第四十一話 帰国
セノンは一緒に帰れることになりました。
私のお父様の手紙が届かなかったのは国に止められていたみたいです。
セノンのことは神獣とは書いていなかったのに不思議です。私への手紙も全部止められていました。これっていけないことですよね!?第一王子殿下の命令ってどういうことですか?
三日後に旅立つことになりました。
ミリア様は生家の公爵家に帰られています。お兄様とお父様が明日ご挨拶に行くみたいです。
私はクレア様を訪ねています。
「クレア様、三日後に発つことになりました。なにを怒っているんですか?」
「ずるい」
「なにが?」
「ミリア様ばっかり」
仕方がない人です。笑ってしまいます。
「クレア様がミリア様と同じ立場ならクレア様もお嫁にもらいましたわ。私、クレア様も好きですから焼きもちやかないでください」
「リリアがミリア様にプロポーズしたみたいで、ずるいわ」
「クレア様は殿下にしてもらってください。」
「つれないわ」
「第二王子殿下が失脚したらうちの国に逃げてきていいですよ。私が養ってさしあげます」
「リリ、縁起でもないことを言うな。」
「殿下、よく来れましたね。三日後に発ちます」
「俺は王位なんて継たくないのに」
「第一王子殿下にミリア様は渡しませんのでしっかり監視してください」
「リリア、安心して。あの二人は絶対に許さないから」
「クレア様?」
「クレアがしっかりしてくれて頼もしいような寂しいような複雑」
苦笑する第二王位殿下に呆れますわ。
「過保護すぎるといずれ捨てられますよ。私はクレア様は保護しても第二王子殿下は家を用意するくらいですよ」
「見捨てないのか」
「クレア様を不幸にしたら見捨てます。ミリア様みたいな扱いをするのなら私が引き取りますわ。」
「容赦ないな」
「きっと良い王様になると信じてますわ」
「なんで?」
第二王子殿下にセノンを渡します。
「ほら、セノンは悪い人間には吠えますから。セノンを抱っこできるなら将来有望です」
「リリの自信満々の笑顔をみてるとそんな気がしてきた。敵わないな。」
「第二王子殿下、ミリア様のことよかったんでしょうか。ミリア様の生家への利になりますか?」
「罪人の妻として不自由に暮らすよりはいいだろう。あの家は子供が多いから義姉上を他国に出しても支障はない」
「それなら良かったです。」
「リリ、捨てられたり困ったらうちにこいよ。ちゃんと友達も家族も受け入れてやるよ」
「リリア、困らなくても来て。私がリリアを養うから」
「自分の兄を陥れた人間にまで恩情ですか?」
「俺はお前に恩がある」
「そんな、大層なことをしてません。ならセノンを守っていただいたので帳消しです」
「私はお友達だもの。リリアの傷が消えても傷つけたことは一生後悔させるわ」
クレア様、笑顔なのに怖いこといいませんでしたか?
「またお会いできるのを楽しみにしています。」
「いつか会いにいくわ」
「予定を知らせてから来てください。私、あんまり家でじっとしていられないんです」
「リリ、男はバカだよ。でもお前の信じる男はリリアを裏切ったりしない。もし信じて裏切られたら俺達が報復してやるよ」
「そうよ。リリア、素直になって。リリアの心の中にいる人はきっと大丈夫よ」
「すでに一度捨てられたんです。だからもうやめたんです。」
「また捨てられたら俺が引き取ってやるよ」
「その冗談おもしろくないです。」
「リリア、私もリリアの幸せを願う。何かあったら頼って。一人で抱えないで」
「クレア様、変わりましたね」
「リリアのおかげよ」
「ミリア様がいないので気を付けてください。ちゃんと第二王子殿下と相談してください。」
「頑張るわ」
二人に礼をして去って行きました。セシル第二王子殿下とクレア様が将来の国王夫妻。
なにがあるかわかりません。でも勝気に微笑むクレア様を見たら大丈夫ですかね。国に帰ったら手紙を書きましょう。
私はお父様とお兄様とミリア様と一緒に本国に旅立ちました。
エリとエルはクレア様が引き取ってくださいました。奴隷ではなく使用人としての待遇を用意してくれました。
ミリア様は後から発つのかと思っていたので予想外です。何冊かクレア様おすすめの恋愛小説を買ったのでオリビアは喜んでくれるでしょうか。
家に帰るとお母様に抱きしめられました。
「リリア、おかえり。心配したわ。」
「ただいま帰りました」
「ニコラスを先に旅立たせたこと後悔したわ」
「お母様、ニコラスいないんですか?」
「さみしい?」
愛しい少女のところに行ったんでしょうか。せめて別れの挨拶くらい・・。
「いえ、寂しくないです」
「楽しみにしてなさい。当分は帰ってこないけど。うちのリリアは悪い子ね」
悪い子?
