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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
14歳編

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第四十七話 主人公の少女

私はローブを着てニコラスと一緒に王都の外れの村に来ています。

ニコラスの少女と会う条件としてペンダントを貰いました。

絶対に外してはいけないと約束させられました。


小さい家の前でとまります。

ここに迷わず来れるのはやっぱり通ってたんでしょうか。気にしてはいけません。

ローブのフードを脱いでノックをすると少女がでてきます。


「あなたは!?」


驚いた顔をする少女に礼をします。


「初めまして。リリア・レトラと申します。」

「なんで」

「おい、リリアに変な事したらわかってんだろうな」

「ひっ」


顔をあげると、少女の顔が真っ青でした。


「大丈夫ですか?お話したいんですが、具合が悪いなら治癒魔法をかけましょうか?」

「いらない」


ニコラスに聞いてません。少女が首を横に振ります。

いらないんですね。確かに、初対面の私の魔法は信用できませんよね。

バスケットを持ち上げます。


「気分がよければお茶をしませんか?プリンとケーキを持って参りました。お茶もあります」

「プリン!?」

「お庭をおかりしてもいいかしら?」

「中にどうぞ」


少女に案内されて家にはいります。

椅子に座りますが、ニコラスは私の後ろに立ってます。


「ニコラス、座りませんか?ニコラスの分もありますよ」

「俺はここで。今日は護衛だから」

「いりません。座ってお茶しましょう。」


ニコラスの顔を見て無駄だとわかりました。

護衛したいなら放っておきましょう。

持参のカップに冷たいお茶をいれて、お菓子も用意します。


「お名前をお伺いしてもよろしいですか?」


正面に座る少女の顔が青いのはなんでしょうか。視線を辿って、後ろを振り向くとニコラスが睨んでます。


「ニコラス、その怖い顔をやめてください。女性にむける顔ではありません。隣に座ってください。心配ならこの家全体に結界を貼ります」

「俺が警戒してるのはそっちでは」


動かないニコラスをじっと見つめます。


「怒りますよ。明日はニコラスの分のおやつを作ってあげません。セノンも抱かせてあげません。明日から休憩時間は私がセノンと二人で過ごしますよ。可愛いセノンと会わせてあげません」

「わかった。座る。これでいいか?」

「顔が怖いです」


座ったニコラスの頬を引っ張ります。


「元からだ」

「侯爵家嫡男なんだから社交用の顔をしてください。その顔は女性にむけるものではありません」

「わかったよ」


苦笑したニコラスの顔を見て、まぁよいでしょう。


「ごめんなさい。ニコラスが怖かったら私が怒りますから安心してください。女性に手をあげることはありませんわ」

「嘘よ!?」

「嘘とは?」

「この人、」

「おい」


少女が怯えてます。

ニコラスが笑ってます。まさか・・・。


「ニコラス、まさかですか婚姻前の女性に強引に手を出したりなんてことは」

「しない。俺、こんなやつに興味わかない。騎士道精神に反することはしない」

「なんでこんなに怯えてるんですか!?」

「さぁ。知らない。男が苦手なんじゃないか?」

「この方で会ってるんですよね」

「ああ」

「二人でお話させてもらうのは、うん、駄目ですね。あの、プリン食べませんか?」


なんですかこの雰囲気は。また顔が強張ったニコラスの口にプリンをいれます。

不服そうに飲み込んだのでまた口にスプーンを運びます。


「ニコラス、プリン、美味しいでしょ?いつもみたいに笑ってください。貴方もどうぞ。毒味がいりますか?」


首を横に振った少女がプリンを口にいれました。何で、泣きだしますの!?

泣きながらプリンを食べる少女にどうしていいかわかりません。ご家族の分もと多めに持って来てよかったです。少女の前に3個ほどプリンを並べます。


「よければどうぞ」

「ありがとう」


もしかしてこれはプリンに感動してるんでしょうか!?

