女の言葉を気にするほど私は暇ではありません。


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