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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
15歳編

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第八十話 喧嘩

私のレトラ侯爵令嬢としての日常が帰ってきました。

平民向けの記事は貴族の間で広まってなくて良かったです。揶揄われると覚悟していたのに穏やかなお茶会で良かったです。

私は毎日、社交と外交官のお勉強です。

いつ黒髪の少女が行儀見習いとしてあらわれてもいいように、定期的に王宮にも顔をだしています。


最近は側妃様とも親しくなりました。時々治癒魔法と浄化魔法をかけるために訪問させていただいてます。


「リリア、いつもありがとう」

「お役に立てて光栄です。またいつでもお呼びください」


ニコラスを迎えに行って帰りましょう。


「リリア、珍しいところにいるな」


第二王子殿下に礼をします。離宮なので会っても仕方ありません。


「頭をあげろ」

「ごきげんよう。第二王子殿下」

「最近は派手に動いているな」


邪魔ばっかりしやがってってことですか?

気付かないふりをしましょう。


「ありがとうございます。」

「本気で兄上がふさわしいと思っているのか?」

「私はお父様の命に従うだけですわ」

「レトラ侯爵令嬢ではなくリリアに聞いている」


質問の意図がわかりません。


「私は王位争いなどやめてほしいです。優秀とうたわれる第二王子殿下が王太子殿下と手を取り、統治してくだされば臣下として」

「臣下としてじゃなくて、リリアに聞いている。リリアは俺の味方だろう?」

「私はオリビアの味方です。私は私情でレトラ侯爵家を振り回すことはいたしません。」

「本当に俺の手を取らないのか」


体がゾクゾクします。第二王子殿下に冷たい目で睨まれています。


「取りません。失礼します」


王宮の騎士団の訓練場に速足で目指します。

見つけたニコラスの背中に飛びつきます。怖かった。第二王子殿下にどうしてか・・・。


「リリア?」


なんで・・。体が震えます。


「具合悪いか?俺はこれで。リリア、どうした?、お前!?顔、真っ青、おい」


気付くと自室のベッドにいました。

第二王子殿下にお会いしたまでは覚えてます。その後は・・、


「リリア、大丈夫か!?」

「ニコラス、なんで?」

「突然倒れたから、」

「ごめんなさい。大丈夫です」

「俺、今度から近くで控えるよ」

「いりません。次期イラ侯爵はしっかり訓練しないといけません」

「おい。いいや。無理はするなよ。少し予定調整するか?」


最近、ニコラスが私の予定管理をしてるのはどういうことでしょう。

心配そうな顔のニコラスに笑いかけます。


「完全勝利のためにゆっくりしている暇はありません。私はオリビアのために負けるわけにはいけません」

「倒れてまですることか」

「え?」

「無理してまでやることじゃないだろ」

「ニコラス?」

「リリア、そこまで必死にならなくていい。」


なんでそんな真剣な顔してそんなこと言うんですか。

だめ。

ニコラスには口でかないません。肩に置かれたニコラスの手を振り払います。


「それは私の勝手です。もう国に帰ったんです。護衛もいりません。付き合うのが面倒なら放っておいてください」

「リリア!?」


ローブを持って部屋を飛び出しました。

今日の予定はありません。どうしよう。

市は駄目。馬に乗りましょう。このままニコラスといれば言いくるめられます。勝手に予定を調整されても困ります。

馬屋を目指します。


「お嬢様、お待ちください」

「ディーン、どうして」

「気にしないでください。病み上がりです。お部屋に戻ってください」

「外の空気を吸うだけです」

「駄目です。」

「大丈夫です」

「王宮で倒れたんです。」

「もう倒れません」

「お嬢様、今日は休まれてください。遠乗りなら後日行きましょう。坊ちゃんはどうしました?」


どうすれば良いでしょうか。ディーンの目を逸します。


「喧嘩したんですか?」

「意見の不一致です」

「二人共気が短いですから。今頃坊ちゃん落ち込んでますね」

「ありえません」

「あれでも繊細なんです。少しは気を遣ってあげてください」


ディーンはなにを言ってるんでしょうか…。


「信じてませんね。特別です。夜、ベッドに入って寝た振りをしていてください。二時間くらいしたら庭を見てみてください。そっとですよ」

「夜遅くに出歩くとお母様に怒られてしまいます」

「今夜だけは許してもらえるように俺が頼みますよ。ただし出ていいのは庭までです。」


私、そこまで興味ないんですが。

ディーンは何をやらせたいんですか…。


「約束ですよ。わかりましたか?」


断れない雰囲気なので大人しく従いましょう。


「わかりました」

私は仕方がないので馬屋で愛馬を愛でることにしました。

ディーンに抜け出さないか見張られてます。逃げないのに・・。



寝る時間なのでベッドに入りました。寝た振りをして二時間待つって難しいです。

セノンに二時間後にもし寝てたら起こしてとお願いしました。

セノンは時間もわかるんですよ!!賢い子です。


「リリア、おきて、リリア、お散歩」


やっぱり眠ってしまいました。


「ありがとう。静かにね」


セノンを抱いてそっと部屋を出ます。

庭を覗くとニコラスが剣の稽古をしてます。

こんな夜遅くに?あの人、何考えてるんですか?


