第五十二話 作戦会議
私は愛しい少女の一人のアイ様を侍女としてお招きすることになりました。
まさか愛しい少女が二人いるなんて予想外です。
私が使用人を拾ってくるのはよくあるのでお母様も快く迎え入れてくれました。ニコラスは不服そうです。
「ニコラス、なんでそんなに嫌がるんですか?」
「怪しいだろう。えたいがしれないだろ」
「快く協力してくださるありがたい方ですよ」
「リリア、何があってもそのペンダントは外すなよ」
「わかりました。でもこれと腕輪の所為でご令嬢達の視線が痛いんです。生暖かい視線がつらいです。ニコラス様に愛されてますねって勘違いですわ」
「勘違いじゃないから。そこは当然ですって笑い返せばいい」
「そんなこと言えばいじめられます。」
「俺は自慢しまくりだけど。」
「バカなんですか?ニコラスの強靭な心が羨ましい。アイ様に意地悪は駄目ですよ」
「相談するときは俺がいるところにして。二人っきりは絶対になるなよ」
「ニコラス、本当にアイ様のことなんとも思わないですか?」
「ああ。どう見てもリリアのほうが可愛いだろ?」
「医務官呼びます?アイ様は可愛らしいですよ。」
「いらない。セノンのことも話すなよ。信用するな。敵対派閥の令嬢から情報を掴むつもりで関われ」
「警戒しすぎでは」
「リリアが警戒しないから尚更俺がする。労ってくれてもいいけど」
「セノン、ニコラス、どう思う?別になんとも。そう・・。」
アイ様はうちの侍女長に指導を受けてます。お茶の時間にアイ様を貸してもらえるように頼んであります。
今日はゼリーを用意しました。
お茶を用意して待ってると来ましたわ。
「アイ様、お疲れ様です。どうぞ」
「ありがとう。いただきます。これは!?懐かしい。まさか食べられるなんて・・・」
ゼリーを気に入っていただけてよかったです。
「っでなんだっけ?」
「おい、」
アイ様を睨んでるニコラスにため息をつくしかありません。夢の私も冷たくされましたのよね。
「ニコラス、私、女性に礼儀のない方嫌いです。視界から消えてほしいくらいに」
「リリア、その視線やめて。ごめん。悪かった。そんな目どこで覚えたんだよ。悪かった」
「次はありません。アイ様、ニコラスがすみません。ニコラス?」
謝りなさいと睨みつけます。
「わるかった」
まぁいいでしょう。アイ様が怯えている様子がないことに安心します。
「大丈夫。リリアがいればニコラス様は怖くないから。
まずは王太子ルートね。
王太子は優秀な弟の第二王子とオリビアに囲まれて、心の奥に劣等感を持ってるの。
あるとき、市で男に囲まれて困っている少女を助けるの。
そこで少女がお礼に市を案内するの。王太子は自由奔放で素直な少女に惹かれていくの。
最初は警戒していた王太子も徐々に心を許した少女に心の闇を打ち明けるの。
ここで、王太子の心にうまく寄り添えればお城に招待されるの。そこからいろんなイベントがあるんだけど、そこでオリビアが登場するの。少女にひどい言葉を浴びせたり、恥をかかせるの。少女は笑顔でたえるんだけど、それが王太子殿下の庇護欲をそそらせるの。王太子殿下は少女を庇って反論するとオリビアは冷笑を浮かべて去っていくの。ダンスパーティに少女が手作りのドレスで現れるの。それにオリビアはワインをかけてバカにするの。激高した王太子殿下がオリビアを斬りつける。そこで少女が庇うんだけどオリビアは自分の非を認めない。こんな王太子妃は不要と斬首刑。少女はオリビアの死にショックで寝込むの。そんな少女を王太子が慰めるの。リリア、大丈夫?」
「おい、リリア?」
「許せません。」
「リリア、オリビア嬢は生きてるから」
肩を叩くニコラスの声に深呼吸します。
「私、オリビアの侍女になります」
「は?」
「侍女になっていべんとというものを邪魔します。それにオリビアのかわりに私が注意します。あとは王宮にあがる前に少女の礼儀作法を教え込めばいいのかな。ニコラス、城の衛兵に伝手はありますか?」
「あるけど」
