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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
14歳編

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第六十七話  作戦会議

陛下の生誕祭は無事に終わりました。


アイ様は私の部屋で小説を書いてます。

アイ様に昨日の生誕祭の話をすると笑ってます。王太子殿下は少女と親しく過ごす様子はありませんでした。オリビアへの態度も変わりません。


「リリア、目をつけられたかもよ?」

「どういうことですか?」


「陛下の生誕祭は攻略相手だけでなく、ほかの男たちの好感度もあがるのよ。みずほらしい服装でもあふれ出る魅力に男共は魅了されるのよ」

「確かにうっとり見ていた方はいましたが」

「しかも、そこできつい美人な令嬢に糾弾されて、涙することで庇護欲をそそるのよ」

「ニコラス、話が難しすぎてよくわかりません」

「リリアが無理やり連行したけど仔犬の喧嘩にしか見えなかったもんな。しかもわざわざドレスに着替えさせるって・・。リリアにひどいことされたって言っても誰も信じなかったよ。王太子殿下は気がふれてると思い兵に捕えさせて医務官にみせていたよ。茫然とみてるやつらがほとんどだったよな」


「リリア、ある意味邪魔できてる。おもしろい、」


アイ様はずっと笑ってます。


「誰と結ばれたいかを教えてもらえませんでした。」

「第二王子殿下も攻略対象になるけど、条件がそろってないのよね・・・。」

「条件ですか?」

「これは前に話したゲームとは別のお話よ。第二王子の婚約者になったリリアが邪魔するのよ」

「オリビアは?」

「これは王位争いの話だから。オリビアは幸せにはならないわ。結局王妃になるのは主人公の少女だから」

「なんで私が婚約者?」

「製作者がリリアを気に入ってたのよ。王位争いの話だとニコラス様が相手だと全然登場しないから。それに一番都合がよかったのよ。家の事情で派閥が別れた幼馴染のニコラス様や友人のオリビアに厳しくできないリリアを第二王子は信用できない。そこに主人公はつけ入るの。リリアの断罪はニコラス様との不貞で斬首、リリアの裏切りを知った第二王子による暗殺、リリアが裏切ってない時は第二王子を庇って死亡かな。少女の選択でリリアの動きも変わるの。もちろんどの話も第二王子が王位争いに勝つからオリビアと第一王子は斬首されてるわ。」


さらっと恐ろしいことを言ってません?

やっぱり王位争いに負ければ斬首ですか・・。


「リリアの外見だと悪役が似合わないから。第二王子に冷たくされて泣いてるリリアを見つけてニコラス様が抱きしめるシーンは胸が打たれた。このニコラス様はずっとリリアが好きだったって描写があるのよね。リリアもあの頃に戻りたいってニコラス様の胸で泣くの。これを見られて斬首。」


婚約者の不貞で斬首って過激過ぎません?婚約破棄して修道院に送られるのが妥当では?



「リリアが裏切るのは第二王子が王位を取ったら第一王子派を処刑するって言われて、やめてと泣き縋るリリアを第二王子は冷たく見て部屋を出るの。部屋を出た少女と第二王子とのやり取りを見て、そこでリリアはこの人を王にしてはいけないと準備を進めるの。見つかって第二王子に暗殺されるんだけど。

やはりお前はそっち側か。いつか両殿下が手を取り合えると信じてました。でも最期は殿下と添い遂げる覚悟はありましたって微笑んで息を引き取るのよね。」


アイ様、うっとりされてますがそのリリアは絶対に私ではありません。私は絶対に文句言います。


「最後はね、リリアは第二王子に冷たくされても健気に尽くすの。ただリリアへの冷遇にニコラス様が第二王子に斬りかかるときにリリアが飛び出して刺されるの。私の殿下に無礼はだめって。そこで第二王子はリリアが自分のために動いてたことに気付いて、息を引き取るのを少女と一緒に看取るの。殿下の国、見たかったなって遺言を聞いて第二王子が立派な王を目指す決意をするの。このルートの第二王子は名君となるのよ」


この、リリアは誰ですか?

ないです。私は絶対に無理です。虐げられても信じるなんてありえません。

私は自分の話ではなく、少女の話が詳しく聞きたいんですが…。



「妄言女の話なんて信じられなかったけど、俺、どれもやるだろうな」

「ニコラス?」

「泣いてたら慰めるし、冷遇されたら相手に報復するし、リリアを斬るなんてへまはしないけど。ばれないように暗殺するよな・・・」

「怖いこと言わないでください。でも少女の相手が第二王子だと私が婚約者にならないとだめなんですよね。そのお話だと裏切るのが濃厚です。私、オリビアを斬首なんて許せませんもの」

「王位争いの結末は?」

「ルートによって変わるのよ」

「王太子殿下が王位につくのは?」

「第一王子は人気だからルートがたくさんあるの。好感度が高くなると気づくと王位についてるもの」

「どうしましょう。少女は私の言葉を聞いてくださる感じはありませんでした」

「暗殺?」

「駄目ですよ。殺す理由がありません。ニコラス、物騒ですよ。アイ様、次は少女はどこに登場しますか」

「王子狙いなら近々王宮に行儀見習いとして現れるわ。ただあれを狙うなら他の男の攻略にいくはず・・。でも陛下の生誕祭で接触に失敗しているなら可能性は低いわ。」

「アイ様?」

「たぶん今は王子と王妃達と仲良くならないように気をつければいいと思う」

「わかりました。ありがとうございます。そういえば、ニコラスは少女と面識ありましたの?」

「ない」


即答・・。


「ニコラス様、昔、暴漢から女の子を助けたことはありませんか?」

「暴漢はよく倒すけど助けた記憶はない」

「市の外れあたりで」

「市の外れ、まてよ。昔、リリアと市ではぐれて、子供が囲まれてるって言うから慌てて駆けつけて暴漢を蹴り倒して子供を見たら髪の色が違ったからさっさと立ち去った記憶がある。」

「ニコラス、迷子は保護しないと」

「バカ、同じく迷子になっていたやつが言うか。」


その時に親方に出会いましたのよね。


「一応、出会いは成功してるのね。ここで手を引いて詰め所まで連れて行くのと約束はなかったみたいだけど。この世界、よくわからない」

「アイ様、第二王子殿下はオリビアが好きなんですが?」

「そんな描写はなかったけど、」

「昔、よくオリビアと会わせろってお手紙が凄かったんですが」

「うーん。リリアと第二王子の手紙のやり取りはあるけど」

「リリア、それはレトラ侯爵家を自分の派閥にしたかったんだと思うけど。」

「オリビアのこと優しく見てましたよ。よく見惚れてましたし」

「第二王子殿下としてはリリア達のどちらかの家を取り込めれば良かったんだろうな。第二王子殿下とオリビアのことは忘れろ。・・・リリアのそっち系の考えはマジであてにならないから」


憐れみの視線を受けながら物凄く失礼なことを言われています。


「全然名案が浮かびません」

「まだまだ最後までは先が長いから大丈夫よ。」


私にはアイ様にミルクプリンをお渡しして、今後の協力をお願いすることしかできませんでした。

気は進みませんが王宮に頻繁に顔を出した方がいいですね。

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