第七十九話 後始末3
私は村でいくつか神事を行いました。結局、黒髪の少女はいつの間にかいなくなってしまいました。
タイミングが悪いのか中々お話できません。
物資の支援は第二王子殿下からではなく王家からとわかっていただいてよかったです。
私たちは今日発つことにしました。
村人たちが見送りに集まってくれました。
「リリア様、また来てください」
「ニコラス様とお幸せに」
「ありがとな」
にこやかに手をふるニコラスに首を傾げます。
「ニコラス、結局王太子殿下の人気は出たんでしょうか・・」
「大丈夫だよ」
「リリア様、いつか王子様と一緒に来る?」
「ええ。王太子殿下もいつか来られると思います」
「優しい王太子様?」
「ええ。この国の王太子殿下であるギルバート様は優しくて頼りになる方です」
「リリア様、また来てね」
「最初の頃は悪かったな。」
「いえ、信じるものは人それぞれです。でも私達が信じる神を信仰する教会や神殿は王位争いには不干渉です。それだけ心にとめていただければ。皆様に神のご加護がありますように」
「リリア」
「間違えました。では私達はこれで失礼します。皆様の幸せをねがってますわ」
私達は馬で王都を目指すことにして駆けてたんです。
最初は普通に駆けてたんです。
今は愛馬に必死に駆けてもらってます。
「撒けないか。リリア、悪いな。結界はってここで待ってて。ディーン、リリアを頼む」
ニコラスが消えていきました。
「ディーン、私は大丈夫ですからニコラスのお手伝いを」
「お嬢様、坊ちゃんは俺より強いんで大丈夫ですよ。むしろ俺達がいたら邪魔になります。ここで待ちましょう」
ディーンが落ち着いてるんで大丈夫でしょう。
しばらくするとニコラスが帰ってきました。
「待たせたな。行くか」
「え?わかりました」
普段と変わりなく帰ってくるニコラスに戸惑います。
「お嬢様、坊ちゃんに任せれば大丈夫です。」
うん。これは深く聞いてはいけません。
その後は何事もなく帰ることができました。時々、ニコラスが短剣を投げていたのは見なかったことにします。
まずはイラ侯爵家でセノンを受け取り、レトラ侯爵邸に帰ります。
笑顔のお母様が迎えてくれます。
「リリア、ニコラス、お帰りなさい」
「ただいま帰りました。」
「リリア、やればできるじゃないの」
「なにをですか?」
お母様に渡される何枚かの紙を1枚1枚読みます。
民を励ます心優しい少女と第二王子殿下の心遣い、は黒髪少女と王家からの物資の支援のことを書いてます。
次は、王太子殿下に派遣された未成年魔導士。これは王太子殿下を侮辱してますね。
貴族のお遊びで村に行ったわけではありません。
確かに一部の村人達に最初の頃は色々やっかみを受けました。
気にしませんでしたが…。
次は必見!!幼き魔導士達の実力。
幼いってなんですか!?
家の修理や道路の補修など、魔法で修復した様子が書かれています。
次は魔導士の正体。
私とニコラスの家名や紹介文ですね。このあたりから文章が好戦的ではなくなりました。
これは必要なんでしょうか。私としては王太子殿下の紹介を書いてほしかったです。
次は魔導士の休日。
なんで、私とニコラスの様子が綴られてますの!?。
魔法の力は大人顔負け。でも普段は仲睦まじい恋人達って・・。
次は王太子御用達の魔道士の素顔。
リリア・レトラ侯爵令嬢とニコラス・イラ侯爵令息は幼馴染。信頼の現れで魔法の息は抜群。
二人の幼い頃からの夢の結婚が叶うのを見届けたいってどういうことですか!?
次は王太子殿下の魔導士は神事もお手の物。
神官顔負けの祝福の嵐。
それは書いて平気ですか?神殿批判になれば神官が派遣されなくなりますよ。
最後は魔道士へのインタビュー
優秀な魔導士が語るのは王太子殿下のことばかり。
王太子殿下のへのすばらしさが綴られてます。
インタビューを受けてませんよ!!まぁこの記事だけが許します。最後の一言が余計ですが・・。
隣で読んでるニコラスが笑ってます。
仲睦まじいレトラ侯爵令嬢とイラ侯爵令息の挙式は是非取材させていただきたいって最後の一言はなんですか。大衆向けの記事ですよね?
「抗議にいかないといけません」
「リリア、いいのよ。二人が仲がよいことが広まってよかったわ」
「お母様、これはさすがに」
「貴方たちのおかげで、巫女姫の予言の号外を見なくなったのよ。訳のわからない予言よりも現実の方が大事って気付いたのかしらね。お疲れ様。リリアにしては良い働きだったわ。もう少し盛大に仲の良さをアピールしてくれてもよかったけど」
「無理です。からかわれます。」
「事実なんだからいいじゃない。婚約者と仲が良いのは良いことよ。」
お母様に褒められても全然うれしくありません。
もう一人の被害者をじっと見ます。
「ニコラス・・・」
「お茶会に俺が参加するわけには行かないから。迎えに行ってやるから頑張れよ」
「ひどい。」
「リリアが望むならうちでお茶会主催する?ニコラスにも参加してもらって」
「いえ、一人で頑張ります。令嬢の戦いにニコラスを巻き込むわけにはいきません」
「そう?明後日は王家のお茶会に行ってきなさい。そろそろお勉強も再開しないとね」
このタイミングで王家のお茶会ですか・・・。
王位争い早く終わらないかな。王太子殿下、はやく勝利を決めてください。
そうすれば私は外交官のお勉強だけに集中できますのに。
この記事を書いた記者に出会うことがあれば一言文句を言わせていただきます。
私は隣で笑っているニコラスほどやさしさも強靭な心もありません。
平民向けの記事なので貴族の間で広まってないことを祈るばかりです。