「お嬢様、寝た振りをできましたか?」

「セノンに起こしてもらいました」


ディーンが楽しそうな顔から残念そうな顔に変わりました。


「どうしてこんな遅くに稽古してるんですか」

「坊ちゃん、落ち込んだり悩むと稽古に逃げるんです」


ニコラスの口癖って・・。


「落ち込む暇があるなら訓練するのって、時間を有意義に使えってことでは?」

「俺は坊ちゃんじゃないのでわかりません」

「まさか、このまま一晩?」

「この感じならやりますね。」

「訓練終わったら休むんですか?」

「いえ、休むずお嬢様の護衛につくかと」

「イラ侯爵に護衛はいりませんとお話しにいきます」

「無駄ですよ。坊ちゃんの婚約者を守れなければイラ家門の恥ですから。」

「婚姻したわけでもないのに、大袈裟すぎませんか?」

「うちにも色々あるんです」


イラ侯爵家のことは私が口を出すべきではありません。

でもディーンに呼ばれた意味はわかりました。仕方ありません。


「セノン、ディーンといてください。ディーン、剣を貸してください」

「は?」

「や」

「セノン、すぐ戻ってくるからここにいてね」


セノンを足元におろして、ディーンの剣を抜きます。

重い。私が使ってるのより大きいけど、構いません。


「お嬢様!!」


走って訓練しているニコラスに斬りかかります。


やっぱり、止められました。うそ!?まずいです。

剣を合わせただけで、吹き飛ぶってどういうこと!?

ディーンが受け止めてくれました。

これが剣の天才ですか・・?


「え?なんで、リリア!!」

「ディーン、ありがとうございます。」

「お嬢様、危ないので控えてください」


受け止めてくれたディーンに剣を返します。

ニコラスがお説教するときの顔になりました。あなたにお説教される気ありませんよ。


「リリア、何してるんだよ。突然斬りかかるな。危ないだろ」

「同じ言葉を返します。命に危険があるならディーンがなんとかします」

「お前・・。なんでこんな遅くに出歩いてるんだ」

「なんでこんな遅くに訓練しているんですか」

「俺の勝手だろ」

「なら私のことも咎められません。」


お互い未成年です。夜に出歩けない状況は同じです。

座ってセノンを膝にのせました


「なにしてるんだよ」

「関係ありません。」

「早く部屋に戻って寝ろよ。明日も予定あるだろう」

「そのままお返ししますわ」


ニコラスと睨み合います。私、折れませんよ。


「手がかかる。なんで喧嘩すんのに肝心なことは言わないんですか・・。心配だから休めってどうして言えないんですか。」


「別に心配なんてしてません。」

「坊ちゃんの訓練を止めるために、挑んでいって、吹き飛ばされたのに?」

「もっと訓練します。」

「坊ちゃんの訓練終わるまでそこで座ってるつもりでしょう?」

「違います。セノンとぼんやりするだけです」


「戻る」

「おやすみなさいませ」


立ち去るニコラスを見送ると怪訝な顔で見られてます。


「戻らないのか」

「もう少しここにいます」


「は?」

「一度、部屋に戻ってまた戻ってくるんでしょ?」

「・・・なんで」

「知ってます。倒れないと満足しないんでしょ」

「坊ちゃん、どうします?」

「もう終わりにする。信用しないなら剣を預ける」

「剣がなくても訓練はできます。逃避で訓練するなんて不謹慎です。浮かない顔はどうしてですか?」

「リリアにとって俺はなに?」


質問の意図がわかりません。


「幼馴染です」

「もし、リリアの信じる夢で俺が死ぬ運命ならどうする?」


何を言ってるんでしょう。冗談ではなさそう・・・。

そんなの考えるまでもありません。


「絶対に回避します。」

「オリビア嬢と俺のどちらかしか選べないなら?」

「二人が助かるように足掻きます。でもどうしても選ばないといけないならオリビアを助けてからニコラスの所にいきます」

「は?」

「最後まであきらめません。でもどうにもならなくてニコラスが私の手を離さないなら最期まで付き合います。」

「どういう意味?」

「そのままです。なんなんですか?そんな悲しい想像はやめましょう。アイ様のおっしゃるハッピーエンドを目指すのです。このことはいいです。私がやるべきことです。弱音も愚痴も聞き流してあげますから、さっさとその顔もとに戻してください。」

「リリアが俺を選んでくれれば俺の憂いは晴れるけど」


ニコラスの顔が明るくなりました。

自分の中で折り合いついたみたいですね。


「もう大丈夫ですね。寝ますよ。今度真夜中の訓練を見つけたら問答無用で睡眠の世界に誘います」

「結界はるから効かない」

「負けません」

「リリアが素直に可愛くおねだりしてくれればお願い聞くかもよ」

「バカなこと言ってないで寝ますよ。」


いつの間にかいつもの調子に戻ったニコラスの手を引いて家に戻ります。手のかかる人です。

寒いのか背中にくっついて笑ってるニコラスは気にしません。

今日は休みましょう。あんまりひどいならニコラスの部屋に鍵をかけてもらいましょう。


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