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夢みる令嬢の悪あがき  作者: 夕鈴
11歳編

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閑話 オリビアの親友

リリア6歳オリビア7歳の頃

私はオリビア・サン。お父様は宰相で序列1位のサン公爵家の令嬢よ。お母様がお友達を作りなさいとお茶会を開く。お友達というか取り巻きが正しい。皆、サン公爵令嬢と仲良くしなさいと言い含められてる令嬢ばかりというのは気付いている。


皆が私を褒めるのに一人だけ、美味しそうにお菓子を食べている子がいる。私の1つ下のリリア・レトラ侯爵令嬢。出したお菓子が気に入らない時はしょんぼりした顔でお菓子を食べている。でもお茶は好きなのかいつも幸せそうにお茶を飲んでいる。こんなに表情がコロコロ変わるのは貴族らしくないけど、面白くて、私はこっそり観察するのを楽しんでいた。


令嬢達は私にお世辞ばかり。私はお母様ゆずりのお顔だから、濃い色が似合うと言われている。試しに暖色を纏ったら全然似合わなかった。これでお茶会に出たらなんて言うかしら。



「オリビア様、今日も素敵なお召し物ですね」

「ありがとうございます」


わかっているけど、嘘ばかり。似合わないのは知っているわ。お母様は穏やかに笑っている。


「レトラ様も思いません?」


お茶を飲んでいたリリア・レトラ嬢が声をかけられて驚いた顔をしたあと微笑んだ。


「素敵なお召し物だと思いますが、以前の御召し物のほうが素敵でした」

「まぁ!?レトラ様はこのお召し物は似合わないと?」

「私は濃い色合いの御召し物のが素敵だったと思いますわ」


この伯爵令嬢って・・・。ノエル様に見向きもされなかったから、妹に当たっているのか。

でもレトラ侯爵夫人が口を挟まないなら、対処できると思ってるんでしょう。

挑戦的な笑顔を浮かべた伯爵令嬢にレトラ嬢が首を傾げた。


「前回の衣装は素晴らしかったです。サン様の黒い髪に赤いドレスが映えてましたわ。あんな色鮮やかに染められたものを手にいれるのはさすがサン公爵家。胸のコサージュは新たに取引がはじまったばかりの物です。濃いコサージュは人を選び使い勝手が難しいのに、見事お似合いでした。」

「え?」

「私もお土産にいくつかコサージュをいただきましたが、上手く使えずにお部屋に飾ってあります。サン様の前回の姿をお父様とお兄様にお見せしたかったですわ」


この賞賛の嵐って私じゃなくて、コサージュとドレスのことよね。目を輝かせて話してるのはレトラ侯爵家の自慢?


「リリア、やめなさい。ご令嬢が驚いてるわ。その話は家でノエルとなさい」

「失礼しました」


やっぱりおもしろいな。レトラ侯爵夫人の話す感じだと、家の自慢じゃなくてコサージュの話をしたかったの・・。ここに呼ばれている令嬢はお父様の御眼鏡にかかった家ばかり。誰と親しくなっても問題はない。お母様の庭を散策していいと言う言葉で令嬢達が私の周りに集まった。レトラ侯爵令嬢は一人で庭の散策に向かった。私は令嬢達の話に付き合い、折がついたので一人になりたいと追い払った。レトラ侯爵令嬢はどこかしら。



「レトラ様、わかってます?」

「はい?」

「サン様が気に入らなくてもうまくお付き合いするのは貴族令嬢の務めですよ」


年上のライリー・グラ侯爵令嬢とレトラ侯爵令嬢が池をみながら話をしている。


「気に入らない?」


首を傾げている。


「だからいつもお話にいかないんじゃないの?」

「いえ、私はサン様とは親しくないので。それにお母様に参加するだけでいいって言われれます」


「正直におっしゃって。高飛車でズル賢い令嬢とはお友達になりたくないって」

「貴方!?」


伯爵令嬢が加わったわ。令嬢の言葉にグラ侯爵令嬢が眉を潜めた。きっとこの伯爵令嬢はレトラ侯爵令嬢の答えを広めて醜聞にしたいのよね。


「高飛車とズル賢いがわかりません」

「え?」

「習ってません。どんな意味ですか?教えてください」


レトラ侯爵とノエル様が溺愛しているという噂は本当のようね。


「高飛車はえらそうってことよ」

「サン公爵令嬢がえらいのにどうして?」

「え?」

「サン公爵家は序列第一位。持ってる権力も役目も大きい。高飛車?でもいいと思う。でもリリーはサン様のことを知らないからえらそうなのかわかりません」

「お茶会でなにも思わないの?」

「たくさんの方々とお話できてすごいと思います。私はそんなに色んなお話についていけません。お母様には勉強量が違うのよって教えてもらいました。サン様もきっとお兄様のようにいっぱい勉強してるから優秀なんでしょう。」

