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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
14歳編

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第四十九話 婚約

家に帰るとお母様とミリアお姉様が迎えてくれました。お兄様とお父様は外出されてます。


「おかえり。楽しかった?」

「はい。遅くなってすみません」

「いいのよ。それでうまくいったの?」

「これでいいでしょうか?」


お母様もあの映像を見たのでしょうか。恥ずかしい。

ニコラスが魔石に手をあててました。

「わかりました」

「本当?俺と婚約してくれる?」

「お父様に従います」


これはなんですの!?

映像が浮かんでます。いつの間に撮ったんでしょうか。


「お疲れ様。後は私が旦那様を説得するわ」

「お願いします」



ニコラスとお母様の笑顔で話す様子に寒気がしました。

唯一混ざっていないお姉様の腕に抱きつきます。


「お姉様!!」

「リリア、おめでとう」


綺麗な笑顔に見惚れそうになりました。そんな場合ではありません。


「何がどうなってますの!?」

「色々事情があるのよ。でもニコラスのこと嫌じゃなんでしょ」

「う・・・。」

「素直じゃないわ。ノエル様が荒れるかしら。ノエル様は私が説得するから安心して」


味方がいません。答えにくい質問です。

お姉さまの子供に言い聞かせるような様子にさらにいたたまれずに、足元に寄ってきたセノンを抱き上げます。


「セノン、私の味方はセノンしかいません。冷静になったら流されました。セノン、ひどいよ。なんですか?そんな興味ないって。セノンにまで見捨てられたら、そんなことよりごはん。待っててくれましたの?ありがとう。ご飯にしましょう」


つぶらな瞳で見つめられ、くうんと鳴くセノンを抱きかかえて食事にいくことにしました。先ほどからお母様と盛り上がってるニコラスは知りません。

私は現実逃避しながらセノンと二人で食事を楽しみました。


セノンを見ながらクレア様の手紙を思い出しました。

手紙には結婚式の招待状を送ると綴られていましたが、まだ届いていません。とうとうご成婚ですか。クレア様がしっかりするといいですね。


***


翌朝、朝食の席に珍しくお父様とお兄様がいました。

お兄様がいるのは特に珍しいです。


「おはようございます。」

「リリア、おはよう。食事が終わったら執務室においで。話がある」

「わかりました。お兄様、今日も帰りは遅いんですか?」

「いや、今日は家にいるよ」

「休憩時間に遊んでくれますか!?」

「ああ。おいで。」

「お勉強頑張ります」

「リリア、食事をしなさい」

「ごめんなさい。お母様。いただきます」



久々のお兄様との時間に興奮したためお母様に怒られました。

食事をおえてお父様の執務室に行くと、お母様にお姉様、お兄様とニコラスがいました。

ニコラスの隣が空いていたので座ります。

お父様の眉間に皺が寄り、お兄様が真剣な顔をしています。ここにセノンを連れてきていません。セノンの可愛さならお父様の眉間の皺をすぐに消してくれるのに残念です。


「リリア、婚約は私の命に従うというのは本当かい?」


お父様の言葉にニコラスを見ると笑顔をむけられました。そういえば忘れてましたわ。

了承しましたし、証拠映像もあります。


「はい。お父様の命に従います」

「旦那様」


お母様が眉間に皺のあるお父様を静かに見つめてます。静かな目をするお母様には絶対に逆らってはいけません。


「父としては認めたくないが、レトラ侯爵としてはありがたい。リリア、ニコラスと婚約だ。ただどちらの家に入るかはリリアの成人の時に決める。」

「旦那様、レトラ侯爵としてお願いします」


悔しそうなお顔がお母様の咎める言葉に真剣な顔に変わりました。


「リリア、一度婚約を結べば破棄は許さん。わかっているな?」

「はい。お父様、異存はありませんが、早急すぎませんか?」

「もともとイラ侯爵からニコラスとの婚約の書類は預かっていた。あとはうちがサインをするだけだ」

「リリア、王位争いが起ってるのは知っているわね。最近、第二王子殿下が勢力的に動き出したわ。」

「第二王子殿下の派閥から私に縁談の打診ですか」

「ええ。リリアは上皇様の覚えもめでたく隣国の王太子夫妻とも親交がある。」

「取り込まないために早急な婚約が必要だったのですか。」

「ああ。ただ婚約しても強引に婚姻をすすめようとする貴族もいるから気をつけなさい。一人で出歩くのは禁止だ」

「わかりました。イラ侯爵夫妻へのご挨拶はいつ伺いましょう」

「今日の午後に行ってきなさい。手土産は用意しなくていいからちゃんとした支度で行きなさい」

「はい。」

「話はそれだけだ」

「失礼します」


王位争いがそんなに切迫した状況とは知りませんでした。私の利用価値は想像以上に高かったようです。

第二王子殿下はまだオリビアに御執心なんでしょうか。

もしかして、この婚約はニコラスの意思ではなく政略でしょうか。

部屋を出て隣にいるニコラスの顔を見ます。


「ニコラス、この婚約ってイラ侯爵の命ですか?」

「は?いや、俺の意思だよ」

「本当に」

「父上達が望んでないわけではない」

「婚約の話をしたのはこの状況だからですか?」

「違う。リリアこれ以上考えるのやめて、そのわかりかけた顔してる時って絶対違ってるから。俺はずっと婚約しようって言ってたよな。帰ってきてから二回目だよな」

「二回目?」

「再会した日に言った。」


再会した日・・。そんなことを言われたような。


「俺の意思。昨日の言葉に嘘はない。お前が好きだから婚約を願った。わかった?」

「必死ですね。だってニコラス、婚約したけど、喜んでないでしょ?」

「婚約は嬉しいよ。でも通過点。リリアに信じてもらって幸せにしないとだからこんなところで満足してられない。」

「ニコラス、意地になってません?」

「なってない。相変わらずぶっ飛んだ思考回路だよな」

「失礼ですね。どんな顔をしてイラ侯爵家にご挨拶に行けばいいんでしょう・・・・」

「普通でいいよ。父上も母上もリリアのこと気に入ってるし。」

「やることが多すぎて頭が痛くなってきました」

「俺と二人で国外逃亡する?」

「イラ侯爵嫡男の自覚を持ってください」

「弟が二人いるから平気だよ。リリアが成人して侯爵夫人になりたいなら手に入れるよ」

「ニコラスは私の事は気にせずなりたいものになればいいんです」

「リリアの夫」

「バカなんですか」

「男はバカなんだよ。好きな女のためならなんでもできる」

「怖い」


笑顔のニコラスの言葉に寒気がしました。ニコラスな手を握られました。


「寝るまで傍にいようか?」

「その怖いではありません。私は誠実で優しくて人の言葉を聞いてくれる人が好きなんです。お兄様のような」


いつの間にかセノンが足元にいました。ニコラスの手を振り解いてセノンを抱き上げます。

王位争いやめてくれませんかね。二人で話し合って決めてほしいですが、そう簡単なものではないんですうよね。



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