第六十三話 隣国7
私達がサロンで待っていると第二王子殿下が来られました。
第一王子殿下はきちんと裁くと約束していただきました。
国王陛下から謝罪があるそうですがお兄様と王太子殿下にお任せしました。
オリビアとニコラスが出ていきました。護衛はディーンがいるので問題ありません。私は一人で用意していただいたケーキを食べてます。セノンは膝の上で寝ています。
疲れました。セノンを撫でてると扉が開きました。
予想外です。第二王子殿下が最初に戻ってくるとは思いませんでした。
「お疲れ様でした」
「悪いな」
「いえ、第二王子殿下のせいではありませんのでお気になさらず。謝罪は不要です。断罪さえしっかりしていただければ興味がありませんから」
「相変わらずだな。リリア、なんでセシルから第二王子に戻ってんの」
「色々思うところがありました」
「厳しいな。」
苦笑しても、かえませんよ。儀式で退場しなかったことは呆れてます。ケーキを用意してもらったので、苦言はおさえますわ。
美味しい。
「そんなことはどうでもいいです。第二王子殿下、聞きたいことがありますの」
「おい。まぁいい。なに?」
「第二王子殿下はどうして忠誠を捧げられたんですか」
「は?」
聞かれる内容が予想外ですか?。
私は第一王子殿下のことなんてどうでもいいんです。
「王家ではなくセシル様に忠誠を捧げた方もいるでしょう。なんでですか?」
「それは、俺に聞かれても。なんで知りたいの?」
「役にたちません。もういいですわ」
「ひどいな。リリア、一人で考える癖をなおせ。」
「ちゃんと相談してますよ」
「断片的にだろ。なんで忠誠が欲しいの?」
「忠誠というか、私個人に雇われてくれる護衛が欲しいんです」
「個人?リリアの周りには護衛はいるだろ」
「あの方々はニコラスのおかげです。私個人の護衛ではありません」
「なんでほしいんだ?」
「私、弱いんです。自分で頑張っても限界があります。難しいなら人に頼るのもありかと」
「騎士、一人やろうか?」
「いけません。」
「バカだな。俺個人としてお前の力になりたいんだよ」
「失礼ですわ。第二王子殿下の心は国民に捧げるべきです」
「俺がむかないこと知ってるんだろ」
この人も全然頼りになりません。
一緒に村に行ったときから変わりません。この国は大丈夫なんでしょうか。でも陛下があれなら仕方ありませんか。優秀な臣下さえいればなんとかなりますよね。きっと。
「知りません。」
「リリア、守ってやるよ。」
「いりません」
「俺にはお前も大事」
心構えは素晴らしいです。力があるかはわかりませんが。
「隣国の民にまで籠を与えるなんて、さすがですわ」
「本気?」
「はい」
「どうしたら伝わらんだろうな。」
「籠はもし亡命したら一人の国民としてありがたくいただきます。」
「そうじゃなくて、陛下達には手を出させないかうちの国にこないか。」
クレア様のお世話係ですよね。
「私に全面戦争を挑むと言うことでよろしいんですね」
「オリビア!?」
「その前に俺が斬る」
「ニコラス!?」
「私は何をすればいいんだ」
「王太子殿下は二人を止めてください。いつからいたんですか!?」
「お前の力になりたいあたりから」
「声をかけてください。」
「邪魔したらいけないと気をつかったんだが。二人を止められなくて」
「なんの邪魔ですか。オリビア、ニコラス落ち着いて。友好を深めにきたんです。第二王子殿下に無礼です。用事は終わったんですか?」
「ああ。嫌な予感がして急いで戻ってきてみれば」
ニコラスが不機嫌です。
「なんで怒ってますの?ニコラス、護衛なら口出し不要です」
「婚約者が口説かれて黙ってられるか」
「口説かれてません。勘違いです。この方はクレア様一筋です。誘われたのは、クレア様のお世話係としてですよ。」
「リリア・・・」
ディーン、王太子殿下、憐れみの視線を向けるのはやめてください。
「ねぇ、リリア、もし女として口説かれたらどうする?」
「軽蔑します。妻を大事にしない方は大嫌いです」
「そうよね。この国に残る気なんてないでしょ?」
「はい。私はオリビアのために、王位争いに勝ちます。」
「頼もしいわ。」
オリビアが落ち着いてよかったです。
「婚約者?」
「申し遅れました。リリア・レトラの婚約者のニコラス・イラと申します」
「ニコラス、護衛なんだから立場をわきまえてください。」
「ニコラスって、あの」
「あのってなんですか?」
「リリアが一度捨てられたやつだろ?」
「第二王子殿下どうして知ってるんですか?私、話してないですが」
「俺は捨ててません。捨てる気もありません。」
「ニコラス、護衛クビにしますよ。黙ってください」
「残念ながら雇い主はリリアじゃない」
「イラ侯爵の騎士はそればかりです。次はスペ公爵家にお願いしますわ。」
「リリア!!」
クレア様が飛び込んできました。私の前に挨拶すべき方かたくさんいますけど。
「クレア様、ごきげんよう」
「リリアの家に行ったら王宮にいるって言われたの」
「先触れだしてから動いてください」
「今日はお休みって聞いたから一日リリアと過ごそうと思って。でも昨日、伝えるの忘れて」
「前日ではなく、もう少し余裕を持って教えてください」
「リリア、午後から買い物に行くの楽しみにしていたのにな」
「ニコラス、黙りなさい」
「お買い物!?」
クレア様の顔が輝きました。
「残念ながら中止です」
「どうして」
「クレア様、それは私が説明します。実は…」
オリビアが陛下とのやり取りを説明してますが、嫌な予感しかしません。
「陛下まで!?ありえない。許さないわ」
怖い笑みを浮かべてますが気にするのはやめましょう。オリビアとクレア様が仲良くなっていただいてよかったです。現実逃避も時に必要ですわ。
明日はお会いできるかわかりません。大事なことを確認しないといけません。
「第二王子殿下、実はうちの国でも王位争いがありまして、ギルバート王太子殿下にお味方いただけますか?」
「リリアが味方しているうちはな」
「それもどうかと思いますが。ありがとうございます。王太子殿下ここまで来たかいがありましたね」
「リリア、俺達の御祝いに来たんだよな?」
「御祝いにきましたよ。でもオリビア達がこの国に来ないならお父様に反対されてまで来る気はありませんでした」
「お前」
不満そうな顔で見られてますね。
「当然です。レトラ侯爵の命令は絶対です。普段は絶対に逆らいません」
「なんでそんなにつれないんだよ」
「レトラ侯爵令嬢として当然です。誰かが甘やかしたクレア様とは違って挟持も責任もありますのよ。優しくしてほしいなら、うちの王太子殿下とニコラスに頼んでください。私よりは優しいですよ」
「リリア、意味が違う」
面倒です。もう任せましょう。私は疲れました。
「ニコラス、今だけ発言を許します。お友達になってさしあげたら」
「不肖な私なのでよろしければ。友情の証に一戦いかがですか?」
「ご武運を」
「やらないから。」
「クレア様を不幸にしたら許しません。お二人の幸せをお祈りしますわ」
慌ただしい外交が無事に終わって良かったです。
ケーキも食べられましたし、セノンに牛のミルクも飲ませてあげられました。
エルとエリも一緒に帰ることになりました。
また賑やかになりますね。




