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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
14歳編

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第四十四話 再会 

王太子殿下とオリビアの婚約が発表されてからオリビアが遊びに来ました。

オリビアは王太子殿下との婚約に不服はないそうです。

王太子殿下とは契約結婚でいいと。どうしてもやりたいことがあるみたいです。

オリビアは決めたら揺るがないので見守るしかありません。

私はセノンを連れて市で何度か探しましたが王太子殿下はいませんでした。

もともとお忙しい方ですから会うのは難しいですね。

三度探していなかったので諦めました。親方に頼めません。

親方は知ってるかもしれませんが、もし知らないなら殿下がお忍びで市に来ているから探してほしいなんて頼めません。大事な御身を危険にさらすような情報は教えられません。


王太子殿下が見つからないので私は少女のことは置いておいて外交官の勉強を頑張ることにしました。

ただ隣国での出来事を心配したお父様が成人するまでは外国に連れていってはくれないそうです。特に隣国は絶対に駄目だそうです。


***

外交官の勉強と社交をこなして気付くと14歳になってました。

お父様は王位争いは王太子殿下の派閥入りを決めました。今まで中立を保っていたのにどうしてでしょう。私はお父様の判断に従うだけです。私の親しいお友達も王太子殿下の派閥にいるのでありがたいです。


ミリアお姉様はお兄様と結婚して外交官として夫婦で飛び回っています。時々二人が帰ってきて遊んでくれます。お姉様のおかげなのかお兄様が帰ってくださる日が増えた気がします。

私、なんとヤギの乳で生クリームに成功しました。やっぱり隣国のケーキとは味わいが違いますが、美味しいからいいのです。なぜかディーンはまだ私の護衛騎士としてついています。

クレア様とはお手紙のやりとりをしています。第二王子殿下と仲良くされているようで何よりです。


***

私はライリー様とスペ様の結婚式に行ってきました。

ライリー様とスペ様は上手くいっているそうです。ライリー様がスペ様の無茶を止める様子にスペ公爵夫妻が婚姻の時期を早めたそうです。ライリー様の成人してすぐの婚姻ですもの。婚姻の話をされた時は驚きましたが、スペ様のことを語るライリー様の目に親しみがこめられてたので安心しました。スペ様もライリー様を愛しそうに見つめられてます。言葉なくても行動で表す方です。二人にあてられて頬をそめたご令嬢がたくさんいました。



花嫁衣装に身を包んだライリー様は女神のようにお綺麗でした。もちろんスペ様も。二人がお幸せそうでよかったです。これからも幸多かれと神さまにお祈りしました。この日のために遊びに来た上皇様に頼んで光の祝福を教えてもらいました。効果はわかりませんがこの祝福を受けた夫婦は幸せになれると言われています。ライリー様が喜んでくれたので覚えた甲斐がありました。もしいずれ会えたらクレア様達にもお披露目したいです。光が降り注いでキラキラして綺麗なのできっとクレア様は喜びます。


「お嬢様、ご自分に結界をはってください」


帰りの馬車の中でディーンに言われたまま自分に結界をはりました。

揺れる、なんですか、馬車が倒れました。

馬車のドアが開いて、ディーンに抱き上げられます。


「人数が多いな。お嬢様、あの森に逃げてください。こいつらを追い払ったら追いかけます」


目の前に剣を構えた男が何人もいます。私がいたら邪魔ですね。賊でしょうか。


「わかりました。ディーン、気を付けてください」


この場所はどこだかわかりませんが森を目指します。

スペ公爵領のどこかでしょうか。


「嬢ちゃん、どうした」


手を伸ばしてくる村人も信用できません。やっぱり、声をかけてきた村人も追いかけてきます。

両手に持っていた靴を投げつけるけどあたりません。

ライリー様の結婚式で魔力を使いすぎました。盛大な祝福をしすぎました・・。後悔してませんよ。だって襲われるなんて予想外です。

森を目指せって言われましても無理です。正面にも人がいます。水魔法で斬りつけても倒れません。

曲がるしかありません。行き止まり!?


