第三十三話 第一王子妃
私は第一王子妃殿下に招かれて王宮に来ております。
招待状を見せると庭園に案内されました。私、この国の王宮に来るのは初めてです。セノンはお留守番です。
いらっしゃいました。
「妃殿下、このたびはお招きありがとうございました」
「楽にして、どうぞ」
「失礼します」
お菓子にケーキがあります。どれも色鮮やかで綺麗です。
「クレアがお茶会を開くって張り切っているわ。やっと社交に興味を持ったようね。第二王子殿下が貴方に怒られたと言っていたわ」
怒ってないです。どのことを言われてるかわかりません。
第二王子殿下とは辺境の村で一緒に過ごしましたから、多少無礼なことを言ったかもしれません。
「失礼しました」
「感謝してるわ」
「え?いえお役にたてたら光栄です」
「私もリリアと呼んでもいいかしら?私もミリアで構わないわ。」
「はい。ミリア様。」
「私、リリアの個人としての言葉が嬉しかったわ。茫然とするあの人を見て笑うのをこらえて大変だったわ」
「すみません。」
「いいのよ。人払いもしてあるわ。殿方は夢見がちで困るわ。クレアのことも気にしてないのに」
「やはり第二王子殿下の勘違いですよね。私、話を聞いた時に意味がわからなかったんです。王太子妃となられる方がクレア様の一番がいいって言葉を真に受けるなんて。幼子の戯言と聞き流しますし、本気でお怒りなら簡単につぶせますもの」
「殿方の戯言に付き合うのも疲れるのよ」
笑って流すしかありません。やっぱりこの方はオリビアと一緒で敵にまわしてはいけない方です。
「リリア、側妃に興味はある?」
「ありません。私は外交官になりたいので」
「両殿下はお顔立ちだけならいいわよ」
顔だけって言いました?
「私には務まりません。クレア様と第二王子殿下を押し付けるのやめてください」
「冗談よ。ただ第二王子殿下とリリアが二人で疫病支援に行った噂が広まってるから気を付けなさい」
「子供の私と成人した第二王子殿下では無理があると思いますが気をつけます」
「クレアもおかしいけど、もっとおかしいご令嬢もいるから気をつけて」
「え?」
「他の方々はまともよ。ただ一人、頭がおかしい方がいるの。もし困ったら相談にのるわ。」
「出会わないことを祈っております。ミリア様、もしあまりに殿下の様子に耐えられたくなれば我が国へ亡命してきてください。いつでも受け入れますわ」
「リリアの中では全く信用がないのね。その時は頼りにしてるわ。クレアをお願いね」
「精一杯務めさせていただきます。では失礼します」
このお茶会は面接でした。ミリア様は私がクレア様の近くにいても害にならないかの見極めです。
成長途中の将来の義妹の近くに不穏な者は置けませんもの。
「リリ、来てたのか」
「私はリリではありません。レトラとお呼びください。」
「今更、レトラ嬢って」
「クレア様のためです。第二王子殿下と変な噂がたったら悲しむのはクレア様です」
「いや、クレアはリリと一緒にいれるって喜ぶと」
「ありえません。悲しまれます。クレア様は側妃を受け入れられる方ではありません」
「リリ、わかったよ。リリアは、これも駄目なのかよ。レトラは男が嫌いなのか?」
「人によります。お兄様とお父様は大好きです。」
「どんなところが」
「語り出したら止まりません。一晩は余裕です。聞きたいですか!?」
「目を輝かせて話すのが家族のことって。好きな男はいないのか?」
「私はお父様の選んだ利害の一致する方と婚姻するだけです。クレア様のように恋愛小説に興味はありません。第二王子殿下、ちゃんと定期的に口説いてくださいませ。釣った魚には餌をあげつづけないと逃げてしまいますよ」
「リリ・・」
王族が情けない顔をしないでほしい。
「詩集でも贈りましょうか?」
「いらない」
「嘘!?」
なにか女性の声が聞こえた気がしますが気のせいですよね。
周りには兵しかいません。
「どうした?」
「いえ、なにか女性の声が聞こえたような」
「気にするな。時々得体のしれない女がいるから気をつけろ」
「それは、まさか・・・・・」
「どうだろうな」
「私、失礼しますわ。」
幽霊ですか!?もう少女の幽霊は嫌です。
第二王子殿下に礼をして急いで去ります。呼び止められるような声が聞こえましたが気にする余力はありません。王宮から帰って自室でセノンと戯れることにしました。
今日はセノンと一緒に寝ましょう。
最近、セノンが大きくなった気がします。仔犬の成長は早いものですね。