一心不乱にプリンを食べる少女を見ながら、プリンができた時を思い出します。


「ニコラス、覚えてます?はじめてプリンを食べた時」

「え、ああ」

「感動しましたよね。」

「俺はリリアが目覚めたこと以上に感動することはないと思う」


いつもの顔に戻りました。


「大げさです。やっといつもの顔に戻りました。そっちの顔の方が好きですわ」

「え?」

「最近は刺激不足なのかしら。どんなお菓子を作っても昔ほど感動してくれませんね。カイロス様を餌付けしようかしら」

「うちの弟の胃袋は掴むなよ」

「お兄様と好みは同じかしら?」


いつの間にか少女がプリンを食べ終わってました。


「ごちそうさまでした」

「気に入ってもらって光栄ですわ。そのケーキもどうぞ。」

「貴方も違う世界から来たの?」

「違う世界ですか?」


ニコラスの手を掴んでにっこり笑いかけます。余計な口出ししないでくださいと圧力をかけます。ぼんやりしているから大丈夫そうですね。


「ここはゲームの世界なの。乙女ゲームってわかる?」

「わかりません。教えてください」

「主人公の少女が男を攻略していく遊び」

「攻略?」

「自分に恋させて両思いになるの。」


お姉様の言ってたことでしょうか。


「素敵な殿方をはべらかせて優越感にひたりたいというものですか?」

「そんな感じ。その両思いになるためのやりとりを楽しむのもあるけど」


これは私には難しいお話です。オリビアやクレア様の得意分野ですわ。


「あの、その主人公の少女が誰か教えてくれませんか?もちろん言い値は払いますわ」

「それを知ってどうするの?」

「私の探している方かはわかりませんが、一人の殿方に絞っていただけないかお願いをしにいきます」

「え?」

「難しいなら、結ばれたい殿方を全員教えていただきたい」

「何するの?」

「その殿方の婚約者と国外逃亡します。」

「どうして?」

「結ばれた二人は邪魔な婚約者を断罪するでしょう?断罪されるなら、邪魔にならない国外で幸せを探します」

「貴方はリリアなのよね?」

「はい。リリアです」

「婚約者は」

「いません」

「ニコラス様は?」

「幼馴染です。」

「やっぱり違うのよ。登場人物は同じなのに」

「少女を教えてください。」

「少女は二人いるの。一人は私なんだけど」

「誰を選びますか?」

「ニコラス様って言ったらどうする?」

「どうもしません。むしろ好都合です。絶対に邪魔はしません。もう一人の少女の被害に会う令嬢を保護したら逃亡しますので断罪も暗殺もやめていただけませんか。」

「おい」

「ニコラス、私の護衛なら口出し無用の他言無用です。ニコラスでいいんですか?」

「嘘。冗談よ。私はもう何かする気はないわ」

「あの、そのゲームというものの小説を書いてたりしませんか?」

「なんで知ってるの?」

「私、夢の中で平民の少女が王妃になるという小説を途中まで読みまして、その小説と同じようなことが現実で起こったんです。オリビアは王太子殿下に斬りつけられて斬首されました」

「一緒ね。まだ書きかけだけど」

「リリアの最後を教えていただけませんか」

「やめろ。聞くな」

「ニコラス、うるさいです。ニコラスは気にしないでください。」

「いくつかあるんだけど。リリアの最後はニコラス様と少女を祝福して他国に嫁ぐか少女の殺害を企てて斬首、オリビアの無実を証明しようと調べている間に殺されるかな。リリアって可愛いから人気があったのよ。最後のルートだけはニコラス様はリリアの味方なのよね。リリアの亡骸を抱いて泣く姿がファンの心を鷲掴みにしたわ」


ファン?

私の話に知りたい情報はありませんでした。


「レトラ公爵家はどうなりますの?」

「そこまでは描かれなかったわ」

「オリビアは?」

「オリビアは斬首か毒殺」

「斬首、毒殺、なんでオリビアには生存の可能性がないんですか!?オリビアがオリビア」


私のオリビアが死んじゃいます。オリビアが。ひどいです。

斬りつけられたオリビアが脳裏に浮かびます・・。


「どうしよう。生のリリアが可愛い」

「リリア、落ち着いて、泣くなよ。オリビア嬢は大丈夫だよ。そんな簡単にやられるタイプじゃないだろ。リリア、おい、戻ってこいよ。自分の話よりもオリビア嬢かよ。オリビア嬢に負けてるよな。お前、オリビア嬢好きすぎるだろ」

「随分ご執心ね」

「妄言を信じそうだから会わせたくなかった。ただもう一人の少女が見つからないとリリアの不安はぬぐえない」


泣いてる場合じゃありません。涙を拭きます。


「あの、どなたと結ばれたいか教えていただけませんか?」

「私はもう干渉する気はないわ。一度好奇心で手を出して後悔したから」


首を傾げます。


「どなたと?」

「内緒。」

「本当にどなたとも恋におちるつもりはないんですか?」

「うん」

「お名前を教えていただけませんか?」

「アイ」

「アイ様、力を貸していただけませんか。なんでもします。お願いします」

「え?」

「私、オリビアやライリー様に幸せになってほしいんです。断罪なんて嫌なんです。でももうオリビアは婚約してしまったんです。オリビアを助けたいんです。お願いします。」

「オリビアさえ助かればいいの?」


オリビアだけじゃない。ライリー様も。


「私は斬首だろうと毒殺だろうと構いません。でもほかのご令嬢達は嫌なんです。どうか、どうか力を貸してください」


「リリア、泣かないで。」

「勝手に涙がでるんです。気にしないでください」

「ゲームのシナリオ通りはつまらないもの。協力してあげる。」

「本当ですか?」

「ええ。リリアの視点で見れるのも楽しそうだし。お礼はお菓子でいいわ。」

「そんなもので?」

「私の母国で食べた味とそっくりで感動したわ。」

「おい、わかってるんだろうな」

「ニコラス、その言葉と顔やめてください。護衛クビにしますよ」

「俺はリリアに雇われてない」

「新しく護衛を雇えば、ニコラスに声をかけずに出かけられます」

「ニコラス様は怖いけどリリアを味方につければいいのよね。」

「アイ様、これからも会いにきてもいいですか?」

「給金をくれるならリリアの家に行ってもいいよ」

「うちだと外交官か侍女くらいしか紹介できません。」

「リリア、本気?危険だ。こんなの傍におくの」

「アイ様に失礼は許しません。」

「侍女ね。いいよ。楽しそう。最近暇だったから」

「アイ様、最初の研修だけ耐えていただけば、私のお抱えにします。そうすれば部屋で小説を書いていていただいて構いません。ご家族は?」

「あの人たち、私がいなくても気にしないわ」

「準備もありますので、一月後に迎えにきます」

「わかった。待ってる。じゃあね。」

「失礼します」


アイ様に挨拶をして家を出ました。快く協力していただけるならよかったです。


「ニコラス様、急いだ方がいいですよ。リリアに話したのとは別の設定のゲームがあるんです。15歳までに婚約しないと別の人が婚約します」


ニコラスが出てこないんですけどなんでしょうか。

先に帰っていいのかな。もう少しだけ待っても来ないなら置いて帰ろうか迷います。


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