第七十四話 水の女神の村
神々はそれぞれ神具をお持ちになっています。
聖なる女神と闇の女神の双子の女神がこの国を作りました。
このニ神に仕える女神達はそれぞれ神具を与えられています。
神具は女神に仕える一族により守られています。
私達が目指していたのは水の女神の加護を受ける村です。
お母様の話によるとこの村の村長一族が水の女神の壺を守っているそうです。
村につき、村長の家を目指しました。
お母様からの手紙を渡すとすぐに面会してもらえることになりました。
「突然の訪問を受け入れてくださりありがとうございます。巫女のリリと申します。」
「わざわざこのような所まで、水の女神の壺をご覧になりたいと」
「はい。」
「儂が案内したいのですが、お恥ずかしながら足を怪我しまして」
足に包帯が巻かれています。骨折でしょうか。
「よろしければ治癒魔法をかけさせてください」
「巫女様、お気持ちだけで。儂の一族は水属性魔法以外を受け入れることはないのじゃ」
申し訳なさそうに断られました。
治癒魔法は聖属性魔法。
水魔法しか使わないってすごい覚悟です。魔導士は様々な属性を極めます。
便利ですもの。それに属性に寄ってできることに違いがあります。
聖属性魔法は癒しや浄化はできますが、戦いには向きません。
「失礼しました。恐れながらその足ですと、壺に神気を注ぐのはどなたが?」
村長が目を逸しました。恐ろしく嫌な予感がします。
神具には定期的に魔力、ここでは神気と言われてます。を注がなければいけないそうです。
「それが、恥ずかしながら後継が育っておらんのじゃ」
ん?足を怪我してから放ったらかしってこと?
本には神気を注ぎ続けなければならないと書かれてました。
注がないとどうなるかは書いてません。
神気を注がなければ、壊れるんでしょうか?
水の女神の壺はすべての水を司ります。
それが壊れるいうことは、止まない雨?いえ水が襲ってくるかもしれません。
予言の巫女様、教えていただいたことは感謝します。王家争い以前に放っておいたら大変なことがおきました。
村長、どういうこと?後継がいない。今まで村長が一人で神気を注いでいたってことですよね・・。
後継問題はあとです。詳しい話は後で聞きましょう。
「私でよければ、神気を注ぎます。場所を教えていだければ、私達で向かいます」
「巫女様、ありがたい申し出じゃが聖なる部屋には儂の一族がいないと出入りできんのじゃ。あやつに頼むか。礼儀知らずじゃが・・」
そんなことより危機感を持ってほしいです。誰でもいいから部屋に案内してほしいです。
息子の礼儀知らず以前に貴方の危機感について問いただしたいですが、我慢です。
場合によっては上皇様に相談しましょう。ヴェールで表情が隠せるってありがたいです。巫女服で訪問してよかったです。
「構いませんわ。お願い致します」
しばらくすると不機嫌そうな青年が現れました。
「親父、突然なんだよ」
「巫女様を聖なる間に案内せよ。お前のかわりに神気を注いでくださるそうじゃ」
「俺は役立たずだからな。ついてこいよ」
「言葉に気をつけるのじゃ」
こんなところで喧嘩しないでください。
「村長様、お気になさらず。お手数をおかけして申し訳ありませんがよろしくお願いします」
頭を下げると、村長に慌てて頭をあげてくださいと言われました。
礼をして村長の御子息についていくことにしました。
祠の裏に手をあてると扉がありました。隠し扉になってるんですね。魔法の仕掛けはなさそうです。扉をあけると階段がありました。階段を降りるとまた扉があります。村長の息子が手を当てると扉が開きました。ここは封印されているんですね。
後について中に入ると体がゾクッと感じた事のない寒気が走りました。態度に出さないように平静を装います。
「この壺は魔力を吸い取ると謂われてる。長時間この部屋にいると発狂する」
それって・・。いえ気にしてはいけません。
青い壺がありますが大きいヒビがいくつも入ってます・・。
村長、これ放置してはいけない案件ですよ!!でも隠さず中に入れてくれたことはまだ情状酌量の余地があります。
本で読んだ通りに壺を抱えて水の魔力を紡ぎます。全然ヒビが直りません。
「巫女様、できんの?」
後から聞こえるバカにするような声は気にしません。
集中して、水、水、ちょっとだけ小さいヒビが消えました!!