「お母様?犬、飼ってもいいですか。とてもいい子なんです。ちゃんと面倒みます」
「連れて帰ってきたなら仕方ないわ。ちゃんと面倒みなさい。」
「ありがと!!お母様、セノンです。可愛いでしょ!?一緒に寝たいですか?」
「リリアは今日はお母様と寝ましょうね。セノンも一緒でいいわ」
「はい」
「二人共、落ち着きなさい。リリア」
お父様の言葉に大事なことを思い出しました。
「お母様、私、お姉様ができたのです。ミリア様です」
「どういうこと?旦那様」
「誤解だ。ノエルの嫁だ」
「まぁ!?ノエルが!?こんな美人を。すごいわ。さすが私の息子。今日はお祝いね。ミリアの部屋はどうしましよう。」
「お母様、お庭がきれいに見えるお部屋をミリア様のお部屋にしましょう。お買い物に行かないといけませんね」
「二人共、嬉しいのはわかるが落ち着きなさい。今日は休ませてあげなさい。リリアも今日は外出も厨房に行くのは禁止だ」
「お兄様はいつまでいるんですか?」
「ミリア嬢には申し訳ないが3日後に旅立つ。2週間で仕事を一段落させて帰ってくる。」
「わかりました。ミリア様のことは私がしっかりお世話します」
「母上にお願いするから、リリアは自分の勉強だ」
「わかりました。」
先程からミリア様が一言も話していません。
「ミリア様、大丈夫ですか?」
「リリア、貴方、こっちが素なの?」
「うちのお嬢様はお転婆なんです。普段はしっかりしているんですが」
「すみません。ミリア様もうちでは楽にしてください。段々でいいので」
「リリア、様はいらないわ。」
「お姉様ですね。嬉しいな。今度プリンをご馳走します。ケーキはまだ研究中、お姉様ごめんなさい」
「どうしたの?」
「この国、ケーキがないんです。あんなに素晴らしいケーキの中で育ったお姉様を説明せずに連れてきてしまいました」
ミリア様を説得するのにデメリットの説明を忘れてました。
「リリア、私、ケーキがなくても問題ないわ。」
「うちの料理はお口に合わないかもしれません。」
「そんなに食事に貪欲じゃないから安心して」
「お兄様、お姉様はなんて健気な方なんでしょう。私、妹として見習わないといけません」
「リリア、落ち着いて。久々に家に帰って安心してるのはわかるけど。仕方ないな。おいで、母上、ミリア嬢をお願いします」
お兄様に抱き上げられます。
「ごめんなさい。リリアはあなたが来てくれて嬉しいみたい。ここまで、はしゃいで子供みたいになることは最近は中々ないんだけど」
「いえ、そんなに喜んでいただけるとは光栄です」
「うちのリリアのわがままでごめんなさいね。」
「自分で決めてきたのでご心配なく。ご指導お願いします」
「こちらこそ」
お兄様が旅立つまで、私はお姉様には申し訳ありませんが、お兄様のお膝の上でたくさんお話を聞かせていただきました。お兄様はほとんど家にいないので帰ってくるとずっと一緒にいます。
3日はすぐに経ってしまいお兄様は旅立ってしまいました。
でも2週間後に長いお休みをとって帰ってくるそうです。セノンとお姉様のお陰です。お二人が早速幸運を運んでくれました。




