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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
14歳編

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第五十話 市 探し人

今日は市に来ております。

ニコラスが市に行くので、一緒に来ています。

セノンも一緒です。


布屋を巡ってます。


「魔封じの布がほしい」

「あるよ。どれがいい?」


店主が何種類か布をさしました。今まで布屋なんて足を止めなかったから新鮮です。


「リリ、セノンのローブ用の布を選んで」

「セノンに?」

「ああ」

「セノン、どれがいい?わかんないの、私に任せるの?わかったわ。ラス、可愛いのと目立たないの、どっち?」

「連れ歩くからあまり目立たないのがいい」


目立たない色。この濃紺かな。


「これ3枚ください」


ニコラスが交渉して値切ってます。終わりましたね。


「リリ、別にいいけど、3枚もなにに使うの?」

「ローブを作ります。セノン、楽しみにしててね!!」


くうんと鳴くセノンが可愛い。

「ラス、後はどこに行きますか?」

「いや、用は終わった。リリの行きたいところでいいよ」

「スラムに行きます」


パンの詰め合わせを買ってスラムを目指します。


「今日は二人で来たんか」

「こんにちは。親方、14歳、黒目、黒髪、同年代男性の貴族と親しい平民の少女の情報がはいれば教えてください」

「わかった。調べておいてやる」


「ラス、今日はリリの話ないよ」

「え?」


なんて言いました?

ニコラスの傍にいる少年の肩を叩きます。


「私の話って?」

「ラスに訓練のお礼。ラスはリリの話が一番好きって。だから教えてあげるの」

「情報はそんなに簡単に伝えてはいけません。私を売らないでください!!」


ローブを引かれます。


「リリ、遊んで」

「これみんなで食べてね」

「ありがとう」


パンを渡したら配りに去っていきましたわ。

ニコラスが親方から紙を受け取ってますがなにか探ってたんでしょうか。


「リリ、行こうか」

「わかりました」


ニコラスとスラムを出て、露店を見てまわります。

あれ、たべたい。

なに?ニコラスに腕引っ張られて、お店の陰に隠れてます。


「リリ、ローブ脱いで。今日はリリアとニコラスのお忍び。できるか?」

「え?事情があるんですね。わかりました」

「セノンは荷物で隠すから、セノン、市を出るまで俺の腕で我慢してな」


ニコラスがセノンを買った布で巻いていますが・・。セノンが鳴かないから大丈夫かな。ローブを畳むとニコラスに取り上げられました。

差しだされる手を重ねて市をみます。食べ物は駄目です。レトラ侯爵令嬢は市の食べ物は食べません。

ニコラスが花を買いましたね。


「リリア、これ」


花ですか。食べものがほしい。違います。

嬉しそうに笑顔を作ります。


「ありがとうございます。綺麗です」

「喜んでもらえて嬉しいよ」


ニコラスが私を見ながら警戒してます。


「珍しい者がいるな」


後から聞き覚えのある声に振り返ると、会いたくない方でした。

ローブを着てますが、これは第二王子殿下です。


「礼はいらない。婚約おめでとう」

「ありがとうございます。」

「私もリリアに申し込みたかったんだが先を越されたよ」


第二王子殿下との婚約は勘弁してほしいです。というかオリビアはどうしましたの!?


「やっと口説き落としました」

「リリア、このままでいいのか?」

「どういうことですか?」

「オリビア」


オリビアは王太子殿下との婚約を快く了承しました。

まだ王太子殿下は愛しい少女を見つけていないから安心です。それにオリビアのために王位争いをおこした第二王子殿下にオリビアは任せられません。


「オリビア様が了承していますから。私はオリビア様の幸せを祈るだけです」

「そうか。リリアはうちの派閥にくると思っていたが残念だ」

「私はお父様の指示に従います」

「お前ならオリビアのために説得するかと」

「レトラ侯爵の命には背けません。」

「私はリリア個人でも受け入れるよ。よく考えろ」

「考えても答えは変わりません。まさかこのような場所でお会いするとは思いませんでした」

「探し人がいてな。異国料理の好きなローブを着た少女を探している。」


顔に出してはいけません。探るような目で見られてますが、社交用の顔を崩してはいけません。


「お知り合いの方ですか?」

「親交を深めたくてな。リリア達はここによく来るのか?」

「俺はよく来ますよ。ただ殿下の探し人は知りません。もし見つけることができれば、言付けましょうか?」

「いや、私が会いたいからいい。すごい荷物だな」

「リリアが俺の訓練着を縫ってくれるというので。」

「リリアがか?意外だな」

「どんなものでもリリアが作ってくれるならありがたいです」

「とんでもない物ができそうだな」

「楽しみです。俺達はそろそろ失礼させていただきます」

「ああ。また」

「失礼します」


去っていく第二王子殿下を見守ります。


「リリア、帰ろう。家でゆっくりしようか」

「はい」


そのまま待たせてある馬車に乗り込みます。


「ニコラス、第二王子殿下が探していたのって」

「リリアだよな。」

「私だと気づいては」

「わからない。当分あの市に行くのは控えよう。嫌な予感がする」

「わかりました。兄弟喧嘩はやめていただきたいです。材料全然買えませんでした」

「当分は厨房の材料だな。どうしてもなら俺が買ってくるよ」

「私の至福の時間が」

「今度の休みは上皇様のところに行こう。俺、居場所わかるから。リリア、自己回復魔法を覚えてくれないか」

「忘れてましたわ。ただ先に結界を極めたいです」

「両方同時にすればいい」

「私はニコラスほど器用ではありません。」

「俺は裁縫できないからリリアの方が器用だろ」

「オリビアを連れて逃げたい」

「オリビア嬢は一緒に逃げてくれないだろう。好戦的だよな。ノリノリで第二王子殿下派閥の令嬢と戦ってるだろ?」

「ええ。敵ではなくてよかったと思います」


令嬢達にも両殿下の対立の余波がきています。

サン公爵令嬢で王太子殿下婚約者のオリビアも巻き込まれています。私は見守るしかできません。

家についたので、お裁縫を始めます。まずはセノン用のローブを作りましょう。


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