これはきっと頑張ればなんとかなります。集中、集中。
回復薬を飲もうかな。上手に魔力に変換できずに壺に吸われてる気がします。
壺様、魔力を吸い取るのなら自分で修復していただけるとありがたいんですが・・。
体がだるくなってきました。
背中が暖かい。力が抜けるのを我慢します。
私の手の上にニコラスの手が重ねられました。壺はそんなに重たくありませんよ。でも倒れないように支えてくれるのはありがたいです。
ニコラスが水の魔力を送ってくれてます。属性に変化させた魔力を送るなんて高度なことができるなんて凄いです。ありがたくニコラスの魔力を使って壺の修復をします。
ヒビがどんどん消えていきます。
私が頑張っても、あれだけだったのに・・。
修復が終わった壺をもとの位置に置きました。
ニコラスの優秀さに心が折れそうです。私に魔力を送らずにニコラスが壺の修復をしたほうが早かった気がします。きっとニコラスは私の顔をたててくれたんでしょう。
「戻ろうか。」
ニコラスに肩を押されて部屋を出ることにしました。これ以上魔力を吸われるのも不服ですもの。
階段をあがって、祠に祈りを捧げます。
「やっぱり上級魔法が使えるのかよ・・」
後ろから不服そうな声が聞こえます。私は聖属性魔法しか上級魔法は使えません。ニコラスは風と水なら上級魔法を使えます。
「属性にもよりますが」
「才能の違いか・・。」
聞き流せない言葉を聞きました。振り返ると暗い顔で見られてます。
「才能ですか?」
「俺は下級魔法しか使えない。中級は手が届かない。才能あるやつはなんでも簡単にできていいよな。」
「簡単?才能?」
「ああ」
下級魔法を使えれば、基本の魔力操作はできます。中級は応用です。下級との違いは集中力と魔力の消費量が激しいくらいです。あと詠唱が長くなります。アレンジして短縮や無詠唱も使い込んでいけばできますが。努力でどうにでもなるレベルです。
「初級魔法は簡単に使えましたか?」
「下級までは苦労しなかった。その後は駄目。」
恐ろしい言葉を聞きました。
この人なんていいました?苦労しないで魔法が使えた?
「私に才能があると?簡単になんでもできるですって?」
「ああ」
村長の息子を睨みつけます。ヴェール被ってるから顔はバレませんよね。巫女としてはいけません。でもおさえられません。怒りで体が震えます。
血筋でいえば彼の方が私より適性もあります。苦労なく下級魔法が使えるなんてかなりの才能がありますよ。
私みたいな平凡な魔導士は魔力を感じるだけでも多大な努力がいるんです。
「貴方は努力したんですか?倒れるまでお祈りしました?水を感じるために池に飛び込みましたか?嵐にうたれました?必死にお勉強しました?風を感じるためにずっとお外にいました?」
「リリ、お前、そんなことしたの…」
後ろの呆れる声も視線も気にしません。
「もう諦めなさいって大好きなお父様に言われた気持ちはわかりますか?私は誰よりも敬愛するお兄様にも止められましたのよ。風の魔力を探るために嵐の中、決死の覚悟でお外に出ていたら馬鹿なことはやめなさいと言われた私の悔しさはわかりますか!?。誰も信じてくれなくて、それでも諦めきれなくて頑張ったんです。先生にも見放されたけど…。才能ない、できそこないって言われた虚しさわかります?優秀なお兄様と同じ血が嘆かわしいって。ニコラスが説得してくれなかったら家を出るつもりでしたのよ。貴方は・・・」
「最初の頃、魔法を覚えること物凄く反対されてたよな。そんなことやってたの初耳なんだけど…。」
「坊ちゃん、落ち込んでるお嬢様を慰めるの必死でしたね。」
「黙れ。色々言われてたんだな。やっぱり斬っておくべきだった」
後ろの二人がうるさいです。