「兵にその少女が現れたら私に会いにくるように命じてください。平民なら私の命令に逆らえません。私がオリビアの目に敵うような礼儀作法を指導します」
権力を使えばいいのです。それにニコラスは騎士への顔が広いんです。他の家に乗り込んで訓練しているだけありますね…。
「本気なんだよな。なぁ、少女と王太子殿下がいつ出会うかわからないか?」
「14歳の誕生日に王宮に行くイベントがあるの。出会いはいつかわからない」
「もうすでに出会っているということか」
「殿下にそんな様子はありませんでしたが・・」
ニコラスの視線が痛いけど、なんででしょうか。
「なぁその少女の王太子ルートの結末はどうなるんだ?」
「王妃、監禁、国外逃亡」
「監禁って?」
「ゲームには好感度があるの。好感度を上げ過ぎた時に選択を間違えるとおこるの。少女の心が自分にないと思った王太子はどうしても少女を手に入れたい。呼び出した彼女に薬を飲ませて眠っている間に塔に監禁するの。そこは王族しか入れない。彼女はその塔の中で王太子に愛されながら一生をおえるの。」
「国外逃亡は?」
「弟の第二王子との王位争いに敗れた王太子が少女を連れて国外逃亡。」
少女って王妃以外の可能性もあるんですね。監禁って・・。でも自分で殿下を誘惑したのなら自業自得です。同情しません。ニコラスが真剣に聞いてることが不思議です。
「王位争いに勝つのは必須か。リリア、絶対に王太子殿下から渡された飲み物や食べ物は口にいれるな」
「え?なんでですか?」
「危険だから」
「ありえません。昔、殿下からいただいた飴は美味しかったですよ」
「それは運が良かっただけ。頼むから口に入れるな。あと一人で近づくな」
「ニコラス、どうしたの?」
「いいから。約束して」
どうしてそんなに真剣に見られてるんでしょうか・・。約束って無理ですよ。
「王宮ではそんなことは許されません」
「王宮以外」
「善処します。少女が見つからないとなにもできません。アイ様、少女に出会える場所はご存知ありませんか?」
「この時期なら国王の誕生日かな。」
「そこで私が少女を教育すればいいんですね。私、オリビアに頼んできます。アイ様、ありがとうございました。私、出かけてきます。失礼します」
オリビアにお願いしないといけません。執事に先触れをお願いしないと。
「リリア、待て。侍女はだめだ」
「なんでですか?」
「侯爵令嬢を侍女にするってありえないだろ。それに侍女だと少女に命令できない。城の衛兵には手回ししてやるから、侍女は駄目だ」
「ニコラス、本当に?」
「ああ。」
「オリビアのために教育がおわるまでは少女と会わせるわけにはいきません」
「リリア、オリビアは王太子殿下が国外逃亡しても斬首されるわ」
「え?」
「他のルートもあるのよ。でもそれは追々話すね。全部語れば一晩あっても足りない」
「そんなにあるんですか・・・。」
アイ様の声に途方に暮れたくなりました。呆然としている場合ではありません。
今はできることをするべきです。私、王位争いなんて興味がありませんがそんなことを言っていられなくなりました。
「リリア、協力するから心配すんな。大丈夫だ」
突然、やる気を出したニコラスに違和感が。
「ニコラス、危険です」
「尚更だ。」
「そうよ。ちゃんとハッピーエンドを目指そう。私、リリアはお気に入りだから協力するわ」
確かに私の手にはおえません。とりあえずオリビアを守るために強くならないといけません。オリビアを斬らせないように。
「降りるときは教えてください。よろしくお願いします。ニコラス、この後は剣を教えてください」
「珍しいな。いいよ」
アイ様は侍女長に返して私はニコラスに剣の特訓をお願いしました。
これからはオリビアのために剣の特訓を頑張ります。
後は王太子殿下に勝ってもらわないといけません。
勝つためには後盾。王太子殿下が他国の方と親交を深めれば・・・。
後は民への人気ですかね。両殿下は人気がありますけど・・。考えることはたくさんあります。
不安ですがアイ様という心強い味方を手に入れました。頑張りましょう。