まずいです。危なくなったら逃げなさいって教わったけど、この状況はどうすればいいんですか。

絶対、捕まったらいけないのはわかります。目の前の屈強な方々に戦っても勝てる気がしません。でもまだ死ぬわけにはいきません。

水に願いをこめて水の刃で斬りつけますが、やっぱり避けられました。戦う武器もありません。


「そんなに逃げるなよ」

「なにかご用でしたらお父様を通してください」

「事情があってな。一瞬で楽にしてやるよ」

「私は誰かの恨みを買った覚えはありません。ですが殺される前に事情を聞かせてください」

「俺も知らない。ただ邪魔なんだと」

「そんな理由で殺されたくありません」

「世の中は不公平なんだ」


説得は無理です。最終手段です。

結界で体を覆います。今度からは回復薬だけは何があっても持ち歩きます。まさか結婚式の帰りに襲われるなんてありえません。

剣で斬られるけど魔力を纏って耐えるしかありません。怖いです。

でも集中しないと。私はまだ死ぬわけにはいきません。魔力がもう足りません。

もう駄目です。懐かしい髪色の後ろ姿を見た気がします。走馬燈ですね。

一思いにばっさりですね。お父様、お母様、お兄様、セノン、先立つ不孝をお許しください。


***

目を開けると見慣れない部屋に寝かされていました。


「起きたか?」

「え?」

「リリア、よく耐えたな」


頭に乗せられる手に困惑します。

久々に会う懐かしい声の主の言葉の意味がわからない。夢でしょうか。


「話はあとだ。ついてるから寝ろ」


手を伸ばしてニコラスの頬を触ると暖かい。夢かな。夢ならいいや。


「いなくなりませんか?」

「ああ。」

「そばにいてください」

「ああ。お休み、リリア」


懐かしい手に頭を撫でられ再び目を閉じました。


「リリア、起きて。そろそろ動くだろ」



懐かしい声に目を開けます。

私、死にかけて、ディーンは!?

慌てて起き上がると目の前の人物に首を傾げます。


「ニコラス?」

「ああ」

「助けてください。ディーンが」

「あいつは無事だよ」

「はい?」

「リリア、ディーンは大丈夫だから心配しなくていい」


ニコラスの笑顔に寒気がするのはどうしてでしょうか。気にしてはいけません。


「お久しぶりですね」

「そうだな。」

「どうしたんですか?」

「やりたいことが終わったから帰ってきた」


ニコラスのやりたいことが終わった?


「愛しい少女との生活に飽きたんですか?」

「してない。なんでそうなるんだよ。俺はリリアだけって言っただろ。お前の為だよ」


私のため?


「ほら」


ニコラスから渡される紙の束を見ると、他国の名門貴族の印があり、どれも歓迎するって書いてあるけどどういうことですか?


「親交を深めてきた。亡命するなら歓迎すると。生活に慣れるまで面倒みてくれるそうだ」

「なんで?」

「リリアが欲しがっていたから。成人したら結婚してくれる?」

「それ、洗脳ですよ。いい加減、気付きませんか?」

「洗脳されてない。リリア、オリビア嬢達の亡命先を用意したら結婚するって言ったよな」


昔、そんなこと言ったような…。


「ずっと好きだった。俺にはリリアだけだ。何があっても守るから、将来リリア以外を愛したりしない。お前を罪人にしたてあげたりもしない。リリアの願いは叶えるから俺と結婚して」

「罪人?」

「俺が平民の女に恋してリリアを見捨てるんだろう。調べた。そんなことは絶対にない。オリビア嬢の事も手を貸す。だから、リリア、俺のものになって」


その甘い視線をやめてください。勘違いしそうになります。


「信用できません」

「成人したらでいいよ。俺が嫌?」

「嫌ではありませんが」

「ならいいだろ?お前の条件を敵えたんだ。」


すごく大事なことを聞き逃したような・・・。


「そんなことより、調べたって、どういうことですか」

「おい。聞け、こうなれば無理か。妄言ばかりの女に出会って聞き出した。」

「妄言?その人、会わせてください」

「は?」

「私、考えたの。でも少女が見つからなくて。ニコラス、お願いします。」


ニコラスの手を握ります。困ってたんです。まさか手がかりがつかめるなんて。


「危険だよ。わかったよ。そんな顔すんなよ。」

「会わせてくれますか!?」

「俺と一緒が条件だ。」

「ありがとうございます。」


悩みが一つ解決しました。そういえば、忘れてました。

改めて見るとニコラスの身長が伸びました。


「私、ニコラスがいなくなって気づいたんです。今までニコラスにずっと守られてたって。全然気づきませんでした」

「これからも俺が守るよ」

「ディーンがいます」

「あれは臨時。リリアを守るのは俺。いないと困る?」

「そうですね。近すぎて気付きませんでした」


嬉しそうに笑うニコラスを見てクレア様達の言葉を思い出します。

ちょっとだけなら信じてみてもいいかな。


「おかえりなさいでいいんですか?」

「ただいま」


この人の隣は居心地がいい。悔しいけど。


「新作、いっぱいできたんです。また食べてくれますか?」

「もちろん」

「私、とても弱かったんです」

「俺が守るよ。」

「シロに会いにいってもいいですか?」

「ああ」

「シロとセノンと一緒にお昼寝したい」

「暖かい場所でな」


まだ優しいニコラスのままです。

ベッドから立ち上がって背が伸びたニコラスに抱きつきます。


「リリア?」


自分の背中に手を回す手はいつかなくなります。

でも今だけは何も考えないでこの手に甘えよう。会いたかったから。

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