第七十八話 後始末2
私はニコラスと一緒に馬で駆けています。
ディーンは別行動です。
まずは現状を知るために一番大きい村に行きます。馬で半日かけたので着く頃には夕方でした。
テントを持参しているので宿の心配はいりません。
炊き出ししてます。
「みなさん、安心してください。第二王子殿下が支援してくださっています」
黒髪の少女がいます。
今なんて言いました?第二王子殿下の支援?その支援物資用意したの王家ですよ!!
手配したのオリビア達ですよ!!
今は気にしてる場合ではありません。
馬から降りて集まる方々の前に行き礼をします。
「お初にお目にかかります。魔導士として王太子殿下の命を受けて参りました。レトラ侯爵家リリア・レトラと申します。こちらはイラ侯爵家ニコラス・イラです。よろしくお願いします」
周りがざわめきます。視線も集まりました。
丁度いいので訂正しましょう。
「侯爵家!?」
「魔導士?」
「こちらの支援物資は王家より届けられましたが、それだけでは心苦しいと。王太子殿下に力を貸してほしいと頼まれ参りました。」
王太子殿下の勅命書を見せます。
「お嬢ちゃん、魔導士って本当かい」
「子供が?」
「お遊びで来る場所じゃないぜ」
不満の声はわかります。
「上級魔導士です。よろしくお願いします」
広範囲の弱い治癒魔法を使いましょう。
「皆様に癒しの力が降り注ぎますように」
「これは!!」
「では、ご挨拶はこれで。」
礼をして去っていきます。村の中をニコラスと一緒に歩きます。
どの家もボロボロです。
片っ端から直していくしかありません。ニコラスと一緒に家を周ります。
邪魔なものは魔法で除去して、洗浄魔法をかけていきます。
申しわけありませんが、整理は兵達とやってください。
それを繰り返していきます。
「おお!!家が」
「ありがとうございます」
「王太子殿下の命ですので。ここから先は兵達とお願いします。」
黒い髪の少女に睨まれています。
「貴方、なんなの?」
「ごきげんよう。私も貴方とゆっくりお話したいんですが時間がありません。家の修復が先です。失礼します」
少女は放っておいて、村の家を周ります。
「リリア、そろそろ休まないか?」
「この村は今日中に片付けたいです」
「明日もある。倒れたらなんにもならない。今日は休もう」
「お嬢様、坊ちゃんの言う通りです。体力ないんですから無理はしないでください。テント、張ってありますから」
ディーンはいつの間に合流したんでしょうか。
「いつの間に」
「リリア、行くよ。」
ニコラスに手を取られて、テントで休むことにしました。
食事をして寝袋に入ります。
「なぁ、リリア、もし負けたらどうするの?」
「斬首される前にオリビアと王太子殿下を連れて亡命します。私達優勢ですよね?負けそうなんですか」
「いや、やっぱり本気なんだよな。」
「どうしました?」
「なんでもない。一緒に寝る?」
「今日は暖かいので結構です。」
「そうか、おやすみ」
頭に降りてくるニコラスの手が気持ち良くてそのまま眠りにつきました。
「こんなに一緒にいるのにな。リリアの考えてることがわかんなくなる。リリアはさオリビア嬢や殿下のために必死だよ。どうして俺と一緒にいるために足掻いてくれないんだろうな」
「弱気なんて珍しいですね。お嬢様は素直じゃありません。でも態度はわかりやすいでしょ?坊ちゃんの手に安心して眠るし、時々昔のような無邪気な面も見せますよ」
「なんでだろうな」
「大人になっているんでしょうか・・。いつも坊ちゃんを追いかけてたお嬢様が恋しいですか?」
「将来はイラ侯爵になってリリアは俺の隣にいると思ってた。俺の言葉に疑いもなく純粋に頷くのが可愛かったんだよな。まさかリリアに拒絶される日がくるなんて思わなかった」
「お嬢様が倒れて抜け殻でしたね。起きたら嫌われたって落ち込んで・・。坊ちゃんも子供だと感心しました」
「おもしろがるな。」
「俺は坊ちゃんが単身で旅立つとは思いませんでした。護衛の俺をお嬢様につけて。」
「拒絶されるし、他のやつと結婚するって言われて頭に血がのぼった。俺もまだ子供だったんだよ。」
「坊ちゃん短気ですからね。」
「否定はしない。いつになったら捕まえられるんだろうな」
「そんなことより俺は男として全く意識されていないことを気にした方がいいと思います。手を出すのかと思えば首しめられてるし、俺の期待を返してください」
「リリアの映像をとるのやめろよ。嫌がってるだろ」
「奥様に言ってください。俺は命令には逆らえません。お嬢様は気付いてないから平気です」
「母上もな・・。まぁセノンを預かってもらえるならいいか」
「お嬢様、セノンにとられてますからね。坊ちゃんも休んでください。」
家の修理は、ほぼおえました。
道も整えました。王太子殿下の名前を広めながら復興作業もやっと終わりが見えてきました。最近、ニコラスの距離が近いのはなんででしょうか。
最初は驚きましたがもう慣れました。
膝の上で寝ているニコラスは気にせず本を読んでます。
本当はそろそろ王都に帰る予定でした。ですが、この村でいくつか神事を頼まれました。
ここまで復興が早くすむとは思わず、神殿に申請をしてなかったみたいです。辺境の村には上位神官や巫女がいないことが多く、大きな神殿に申請して派遣してもらうんです。
試しにできないかと村人に聞かれたので引き受けることにしました。
神事は三日後なので、それまでしばらくお休みです。
今日は暖かくて気持ちが良いです。
昨日までの慌ただしさが嘘のようです。
「リリア」
寝言みたいです。今回はニコラスにばっかり魔法を使わせて無理させました。
私が招いたことなのに、申しわけないです。
ゆっくり休んでほしいです。頭をゆっくり撫でます。これされると力が抜けるんですよ。
「なんですか?」
「俺を選んで」
どんな夢ですか・・。捨てるのはニコラスなのに。ひどい人です。
「選べたらなにか変わるのかな。・・・でも少しでも長く一緒にいたい」
この無防備な寝顔が私だけの物になればいいのに。
こんなに絆されて、私はニコラスの手を離せるんでしょうか。もしオリビア達と生きれる未来を掴んでその後は・・・。この人はいなくなる。嫌だな・・。
「好きか・・」
結局、未来は変わらないのかな。夢の私もニコラスが好きだったから。
初恋は敵わないもの。これは心にしっかり鍵をかけないといけません。想うほど別れがつらくなります。侯爵令嬢など政略の駒ですもの。
「リリア、どうした!?」
いつの間にか起きたニコラスに詰め寄られます。
ニコラスの肩に頭を預けます。
「やっぱり未来は変わらないかもしれません」
「どうしたんだよ。泣くなよ。」
当たり前のように抱きしめてくれる腕に甘えます。
捨てられるのは悲しい。でも幸せになってほしい。たとえ隣にいるのが私ではなくても・・・。