「ずっと言いたかったんだけど、貴方は伯爵家なのにレトラ様に無礼よ」

「貴方だってレトラ様に」

「私は同じ侯爵家として忠告したのよ。年下の令嬢をいじめるようなことはしないわ」

「いじめてないわ。ねぇレトラ様?」


勢いよく詰め寄られたことに驚いたレトラ侯爵令嬢の体が後ろに倒れた。後ろ、池!!。


「レトラ様!?」

「私は」


浮いてこない。人を呼びにいかないと。


「よかった。」


グラ侯爵令嬢の安堵の声に後ろを振り向くと、レトラ侯爵令嬢が楽しそうに泳いでいた。


「レトラ様、上がってください」

「魚がいます。」


「レトラ様、風邪をひきますよ」


私はレトラ侯爵夫人を呼び、タオルを持ってくるように近くに見つけた使用人に命じた。

レトラ侯爵令嬢の傍に行くと残念そうに池からあがっていた。

グラ様がハンカチで拭いているので手伝うことにした。


「サン様、すごいですね。魚がいっぱいいました」

「大丈夫?」

「はい。もう少し潜りたかったけどよそのお家だったので」



「リリア!!あなた何してるの!?」

楽しそうだった顔が真っ青に変わった。


「お母様はお茶会に参加しなさいと言いました。池で遊んでいいなんて言ってません。レトラ侯爵令嬢として許されません」


「レトラ侯爵夫人、事故です。落ちたんです」

「レトラ様は魚を見ていただけで、飛び込む様子はありませんでした」


「リリア、本当なの?」

「お母様、ごめんなさい。リリーは池に落ちたけど、お魚を見つけて一緒に泳いでしまいました。よそのお家で泳いでしまいました」


「リリア!!」


私は笑ってしまった。言わなければいいのに。隣のグラ侯爵令嬢も目を丸くしている。


「レトラ侯爵夫人、風邪をひいてしまいます。うちを使ってください。うちのお茶会でご令嬢を危険な目に合わせて申しわけありません。私に免じて今日は許してくださいませんか」

「オリビア様がおっしゃるなら。リリア、次はありません」


レトラ侯爵令嬢が目を輝かせて私を見て、満面の笑みを浮かべた。


「サン様、ありがとうございます」


可愛い。隣のグラ侯爵令嬢も見惚れている。


「オリビアでいいわ。リリアと呼んでも」

「はい。オリビア様」

「様はいらないわ。お友達になって、リリア」


レトラ侯爵夫人が頷いたことを見たリリアがにっこり笑った。

「うん。リリーはオリビアとお友達」


「オリビア様、うちの子幼いところがあるので失礼なことがあれば遠慮なく教えてください」

「お気遣いなく、お友達は無礼講ですわ」


私の言葉にレトラ侯爵夫人が戸惑っているのはわかった。でも気に入ったから。公爵令嬢の私はある程度の自由は許される。私は優雅に微笑んでリリアの友達の座を勝ち取った。


私とリリアは仲良くなった。リリアは私のお気に入りになったことで時々令嬢達に嫌味を言われていた。ただリリアが上手に流すので、言った令嬢達が唖然としていた。あの子は外国語には詳しいのに本国の言葉には疎いみたい。低俗な言葉はリリアには通じない。その裏にはノエル様とニコラス様の暗躍があったけど。リリアが池で泳いだ噂が流れた。そこは伯爵令嬢が池に落としたということをしっかり付け加えた。伯爵令嬢に池に落とされたリリアがおぼれたということになっていた。グラ侯爵令嬢は沈黙を貫いている。彼女も実はリリアが気に入っている。レトラ侯爵家から抗議がいき、伯爵家が対応に追われた。伯爵家の嫡男にニコラス様が手合わせを挑んだらしい。騎士として士官していた嫡男が、侯爵家とはいえ年下のニコラス様に負けたことは噂になった。そんなことは全く知らないリリアは美味しそうに私の目の前でお茶を飲んでいる。小動物のようなリリアが私の周りの令嬢達に愛でられている事実をリリアがいつか気付くことがあるのかな・・。

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