「私は昔も今も必死に努力してますのよ。毎日のお祈りもかかしたことはありませんし、神殿通いもしています。魔法の訓練だってしてます。適性ないですって!?下級魔法が簡単に使えたなんてズルイです。悔しいですがそんなに才能に溢れた人間が才能に恵まれてないなんて戯言もいい加減になさいませ。魔力があって、環境にも家族にも恵まれてるのに、魔法が使えないのは貴方の努力不足です」
「リリ、落ち着いて。」
村長の息子に睨まれます。
「お前に何がわかるんだよ」
「貴方の気持ちなんて興味ありません。ただ貴方は神具を守る家に産まれたんでしょう?それならその役目を果たす義務があるのではありませんか?」
「俺は、親父に、もういいって」
諦められたということでしょうか…。
色々思うことはあります。でも失望されて、くじけそうになる気持ちもわかります。
やるべきことを投げ出しているのはどうかと思いますが。
「やる気があるなら手伝います。もし後継の貴方が拒否するなら私が責任を持ってお預かりします。修復できない場所に預けておくことはできません。」
「修復できるのお前じゃないだろ」
ニコラスの魔力を私が使ったのを見えたなら、悔しいけど才能あります。
稀に人の魔力を目視できる方がいます。私は気配はわかっても目視はできません。
「うっ・・。小さい修復なら私の魔力でも、できますもの。いずれ大きい傷も修復できるように水魔法を極めます。それまではニコラスに力を借ります。ニコラスがだめなら神官様を頼ります。でも長い歴史を自分の代で終わりにするなんて一族の恥です。一生負け犬のまま終わればいいです。私はどんな手段を使ってでも壺の修復を身につけます」
「リリ、落ち着いて。お前、水魔法苦手だろうが。聖属性強すぎて、他の魔法が使いづらいって言われただろ」
私、聖属性魔法は得意で簡単に使えます。ただ他の魔法は身につけるまで大変なんです。特化した属性があると他の属性の魔法が使いづらいらしいです。聖属性魔法は修行をつめば、特上クラスも夢ではないそうです。ただ特上クラスは色々と面倒な制約やら義務が課せられますので、手を出す気はありません。巨大な力なので王家か神殿所属の義務もつきます。私はお抱え魔導士なんて絶対に嫌です。
「やります。禊してきます。」
ニコラスに腕を掴まれました。
「リリ、待って。お前、本当にいいの?リリは言い出したら絶対にやるよ。壺を持ち帰るよ。リリが望むなら俺がいつでも修復してやるけどさ。」
やっぱりニコラスは修復できるみたいです。私に気をつかって魔力を与えてくれたようです。魔導士としてはいたたまれない気遣いです。
「俺だってわかってる。でも」
「神具を守るための村。神具がなくなればどうなるんだろうな。補助金はなくなるし今のような生活は送れなくなる。」
悔しいです。ニコラスを睨みます。やる気のないこの方には任せておけません。決めたら行動するだけです。
「離してください。禊してきます。」
「リリ、今日は駄目だ。魔力を使いすぎだ。一日待とう。大事なことだから。明日になっても結論が、かわらないなら手伝うよ。村長にも話さないとだろ?。あと禊しても水の適性は上がらないから」
「そんな・・・。」
「禊は聖属性だろ?神事の前にするだろう」
「そんな。私の努力は・・・」
力が抜けてきました。痛いのに頑張って滝に打たれたのに・・。
「リリ!?今日は戻ろうか」
倒れそうな体をニコラスに抱き上げられました。
「大丈夫です。」
「リリが休まないと俺も休めないから。」
確かにほとんどニコラスが修復したようなものです。
今日は大人しくしましょう。
降ろしてくれないニコラスに抱かれたまま宿に戻ることにしました。
宿に戻って私の膝の上で寝てるニコラスは気にしません。
水属性を高める方法はないかな・・。持って来た魔導書を読みかえしても残念ながら書いてありませんでした。




