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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
15歳編

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第七十七話 後始末1

私は家に帰るとお母様から招待状をいくつか渡されました。

わかってますよ。ちゃんとお茶会に行ってきます。オリビア主催のお茶会が混ざっていたのは、お母様の優しさでしょうか・・。

まだ他のお客様はいないんですね。オリビアが笑顔で迎えてくれました。


「リリア、お帰り」

「ただいま帰りました。」

「止まない雨は解決した?」

「はい。ただ巫女姫は第二王子殿下を応援するという話を聞きました」

「これね」


机に出された記事を見ます。


予言の巫女姫の敵現れる!!


予言の巫女姫は第二王子の即位を予言した。ただ神殿の幼き巫女は真向否定。

神の怒りはない。止まない雨はないと祝福の光を降り注がせた。信ずるべきは神託、予言の巫女姫の予言は戯言と。どちらの巫女姫が本物か神のみぞ知る。


なんですか・・・。幼き巫女ってひどい。でも日付を見るとこの巫女は私のことですよね・・。

あの時はヴェール被ってなかったからですか?私の身長が低いから?

私、もうすぐ16歳になるのに・・。複雑ですが大事なのはそこではありません。


「神殿は不干渉と伝えたんですが・・。」

「まぁいいわ。止まない雨はなかったけど、大豪雨が襲ってきたわ。あれを神の怒りと捉え、巫女姫の予言は本物と騒ぎだしたバカな貴族がいるの」

「止まない雨は降りません。予言外れてますよね?」

「都合の悪いことは忘れるのよ。ただリリアのおかげで大豪雨で川の氾濫した村への支援ができたわ」

「川?」

「ええ。川沿いの村がいくつか被害にあったわ」


やっぱり私のせいでしょうか・・。

水の女神の神具に治癒魔法をかけたからでしょうか…。


「その村の支援に行ってきます」

「帰って来たばかりよね?」


オリビアに心配そうな顔で見られます。

詳しく聞かれたらまずいので笑顔でごまかします。


「大丈夫です。行ってきます。」

「やっぱり。言うと思ったわ。さすがに今は私も殿下も王宮から離れられない。第二王子殿下が指揮をとりにいきたいとおっしゃってるの・・」


さすが、人気取りに余念がないですね。

王太子よりも第二王子のほうが身軽ですから。


「王太子殿下の名で命じていただければ私が行きます。でも適任はニコラスですね。私、土属性の魔法は使えません」

「人手は送ってあるわ。ただ魔導士はなかなか」

「魔導士は希少ですからね。私とニコラスで行ってきます。第二王子殿下に人気取りはさせません」

「リリアがこんなに必死に王位争いに興味をしめすなんて思わなかった」

「オリビアが望むならいくらでも手伝います。両侯爵の許可だけ取ってもらえればすぐに旅立ちます」

「社交よりも有意義?」

「向き不向きはあります・・・。」

「仕方ないわね。今日中に手続きはしてあげるけど、無理はしないでね」


苦笑するオリビアと別れます。残念ながらゆっくりしている場合ではありません。

オリビアから受け取った地図を持ってニコラスを迎えに行きます。

あとで被災の報告書をうちの届けてくれるそうです。

ニコラスが手合わせしてるので終わるのを見守りましょう。相変わらず強いですね。

終わりましたね。

騎士達の間をぬけてニコラスの腕を取ります。


「リリア、お茶会はどうした?」

「お疲れ様です。予定変更です。出かけます。一緒にきてください。今回はイラ様としてお願いします」

「え?」

「ニコラスを返していただいてもいいですか?」

「どうぞ。リリア嬢。またね」


礼をしてニコラスの腕を引っ張り馬車を目指します。


「リリア、どうした、急に」

「お出かけです。この地図の村を周りたいんです。豪雨の被害にあわれたそうです。王太子殿下の人気取りに行きましょう!!」

「許可は」

「手回しはオリビアがしてくれます。リリア・レトラとニコラス・イラへのお仕事です。公に出るのは久々ですね。」

「魔導士としての派遣か」

「はい。私がお手伝いするのでニコラスの腕の見せ所です。」

「どうした?」


そんな訝し気に見ないでください。王太子殿下のためですよ。別に豪雨は私がやらかしたかもしれないから後始末に行かなきゃとか思ってませんよ。にっこり微笑みます。


「ニコラス、頼りにしてます。頑張ってくださいね」


「調子がいいな。わかったよ。護衛はつけるけど俺の傍を離れるなよ」

「はい。リリアは決してお傍を離れません。」

「お前・・・、ああ。約束だ」


ニコラスには快く協力していただかないといけません。私よりもニコラスの力が重宝されますから。説得できてよかったです。ぼんやりしてるけど大丈夫でしょうか・・。駄目なら治癒魔法をかけましょう。

馬車を降りて出立の準備をします。今回は馬で行くのでセノンはお留守番です。

お母様に旅立つことを話したらじっと見られました。

見透かされそうで怖いので準備を理由に自室に逃げました。


「りりあ、セノンも」

「ごめんね。馬で駆けるから、セノンは怪我したら大変だからお留守番しててくれる?」

「や」


困りました。馬車ならともかく馬は・・。


「リリア、発てるか?」

「ニコラス、セノンが」

「セノン、母上のとこに行くか?」

「ママ?」

「ああ。俺達が帰ってくるまで。うちならミルクもある」

「リリア、迎えくる?」

「ええ。帰ったらすぐに行くわ」

「いく」

「ニコラス、いいのかな?」

「うちは今更、犬が増えても問題ない。預けてくるから支度しとけ。俺が帰るまでは絶対に家から出るなよ」

「勝手に飛び出したりしません。よろしくお願いします。いってらっしゃい」


ニコラスはセノンを連れて出て行きました。

私は準備を進めましょう。

魔法薬と念の為の巫女服とローブ、非常食を持てば大丈夫です。

久々の遠乗りは楽しみです。

村ではしっかり働きますよ。でも馬で駆けるのは楽しいんです。不謹慎かもしれませんが多少の息抜きは許してくださいませ。


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