第三十二話 クレアの変化
第一王子夫妻とのお話をおえて立ち去ると廊下にディーンを見つけました。
「お嬢様、お体は?」
「もう大丈夫です」
「一週間も寝過ぎです。」
「疲れてたんですね。心配かけました」
「本当ですよ。もうやめてください」
「善処します」
私の答えに不服そうに見られますが仕方ありません。できない約束はしません。
「レトラ様、お嬢様がお呼びです」
侍女に案内されてクレア様のもとに行きます。
「リリア、お話は終わった!?」
「はい。終わりました。サロンを貸していただきありがとうございました」
「お茶にしよう。」
「はい」
ソファに座るとお茶とケーキが出てきます。これは!?
「好きなのをどうぞ」
「ありがとうございます。いただきます。」
ケーキが何種類もありますわ。この白いのから食べましょう。
甘すぎず、さっぱりして美味しいです。
「ケーキが好きなのね」
おもてなしとしてケーキを用意してくれたクレア様への好感度が少し上がりました。
「うちの国にはありません。やっとスポンジにたどり着きましたが、このクリームは手に入りません。初めてスポンジが完成した時は嬉しくて笑いが止まりませんでした」
「リリアが嬉しそうに話すの初めてね。ケーキでこんなに喜ぶなんて」
「クレア様はこのケーキが作られるのがいかに大変かご存知ですか?私、スポンジを成功させた次の日は筋肉痛でしたわ」
「リリア、自分で作ったの!?」
「はい。異国のものは自分で調べて作るしか手に入れる手段がありません」
うん?いつの間にセノンが足元にいます。セノンを膝にのせます。
「セノン様もリリアが好きね」
「セノンをありがとうございました」
膝で眠るセノンが可愛いです。この子を連れて帰る手続きをしなくてはいけません。お父様にお手紙を書きましょう。
「お友達の頼みだもの。本当に帰る?」
「はい。もしクレア様がうちの国に来ることかあればご案内しますよ。うちの市には美味しいものがたくさんあります」
「リリアは食べ物ばかり」
「美味しいものは人を幸せにします。第二王子殿下とのご成婚の時にはお祝いを贈ります」
「リリアは来てくれないの?」
「そのとき、自分がどうなるかわかりません。お二人の幸せをお祈りしてます。」
このあとのクレア様の好きな小説のお話を聞きましたが難しいです。
私、恋愛小説や観劇って苦手です。
「クレア様、平民の少女が沢山の殿方を魅了して幸せになるお話をご存知ですか?」
「知らないわ」
「そうですか」
やっぱりまだ売られてないか。できれば早めに手に入れたいんですが。今度は努力して全部読みます。
「もし見つけたら教えてあげる。恋愛小説に全く興味のないリリアが読みたいお話は私も興味があるから」
さすがにバレてましたか・・。どんな社交用の顔を作っても恋愛小説の話だけは興味がないことを周りに伝わってしまうんです。理由はわかりませんが・・。
「ありがとうございます。もしうちの国に来ることがあれば恋愛小説や観劇好きのお友達をご紹介します。きっとクレア様と話が合うと思います」
「私、ご令嬢とうまくやれないのよ」
「そこは練習です。第二王子殿下のためにも頑張ってください」
「リリア、付き合ってくれる?」
「招待状もなく参加できません」
「うちで主催するわ。私の隣で見守って。」
面倒ですがやる気があるなら手伝いましょう。
エクリ公爵家には色々お世話になりましたから。
それに、クレア様が前に進もうとするなら、友人なら手を貸すべきです。
「わかりました。応援するから頑張ってください。同じ小説好きのご令嬢が見つかるといいですね」
「うん」
「私は今日は帰りますね。いつまでも公爵邸でお世話になるわけにはいきません。招待状を楽しみにしてます。」
「帰国する日が決まったら教えて。勝手に帰らないでね」
「はい。約束します」
家に帰ると第一王子妃殿下よりお茶会の招待状が来てました。
3日後ですか。拒否権はないので準備しないといけません。お土産どうしましょう。
「執事長、厨房を貸してもらえませんか?」
「お嬢様?」
「第一王子妃殿下にお茶会にお招きされたんですが、お土産がありません。我が国のお菓子を作ってもいいでしょうか?」
「私が手配いたしますよ。厨房に入るのはご遠慮ください」
「わかりました」
この国は厨房に入るのを嫌がられるんですね。
残念ですが仕方ありません。今日はもう部屋でセノンと遊んで休みましょう。




