第三十六話 神獣1
私はセノンを連れて公園に来ています。
たまにはお外で走りたいかと思ったんですが私のお膝の上から動きません。
もちろんお揃いのローブを着てます。
「ディーン、セノンは走り回るの嫌いなんでしょうか?いつも私の御膝の上ばかりです。可愛いけど心配です」
「お嬢様に甘えてるだけですよ。俺が触ろうとすると吠えますし憎らしいくらいに元気ですよ」
「セノンが抱っこできないなんて可哀想です」
「俺は別にそこまで動物を好きじゃないんで構いません」
セノンはディーンをなぜか嫌っています。ディーンが大きいから怖いんでしょうか。
日向ぼっこが気持ちが良いです。こんなのんびりするのは久しぶりです。
クレア様もお茶会に一人で行けるようになってよかったです。第二王子殿下ともうまくいっているようで一安心です。
「こんなところにいた」
暖かくて眠くなってきました。
「その手に抱いてるの渡しなさい」
なぜか目の前にディーンの背中があります。いつも私の後ろに控えていますのに。
「さっさと渡しなさい。余計な手間を取らせて」
「お嬢様失礼しますよ」
ディーンに抱え上げられます。セノン、大丈夫ですか!?すごい。いつの間にか私の肩に移動してます。セノンは運動神経も抜群ですのね。
「待ちなさい」
ディーンが走ってます。
「ディーン、何があったんですか?」
「第一王子妃殿下に関わるなと言われたご令嬢がセノンをよこせと騒いでいたので逃げてます」
「セノン、あれはあなたの知り合い?知らないの?、ディーン、知らないみたいです。」
気付くと令嬢は見えなくなっていました。なぜか嫌な予感がするのでセノンを外に連れ出すのはやめましょう。
今日はもう家に帰ってゆっくりしましょう。
私は部屋でセノンを抱いて読書をして過ごすことにしました。お父様の返事はありません。
帰国したいのですがお父様の返事がこないので動けません。
オリビアは元気でしょうか。お母様にもセノンを飼わせてくださいとお手紙を書くの忘れてました。
せっかくなのでオリビアとライリー様にもお手紙を書きましょう。色鮮やかな紙を見つけたので、きっと喜んでくれるでしょう。ライリー様はスペ様とうまくやってるといいんですが・・。
「お嬢様、起きてください」
ディーンの声に目を開けます。ディーンが起こしにくるなんて初めてです。
起き上がると周りに兵がいます。
頬をつねると痛いので夢ではないようです。
「レトラ嬢、下で待つ」
なんで第一王子殿下がいるんでしょう。立ち去って行く第一王子殿下を見送ります。
侍女に着替えさせてもらってる間に段々目が覚めてきました。
「ディーン、何事ですか?」
「わかりません。」
第一王子殿下も先触れもなく訪問するんですね。眠っているセノンの頭を撫でて客間に移動します。
「お待たせして申しわけありません」
「挨拶はいい。申し開きを聞こう」
「なんのことでしょう?」
「アンナの犬を浚っただろ?」
「身に覚えがありません。アンナ様とは?」
「とぼけるのか」
第一王子殿下に睨まれても困ります。
吠える声が聞こえてきました。
セノンの鳴き声が響きわたります。あんなに鳴くなんて初めてです。
「セノン!?」
「殿下、いました」
兵の腕の中でセノンが鳴いてます。
どうしてセノンが連れてこられるんでしょうか。
人の部屋に許可なく入らないでくださいませ。
「第一王子殿下、セノンは黒いですが不吉ではありません。良い子です」
「アンナの神獣を奪ったと聞いている」
「え?なんのことだかわかりません」
「こうすればわかる。やれ」
兵がセノンに向ける剣を風魔法で吹き飛ばします。セノンの周りに結界をはれました。
「セノンが何をしたんですか?剣をむけられる理由はありません」
セノンに剣が向けられるけど、結界があるからききません。ごめん。セノン。剣を向けられて怖いよね。最初の結界が維持される間にセノンに結界の重ね掛けを。
「我に力を。風の女神の守護の恵みを構築せよ」
向けられる剣はディーンが止めてくれるから大丈夫。剣を向けられるくらいで怯えたりしません。
「結界を解け。傷つければわかることだ」
「解きません。セノンを傷つけることは許しません」
「手荒な真似はしたくない」
「セノンを傷つけようとしている時点で充分手荒です。」
「命令だ」
「従いません。不敬罪にするならわが国の国王陛下と父を通してください」
「仕方ない。やれ」
飛んでくる魔法を結界で防ぎます。通り抜けるの!?痛!!右腕が斬られるけど、気にしてはいけません。
あれ?魔法がつむげない。このままだと結界が解けちゃう。セノンの結界だけは維持しないと、痛い、集中、痛い、
「魔法を使うと痛みが走る。さっさと結界を解除するほうが賢明だ」
笑っている第一王子殿下に絶対に負けません。集中、結界の構築だけに魔力を、痛い
「痛いだろ?さっさと解除しろ」
「ふぅ。嫌です。これ以上痛い思いはさせたくありません」
「見上げた根性だな。強くしろ」
痛い、腕が引きちぎれそう。駄目、結界だけは。
「いたっ、あぁぁぁ、でぃーん、せのんを」
「もっとだ」
「いっぅ」
歯を食いしばって我慢、悲鳴上げちゃだめ。集中。体の魔力を絞りだす。魔法は精神力。
セノンの鳴き声が響き渡ってる。セノン、助けるから、結界だけは、たえないと
「いたい、ニコラス、たすけて、おにいさま」
だめ、セノン。意識を失う訳にはいかないのに、せのん、たすけ・・。




