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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
10歳編

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第五話 趣味

私は毎日、外交官の勉強を頑張っています。

昨日は異国の食文化を習いました。なんと異国には家庭で作れるお菓子もたくさんあります。調べてみると私でも作れそうなお菓子がありました。

私は朝から厨房に来ています。この時間が一番料理人達の邪魔にならない時間帯なのです。今日はプリンを作ってみようと思います。

本を見ながら、材料を混ぜていきます。ここまでは簡単です。

問題はこのカラメルソース。

濃い茶色になるまで火にかけるって本当になるんでしょうか。恐る恐る火にかけてかき混ぜていると色が変わりました。

不思議です。あとは容器にうつして冷やすだけです。

不思議なお菓子です。美味しかったらお父様達にも召し上がっていただきましょう。



侯爵令嬢が料理をするのは意外ですか?

私、イラ侯爵夫人に必要なことと言われ家事は教わりました。

必死に覚えた理由は別にありますが・・。

騎士は辺境への赴任もあり、慣れない土地の料理で体を壊させるのは妻の恥だそうです。

ニコラスにも家事全般を覚えることは絶賛されて頑張りました。あの頃はニコラスに言われたことは疑うことなく素直に従ってました。

でも将来亡命するなら覚えておかないといけないことなので、無駄ではなかったです。

オリビアは何もできないので、お世話をしてあげることもできます。


午前の授業が終わったので、厨房の奥にある蔵に来てます。

もう冷えてるかな。この蔵には氷の魔石があるので寒いんです。

蔵は食材の保管のためです。私のプリンありました。

スプーンは持ってきました。プリンをスプーンでつつくとプルンとします。

おもしろいです。初めての感覚で楽しいです。せっかくなのでいただきましょう。

甘い。口にいれた感じが不思議です。噛むと柔らかい。これはお父様達にもお渡しできます。

成功ですわ。これは売れると思いますが氷の魔石は高いので市民向けではありません。


「リリア、なにしてるんだ!?」


顔を上げると眉間に皺をよせたニコラスがいますね。どうしたんでしょうか。

そっか、ニコラスも食べたいんですね。仕方がないから一つ渡すと睨まれてますが怒ってます?。意味のわからないニコラスに首を傾げます。

プリンを受け取らないけどいらないのでしょうか。肩に上着がかけられます。はい?なぜか抱き上げられます。プリンが落ちます。慌ててニコラスに差し出したプリンを胸元にしっかり抱え込みます。落とさなかったのは奇跡です。


「ニコラス、なにをするんですか!?」


ニコラスは私の言葉なんて聞こえないようです。

蔵から連れ出され、自室に運ばれて布団をかけられてベッドに寝かされてるのはどんな状況ですか!?

プリンは落とさないように死守しました。


「なんで蔵にいるんだよ。こんなに体を冷やして、お前、熱で死にかけたの忘れたの!?」

「もう治りましたし元気です」

「病み上がりだろうが。なんで蔵にいるんだよ。」

「朝、プリンを作ったからできてるかなって」

「侍女にとりに行かせろ。せめて蔵から出て食べろよ。」

「そんなに怒らないでよ。ほら一つあげますから。楽しくて美味しいですよ。眉間の皺はやめてください。せっかくのプリンが台無しです」


今度は受け取りました。紅茶についているスプーンでつついて食べはじめました。

私も続きを堪能しましょう。暖かい紅茶とプリンの組み合わせが格別です。このプリンもっと改良したらもっと美味しくなるかな・・・。

ニコラスも頬を染めるほどプリンの美味しさに感動しています。

わかります。自作ながら私も感動しました。

新作が成功すると嬉しいですが、今回は大成功なので格別です。

プリンを食べ終わったニコラスに頬を触られます。手が暖かいです。


「リリア、寒くない?」

「はい。大丈夫です。」

「先生には伝えるから今日は休め」

「え?なんでですか?」

「まだ体が冷たいから湯あみして休め。また熱を出したら大変だろ?」

「大丈夫です。授業受けます」

「リリアは病み上がりだ。お前の大好きな両親が心配して倒れるよ。リリア、わかったよな?」


ニコラスのこの顔は逆らってはいけません。小言もお説教も勘弁してほしいです。きっと返答を間違えるとお説教がはじまります。言い聞かせるように見つめる顔のときは危ないです。


「わかりました」

「またな」


頷いた私を見て心底安心したような顔で見つめられて戸惑います。授業を受けるため去って行くニコラスを見送りました。

またお父様達に心配をかけるわけにはいきません。

午後の授業は部屋で異国語の勉強に変更です。ぼんやりしてると侍女が湯あみの準備をしてくれていました。

湯あみをして体が温まったら眠くなってしまったので、そのままお昼寝しました。

晩餐の時には寒気も消えていつも通りです。お父様達にプリンをお出ししたら大絶賛されました。

ニコラスの命で私は蔵にはいれてもらえないので用意をしたのは侍女ですが・・。

なんでニコラスがうちで使用人に命令できるのか謎です。

まぁいいですわ。


次の日会ったニコラスに大丈夫そうだなとまた安心した笑みをむけられ言葉がでませんでした。

縁を切ると決めたのに屈託ない笑顔を向けられると気持ちが揺らぎそうになります。

戸惑う自分に気合いを入れて、私の髪をぐしゃぐしゃにするニコラスの手を振り払うことにしました。


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